〜第六章〜 あの日の誓いを果たす時
「——ねぇ、わたしの指輪を知らない?」
その晩、教会の注意も無視して気持ちよく酔っていたならず者がいた。
そこへ掛けられた、鈴を転がしたような声。「今日は運がいい、若い女がうろついていやがる」と卑屈な笑みを浮かべて振り返り……そして固まった。
格好からして貴族の令嬢に違いはなかった。しかし、そこが問題ではなかった。
透けていたのだ。
悲鳴をあげ、ならず者は一度尻もちをつくと、這うようにしてその場を逃げ出した。
「待って」
後ろ姿へ手を伸ばす令嬢の幽霊。
しかし、伸ばされた彼女の左手には——手首から先がなかった。
「わたしの指輪を、返して……」
「……ということが、先日あったそうだ」
「今する話か、それ?」
今日も今日とて悪魔を狩るための巡回の途中、リリアンがおもむろに語り出した。しかも、よりにもよって夜間である。
聞けば、この話はならず者が自らシャトレ(警察署)に逃げ込んだことで発覚したらしい。ならず者には婦女暴行の前科があったためそのまま夜警に連行され、身柄は地下牢に放り込まれたそうだ。
「いつ聞いたんだ」
「昨夜、一匹と一人を仕留めたじゃないか」
「悪魔と人間を同列に語んじゃねぇ。あと、人間は仕留めてねぇ」
「細かい奴だな。その時の人間、窃盗犯だっただろ? いつものようにシャトレへ引き渡しに行ったんだ。君は薄情にも先に帰ったがな」
「おれが捕まったんだろーが!」
言われて「そうだった」とリリアンは思い出す。
彼はローマ教会の命でやって来た異端審問官だが、ここでは『パリ郊外出身の神父見習い』という偽の肩書で過ごしている。調べられたら拘束され、尋問は免れないだろう。
「でも、君なら逃げられるだろう」
「勝手に余罪を増やしてんじゃねぇ!」
あと捕まった体で話を進めるな! と再び怒られた。
リリアンは思う。この男と出逢ってから、向こう一年分の説教を受けたのではないかと。それほど沸点の低い男だった。
(……酷い言いがかりだ)
ジャンマルコからしたら、そう叫びたいところである。本人が心を読むことができたなら、暴れたに違いない。
「お前んとこは、悪魔のみならず幽霊も出んのかよ」
「そうか? 悪魔より現実的じゃないか?」
「……言われてみりゃな」
いかん。ここ最近、悪魔を目にすることが多すぎて脳が混乱している。ジャンマルコは疲れたように目頭を揉んだ。
「天使もいたしな!」
「マジでそれ、教会には言うなよ」
悪魔はまだいい。天使は駄目だ。
何も天使が悪というわけではない。教会の立場が危うくなるからだ。天使も教会も「神の直接の配下」に当たるため、目に見える形で天使を敬うことは、巡り巡って教会の権威をないがしろにすることに繋がる。
そのことを説明した時の、リリアンの反応といえば——。
『面倒くさい奴らだな』
ジャンマルコが涙を飲んだのも仕方がなかった。
その後、養父の命の危険性などを話してようやく納得してもらえたが、その際もリリアンはこう言っていたのだ。
『思ったよりも面倒くさい奴らだとは解った。君、よくやっていけるな。私は初日で破門になる自信があるぞ』
(おっしゃる通りで! あと余計なお世話だ! そしてよく己を理解してんじゃねぇか!)
