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きみの描く雨が、僕のセカイを塗り替える  作者: あるふぁ
第2章:重なり始める音――カタカタとサラサラ

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13話 無防備な伸びの姿

♢ 居場所の確立、マイ部屋着と無防備な隙間(2)


 窓の外では、朝から途切れることなく降り続く静かな小雨が、世界全体の輪郭を淡い灰色に煙らせていた。


 この日の雨音は、かつて二人の魂を激しく揺さぶったあの暴力的で激しい豪雨の音ではない。


 窓ガラスを優しく湿った指先で叩くようなシトシトという微かな囁きが、外界のすべての喧騒や冷酷な現実を分厚いカーテンのように完全に遮断し、このリビングを世界から幸福に切り離された二人だけの絶対的な安全基地へと変えていた。


 水分をたっぷりと含んだ重い空気は、部屋の中のあらゆる音を吸い込み、重く、低く沈み込ませる。


 俺が執筆のために叩くメカニカルキーボードのカタカタという打鍵音は、乾燥した晴れの日よりもどこか丸みを帯び、リビングを暖かく照らすオレンジ色の関節照明の光の中に優しく溶け込むように響いていた。


 背後の絨毯にうつ伏せになった結乃の鉛筆の芯が紙をなぞるササッ……スゥという繊細な摩擦音も、雨の心地よい湿り気をたっぷりと吸って、より密やかで甘やかな響きを帯びて鼓膜に届く。


 空気中には、俺が作業の供として淹れたブラックコーヒーのほろ苦い深い香りと、結乃がシャワーの後に着替えたばかりの大きなパステルカラーのパーカーから漂う、清潔な柔軟剤の匂いが微かに混ざり合っている。


 不意に、結乃が白い足をパタパタと楽しげに動かすたびに、その奥に潜む彼女自身の甘いフローラルなシャンプーの香りが雨の重い空気に乗って、俺の鼻腔を容赦なくくすぐった。


 そのどこまでも可憐で暴力的な香りを深く吸い込むたびに、俺のタイピングの一定だった速度はわずかに乱れ、画面上に羅列されていく文字たちが一瞬だけ意味を失っていく。


 お互いに何も話さない。


 けれど、この二人の熱気でこもった濃密な空気の中で、互いの体温と呼吸が確かにそこに存在しているという揺るぎない事実が、俺の大人の理性を静かに、けれど確実に内側から削り取っていた。



♢無防備な伸びの姿


 一時間ほど、言葉のない心地よくも危うい静寂の中での空間の共有が続いた頃だった。


「んーーーっ!」


 キリのいいところまで描き終えたのか、結乃が両手を天井に向けて上に伸ばし、小さな身体を弓なりに反らせて大きく伸びをした。


 その無防備な拍子に、オーバーサイズのダボついたパーカーの裾がずるりと重力に従って大きくめくれ上がる。


 タイピングの手を止めてデスクから何気なく振り返った錬慈の網膜に、結乃のまるで極上の白磁のように滑らかな細い腰のくびれたラインと、短いショートパンツの裾から大胆に覗く、無防備な太もものなめらかな柔らかそうな肌の質感がダイレクトに飛び込んできた。


 窓外の微光に照らされたその圧倒的な肉体の白さは、薄暗いリビングの中で狂おしいほどに鮮烈だった。


「……っ!?」


 錬慈は一瞬でカッと顔を熱くし、バッと強引に視線をディスプレイへと戻した。心臓が嫌なほどドクドクと跳ね上がる。指先が微かに震え、キーボードをめちゃくちゃに叩く空虚な音が部屋に激しく響いた。


「……っ、おい。……エアコン、寒くないか? 風邪ひくぞ」


 的外れな、けれど必死の気遣いに、結乃はようやく自分の無防備さに気づいた。


「ひゃっ!? あ……だ、大丈夫、です……っ!」


 結乃は顔を真っ赤に染めて慌てて裾を引きずり下ろし、近くにあったクッションを抱きかかえるようにしてノートに顔を完全に埋めてしまった。耳の裏まで火照っているのが、遠目からでもはっきりとわかる。


 不登校の少女を保護しているという建前が、彼女が見せた一瞬の、生々しい女の子としての露出によって激しく揺らぐ。錬慈は空になったマグカップを指先が白くなるほど強く握りしめ、自分の中の理性が静かに削られていく音を、ただじっと聞いていた。

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