第6話 伝説のガールズバンドの始まりと崩壊
「さぁ、私とバンドをやろう!」
「はぁ?」
「バンド名はONPC+LP♪」
「変わった名前だな」
「世は大ガールズバンド時代!」
「それ、使い方には気を付けろよ」
「あなたはドラムね!」
「アタシ、焼きそばパンマンの小太鼓しか叩いたことないけど」
「大丈夫、私もギターとベース弾けないから」
「……ダメじゃん」
「情熱があれば何とかなるよ! 今のメンバーは、ピアノかバイオリンの経験者だし」
「三条院の生徒は、子供の頃からたくさん習い事をしてるからな」
「でも、あえてキーボードは置かない!」
「何でだよ?」
「ギター、ベース、ドラムだけで尖った音楽をやりたいから」
「そ、そうなのか。割とちゃんとバンドをやろうとしてるんだな」
「大真面目だよ! だから、私の手を取って! あなたの……が必要なの!」
「ん? 小声になったところが聞き取れなかった。もう一度言って」
「……お・っ・ぱ・い」
「だから、声が小さいって」
「あなたのおっぱいが必要なの!」
「……はぁあああああ!?」
「聞いて! この前、4人でお泊まり会をしたときに、深夜テンションで盛り上がって、バンドを組もうってなったの」
「ONPCは『OっぱいNけど、PンツはCわいいの履くつもりでした』の略」
「……大分しょうもないな。しかも、何で『つもりでした』って過去形なんだよ?」
「かわいいパンツって地味に高いから、安いのを買って、浮いたお金でBL本を買った方が有意義」
「バンドをやる気ないだろ」
「そんなことない! パンツの安さとバンドへの情熱は比例しない」
「てか、もう4人いるんだろ? その中からドラムを決めればいいだろ」
「私たちじゃダメなの!」
「どうして?」
「B、B、A、AA」
「何それ?」
「現メンバーのおっぱいサイズ」
「カミングアウトしてほしいなんて言ってないし」
「私たちがドラムを叩いても、おっぱいが揺れない! だから、あなたのFが必要!」
「何で私が揺らさなきゃいけないんだよ! 嫌だよ、そんなの!」
「おっぱいが揺れてる方が、動画再生数が伸びるから」
「そんなことで再生数を稼いでもしょうがないだろ! バンドなら音で勝負しろ!」
「はぁ……○○は毎日、世界中でどれだけの動画がアップされてるか知ってる? 普通にやってたら埋もれちゃうよ」
「埋もれてしまえ! 世間に知られる前に!」
「そんな冷たいこと言わないでよ、LP!」
「LP? 最初に言ってたONPC+LPの最後のLPって、私のことなの?」
「LPって、確かレコードだったっけ?」
「違うよ、ラージぱいぱい。略してLP!」
「人をぱいぱい呼ばわりするな!」
「ジャンルはメタルロック、青春パンク、マスロックをミックス! 歌詞はみんなが共感できる内容にする予定!」
「何で音作りだけまともなんだよ」
「そうじゃないと、みんなの心に響かないから!」
「そりゃそうだけど……」
「中等部の頃から、歌詞になりそうなことを日記にメモしてきたの」
「ほう」
「ママがパパに黙ってFXで200万溶かしたあげく、穴埋めのためにパパのG-○HOCKコレクションを質入れしたとか」
「おい」
「パパがキャバ嬢に貢いでボトルを入れまくったら、月の請求が300万を突破したとか……」
「ちょっと……」
「お兄ちゃんが、夜な夜な推しキャラのコスプレを私に強要してくるとか……」
「おいいいいいい!?」
「あとあと~」
「もう言うな! あと、絶対に歌詞にするなぁ!!!」
「アオハルの痛み! てへっ!」
「痛みどころか、大ダメージだよ!」
「そうなの。大ダメージで、私は今にも倒れそう。だから、バンドに入ってくれるよね?」
「もう逃げられない感じになってるんだけど……」
「逃げなくていい。私たちは苦楽を共にする仲間だよ」
「すごく怖いんだけど!?」
「というわけで、さっそくビキニを買いに行こう!」
「何でビキニだよ?」
「○○にはFカップを生かして、ビキニでドラムを叩いてもらうから!」
「嫌だよ、そんなの!」
「たまにポロリしちゃうのはご愛敬だよね! でも、再生数はアップ!」
「ダメだろ! 動画サイトに載せたら、ソッコーでBANされるって!」
「大丈夫だよ! アカウントは何度でも作り直せばいいし」
「質が悪すぎるぅううう!」
「ONPC+LPは何度でもよみがえる。不死鳥のごとく!」
「それ不死鳥じゃなくて、ゾンビだよ」
「あと、2週間後に下北のライブハウスでデビューライブも決まってるから!」
「ちょっと待て! 誰もギターとベースを弾けないのに、どうするんだよ!」
「今から猛練習!」
「無理無理。私は脱退する」
「ダメだよ! ONPC+LPは抜けられない。メンバーは魂でつながっているから」
「それ、呪いだろ! てかさ……さっきの家の話、本当なの?」
「うん。家と車は売って、今は賃貸。お兄ちゃんも大学を辞めて、バイトを始めた」
「大丈夫なの!?」
「うん。でも、私、三条院から転校するかもしれない。学費が高いしね」
「うそだろ……?」
「うそをついても仕方ないじゃん」
「お前みたいなバカ、三条院以外でやっていけるわけないだろ。ここにいろ」
「そうだね……でも、無理そう」
「……○○とバンドをやりたかったな……」
「わかったよ」
「えっ?」
「バンドでも水着でも何でもやってやる! だから、どこにも行くな!」
「……でも」
「行くなって言ってるんだよ! そうだ、バンドで稼いで武道館まで駆け上がろう!」
「いいの?」
「あぁ」
*
「なーんて、うそぴょーん!」
「えっ?」
「ママがFXでお金を溶かしたのも、パパがキャバ嬢に入れ込んだのも、お兄ちゃんがコスプレ好きなのも事実だけどね。今は弁護士さんを通して、家族仲良くやってるよ」
「な~んだ、なら大丈夫か」
「うん、びっくりさせてごめんね!」
「じゃあアタシ、バンド脱退で」
お越しいただき誠にありがとうございます。
お時間がございましたら「ブックマーク」「いいね」「評価」「誤字修正」「感想」「ご意見」など頂けましたら幸いです。




