第75話 ゆーしょーってつよい?
「ゆーしょーってつよい?」
「強いぞーシスティ。最強だぞー」
「さいきょー!」
武術大会を無事優勝することが出来たので、賞金と優勝記念の楯を貰って孤児院に帰る。最後までリリィは許してくれなかった。
まぁそんな事はどうでも良いんだ問題じゃない。今、もっとも優先すべきことはこれ。
妹への戦勝報告である。
「兄ちゃ、カッコいー!」
「ありがとう、システィ」
兄ちゃ、カッコいー。
たったこれだけの言葉であるというのに、今日貰ったありとあらゆる言葉の中でダントツに心にしみわたってくる。ああ、俺いま幸せだってのが実感できるっていうかね?
俺、生まれてきてよかった。父さん、母さん、俺をこの世界に産んでくれてありがとう。
今は亡き両親に心の中でそっとお礼を言うと、天国にいる両親がキラッと歯を光らせて親指を立ててくれたように感じる。まぁ、そんな戯言は兎も角として、優勝である。
俺が今回出場したサニム武術大会は少年・青年・無制限の3段階ある大会で、基本的に得物に制限とかはない大会だ。流石に弓とかの飛び道具は居なかったが、槍持ちと剣士が対戦するなんて事も結構よくある。
ちなみによほど実力差が無ければ槍持ちと剣士の対戦は7割くらい槍が勝つ。そもそもリーチが全然違うからね。なので俺が出場した少年の部は、例年は大体槍使いが優勝するらしい。今年は俺とリリィ(双剣)のワンツーフィニッシュだったけどね。
これが青年の部より上になると話が変わってきて、ある一定以上の技量を持つ剣士は槍使い相手にも優勢になりえるらしいんだけど、その辺はコーケンさんもあんまり詳しくは教えてくれなかった。
「剣士の業には槍殺しめいたものがありますからね。タロゥくらいの技量なら存在を知ればすぐに使えるようになると思いますよ」
「え。それは流派の奥義とかそういう……?」
「そういう訳ではないんですがね。恐らくコーケン殿は試合でタロゥが使ってしまうと相手を殺してしまうかも、と危惧しているんでしょう」
レンツェル神父に軽く尋ねてみると、なんだかはぐらかしているような返答が返ってきた。う、ううん。今日の試合で対戦した相手を思い浮かべると、コーケンさんとかレンツェル神父の心配もあながち的外れじゃなさそうなんだよな。
重りを脱いだ状態で同年代と戦うと、明らかに自分と相手の間に流れてる時間が違うというか。スローモーションで殴りかかってくる相手をゆっくり避けて一本取るゲームみたいな感じになってたんだよね。アレ、思いっきりピコピコハンマーを叩きつけてたら、もしかしたら殺しちゃったかもしれない。
「その感覚はしっかりと持っていなさい、タロゥ。君の身体能力は一般の普人種の男性を大きく超えるものです。相手の実力と自分の実力。これを正確に比べる事が出来なければ、どれだけ技術が優れていても一流の戦士とは呼べません」
「はい、神父様」
「ちなみにこれは一般的な知識だが。年少の大会に出る子が持っている武術系のスキル平均は1、トップと言われる子が2と言われています。一般的にはスキル3はプロレベルで4以降に伸ばすには才能だったり経験が必要になってくるものです。中には生涯をかけて経験を積んでもレベル3より上がらない、という人もいるみたいですね」
「なるほど……ところで、俺いきなりスキルレベル5とか出てきたり取得しますかって尋ねられたんですが」
「…………なにそれ怖い」
レンツェル神父の言葉で長年の謎の一つ。スキルレベルについてがなんとなく分かったのだが、それと同時にもっと深い意味で良く分からない事も一つ増えてしまった。今もスキルを見るたびに出てくる取得可能スキル。アレ一体なんなんだろうね。
さて、そんなこんなで今年からはパチン・コ流の看板を背負って対外試合にも出るようになったのだが、大体3つの大会を経験した辺りで俺は対外試合禁止という沙汰を受ける事になった。
理由はちょっと差がありすぎて俺が出場する大会に人が集まらなくなったからだ。
「稀にお前みたいな子が出てくるんだが、その時は大体こういう風になるんだよ」
大会を運営しているサニムの職員さんを見送りながら、コーケンさんは満足そうにそう口にする。ようは殿堂入りするから大会には出てこないでねって事だ。まぁ、2回目までは兎も角3回目の大会以降はまともに試合してくれるのがリリィだけになっちゃったからね。俺も何で出てるのか分からなくなってたから、出ないでくださいって言われるのはむしろ願ったり叶ったりだったりする。