わなわなと震えるしかなかったが、本当は声高に叫びたかった。
本当に痛いところを突いてくる。自分でも教会の在り方に疑問を持つ時がある。それでも従うしかないのだ。それが、聖職者であることの責務なのだから。
「まあでも、私が信じられる聖職者は、今のところ君だけだな」
落として上げるのはやめてほしい。おかげで情緒がめちゃくちゃである。
(あのあと、どうしたっけな。……ああ、親父が……)
こっそり覗き見していた親父がいい笑顔で親指を立てていたので、その指を引っ張って与えられた部屋に連れ戻したんだった。『抜ける! 痛い! この色男!』などと最後は意味不明な悲鳴をあげていたが、問答無用で連行した。
(あのバカ親父……)
思い出したら余計に疲労が増した気がする。ジャンマルコは気を取り直して言った。
「で? その話を、おれに聞かせた理由は?」
「いや、その幽霊に会えないかなと思ってな」
「頭大丈夫か?」
「さすがに失礼だろ」
「幽霊が出たって聞いて『わーい会いたい!』ってなるか、普通!」
夜の冷えた空間に、ジャンマルコの声が響き渡る。
「しっ、声が大きい」
「……誰のせいだよ」
普段、仕事柄目立たないように生きるジャンマルコにとって、逆に「目立つな」と咎められるのは新鮮かつ屈辱的な体験だった。しかも原因を作った当人に諭されるとは。
「気づかなかったか? 指輪に意識を向けがちだが、彼女の左手だ。彼女には左手首から先がなかった」
「……! 身体の一部……! 偽召喚文書の被害者か……!」
どうしてもっと早く気づかなかったのか。己が一番現場を知っているはずなのに。
「まだ確定はしていないが、おそらくそうじゃないかと思う」
「いや、多分あってるぜ。身体の一部という点が一致してる。お前、儀式のやり方は知っているか?」
「アスタロト殿から、アレクと司祭長のやり取りの記憶を見せてもらった。その時、儀式には十三人分の身体の一部が使われることを知ったが、実際にその召喚文書とやらに目を通したわけじゃないからな。詳しい内容までは解らない」
「そうか……。おれは文書の内容はもちろん、現場も見たからな」
ジャンマルコは意識を集中させ、悲惨な光景を回想しながら語り出した。
「あの儀式は、まず十三人分の身体の一部を用意する。それぞれ、目、耳、鼻、舌、右手、左手、右足、左足、胴体に下半身、それから骨ひとり分に、脳みそと心臓だ。それらを腐らないようワインに漬けておく。地上に降りた天使の受肉体として使えるようにするためだ。基本、それらは主催者側が用意していたが、中には参加者自身に持ってこさせるところもあった。参加者は己の血を捧げる。これも受肉体と同じで、集めた血は天使の中に通うとされていた。最後に全員で召喚の呪文を唱えて天使を呼び出す。人気だったのはミカエル、ガブリエル、ラファエル……だいたいこの辺りだな」
「本当に悪魔が呼び出せそうな内容だな。吐き気がする。……だが、どう考えても身体のパーツが足りてないだろう。残りはどうした。杜撰さが目立つぞ」
「……ワインはすでに使われていた。となると、残りは『パン』だろ」
「は?」
「新約聖書……と言っても解らねぇか。イエス・キリストが最後の晩餐で言った言葉だよ。弟子たちと行った食事の場で、イエスはちぎったパンを『わたしのからだ』と言い、注いだワインを『多くの人のために流されるわたしの血』だと言った。その後イエスは処刑された。晩餐の席での言葉はここに掛かってる。皆の罪の身わりに、自分は犠牲になる、ってな」
「待て。……は? まさかその儀式にはパンも用意されたのか?」
「一番楽に用意できたみたいだぜ。だいたいが身体と一緒にワイン漬けにされていたな。パンで残りの肉体の代わりとしたんだろ」
「おかしいだろう。天使とイエス・キリストは別物じゃないか。混ざっている! 騙されていたとはいえ、誰も疑問を持たなかったのか? それじゃあ呼び出すのはイエスになるだろうっ」
「普通に考えればな。だが神聖な儀式だから、聖書に登場するパンとワインも欠かせないと思い込んでいたらしい。本当に愚かだよな。……だが実際、それで何人もの犠牲が出ている」
「……うちは主催者側が既に偽物の儀式と知っていたからな。身体の一部は墓から暴くか、参加者たちに用意させたらしい。そもそもが参加者から金銭を巻き上げるのが目的だったから、儀式の形さえ整えばそれでよかったんだ。そして用済みとなった参加者は異端者として役人に突き出している。『すべては異端者を炙り出す口実だった』とかのたまってな。儀式とは名ばかりで、最後まで行った組織はいなかったそうだ。けれど、君たちの国は違う。偽物と知らないのだから……。きっと他の国もそうだろう。既に弁明の使者は向かわせているが、どれだけの人が被害に遭ったのか……考えると眠れなくなる」
「考えるな。寝ろ。お前のせいじゃねぇんだ」
ジャンマルコは冷たくも、確固たる口調で言い捨てた。