ちなみにこの殿堂入りみたいな扱いだが、実を言うと10年に1回くらいはこういう子が居るらしくてそこまで珍しいものでもないみたいだ。本当に才能ある子は若いうちから大人みたいな強さを誇るから、そういう子が他の子を壊さないように昔からある制度らしい。
俺はわざわざピコピコハンマーまで装備して大会に出てたんだけどね。逆にそれが相手の心を折るって大会の人から真顔で言われてしまったので、それは全部コーケンさんに文句を言ってくださいと返しておいた。コーケンさん? もちろん満面の笑みだったよ。
で、俺みたいな殿堂入りした子がどうするかというと、出来れば国外の大会に出てサニムの武威を示してほしいと言われたので、泳いだことないので船は嫌ですって返しておいた。
「え。君、サニムの子ですよね……?」
「外街の孤児院は、海遊びなんてする余裕ないんで……」
俺の言葉に愕然とした声で職員さんが尋ねてきたのでそう返答すると、気まずそうに目を逸らしてきた。港町だからって誰もが海で泳ぐ余裕があるわけじゃない。泳ぐってのは練習と教えが必要なスキルだから、覚えられる環境になきゃ海の傍に住んでようが覚えることは出来ないのだ。
まぁ、多分俺は前世にとった杵柄で泳げはするんだろうけど。あ、いや。この身体、地人種の血が4分の1入ってるしもしかしたら泳げないかもしれないな。うん、やっぱり泳いだことがない、くらいにしておこう。
そんなこんなのやり取りをした後、職員さんを見送ったわけだけども。コーケンさんは少し戸惑いがちに俺の頭に手を伸ばして、ぐしゃぐしゃと頭を撫でてきた。
「なぁ、タロゥ」
「はい?」
「パチン・コ流には水中や水上で扱う技もあるんだが。大会に出れなくなるし、この夏はサニムの砂浜でそっちの鍛錬に当てようと思うんだがどうだ? 孤児院の子で、暇がある子は連れてくると良い」
「え。良いんですか?」
「ああ。ザンムも居るし、孤児院の子にも泳ぎ方を教えてやるよ」
コーケンさんは少し遠慮がちにそう尋ねてくるが、こちらとしては願ってもない申し出だ。サニムの砂浜はサニムの市民なら誰でも入れるんだが、孤児院の子だけだと街の子たちに邪険にされちゃうからな。コーケンさんみたいな大人の監視下なら変に絡まれる事も無い筈だ。
鍛錬って名目があるとはいえ実質海遊びかぁ。久しぶりだな。それこそ前世でも20代くらいの頃、ドーバー海峡を泳いで渡った時以来じゃないかな。妹にも奮発して良い水着買ってやらないと!
タロゥ(8歳・普人種男)
生力36 (35.0)UP
信力99 (99.9)ー
知力34 (34.0)
腕力41 (40.0)UP
速さ36 (35.0)UP
器用35 (34.0)UP
魅力34 (33.0)UP
幸運24 (23.0)UP
体力36 (35.0)UP
技能
市民 レベル3 (100/100)ー
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル3 (100/100)ー
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (100/100)ー
我流剣士 レベル4 (100/100)ー
木こり レベル2 (70/100)
楽士 レベル3 (17/100)UP
教師 レベル2 (84/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル5 (18/100)UP
テイマー レベル0 (83/100)UP
絵師 レベル3 (4/100)UP
語り部(紙芝居) レベル5 (10/100)UP
スキル
夢想具現 レベル2 (100/100)ー
直感 レベル3 (63/100)UP
格闘術 レベル3 (76/100)UP
剣術 レベル5 (28/100)ー
弓術 レベル4 (44/100)UP
小剣術 レベル4 (44/100)UP
暗器術 レベル4 (44/100)UP
斧術 レベル3 (34/100)UP
フォークダンス レベル5(40/100)
フォークマスター レベル0 (40/100)
念話 レベル0 (68/100)UP
女たらし レベル3 (100/100)ー
取得可能スキル
素人○貞 レベル5(100/100)ー