「しかし、偽物だと知っていてやる方も胸糞悪いな。おれの国では、だいたい貧困の末に売られた奴が犠牲になっていた。本当は身体の一部を取られても生きていた奴もいたんだ。鼻とかな。けれどそいつらも、口封じのために殺されていた。墓を荒らした主催者もいたが、大半の犠牲が生きた人間だった。一番やるせねぇのが……材料を揃えるためや、儀式に関係のない生贄として『誘拐』された奴らだ」
言って、ジャンマルコの脳裏に生贄とされた裸体の少女が浮かぶ。今でも思い出すと悔しくてたまらない。あの後、尋問で判明したが、やはり彼女は誘拐されていたのだ。もっと早く居場所を突き止めていれば——。
「想像を絶するな……。君は現場を見たと言ったな」
「正確には『現場にいた』、だ。儀式の前に取り押さえるのが一番だが、大半が秘密裏に行われていたせいで間に合わなかった件もあった。その時は異端審問官として潜入し、一人を残して全員を処刑した。唯一、被害者の身元を吐かせるために主催者だけを生かして捕らえていたが……」
「異端者は火刑だったな」
「ああ、最終的にそいつも火刑になった」
リリアンは深く考え込むように、重い沈黙を守った。
「おい、大丈夫か? 悪かったな。女に聞かせる話じゃなかった」
つい対等に接してしまっていたが、彼女は貴族の令嬢で、しかも自分より年下の女だった。
「違うんだ。惨たらしい光景はスラム暮らしで慣れている。ただ、本当にうちの国が取り返しのつかないことをしたのだなと……。私からの詫びじゃ何の力にもならないが、それでも申し訳なかった」
「おいやめろ。さっきも言ったようにお前のせいじゃねぇし、なんならお前も父親に冤罪を着せられた被害者だろ」
この時にはもう、ジャンマルコはアレクシスの冤罪を微塵も疑っていなかった。
こんなにも真っ直ぐな人間を育てる奴が、残酷な陰謀を企てるか? ハッキリ言って否だ。真犯人とされた司祭長の方がよっぽど現実的である。同じ教会の者として情けない限りだが。
「むしろ、おれたちが市民に詫びなきゃなんねぇ。けれど、司祭長は簡単に捕まえられない。教会の威厳が失墜すると、国が乱れるからだ」
神がいての教会であり、教会があっての国である。それこそ宗教の違いで戦争が起きるほどだ。教会は神以外に、何者にも屈してはならない。たとえそれが王であり、国であっても、だ。
「悔しいのはお互いさまだ。もう、この話はよそう」
これ以上語ったところで、虚しさと怒りが募るだけなのだから。
「それで、幽霊だが……会おうとして会えるものなのか? 会ってどうするつもりだ」
「指輪をな、返してやりたい」
「指輪?」
リリアンは、己の左手を月明かりに向けて掲げた。
「婚約指輪、もしくは結婚指輪だったのかもしれないと思ってな。手がないのに、指輪のことばかり気にするのもおかしくだろ? きっと手なんかよりも、ずっと大切なものに違いないと思ったんだ」
「なるほどな」
しかし、左手が儀式に使われたとしたら、指輪は……そこまで考えてジャンマルコはハッとする。
儀式の材料として使われる際、身につけている装飾品はすべて外されるはずだ。
「……じゃあ、被害者の実家か!」
「それか、嫁いでいたなら相手の実家か」
「どうすんだよ。どっちの家にも突撃すんのか?」
「いや、その必要はない」
実はな、ともったいぶるようにリリアンが続けた。
「強力な助っ人に来てもらっている」
「は~い! リリアンちゃんに頼まれた助っ人のシャルロットよ。気軽にシャルルって呼んでね!」
突然、目の前に現れた『それ』は、人間のこぶし程度の大きさしかなかった。
「……『それ』はなんだ」
「こら、それとは失礼だぞ。彼女はアレクの実のお姉さんで、守護天使だ」
「アレクがお世話になってまーす」
「いや、シャルルさん。マルコ殿はまだアレクと会ったことがないんです」
「そうなの?」
「おい」
「なぁに?」
「いや、あんたじゃなくて、おめぇだよ! キョトン顔やめろ! 守護天使ってなんだ!」
「なんだって……先日アスタロト殿から聞いたじゃないか。守護天使の彼女がラファエル殿に頼んでアレクを護ってもらっていると。忘れたのか」
「忘れてねぇよ! それがなんで、その守護天使と親しい理由になるんだ」
きっと、碌でもないことを言うに違いない。
「え? アレクの姉上だぞ? そりゃ挨拶するに決まっているだろ」
やっぱりか。
「……お前は宮廷に入れないんだろ。どうやって会ったんだよ。あの悪魔野郎か?」
一番可能性があるのは、アスタロトに連れてきてもらうことだ。しかしリリアンはあっさりと否定した。
「なぜそんな回りくどいことを。普通に呼んだだけだ。挨拶がしたいから姿を見せてもらえないかと」
「そうなのよ。礼儀正しい子よねぇ。そんな子に呼ばれたら喜んで現れるわ。なんて言ったってアレクの子だもの!」
「血は繋がっていませんけれどもね」
「そんなこと気にしなくていいのよ~」
「……あの、すみません。おれも会話に入れてもらえますか」
女性ふたり(?)の会話に口を挟めずにいたジャンマルコがそう申し出ると、シャルロットが彼の周りをパタパタと飛んだ。
「あなたがマルコくんね!」
「ジャンマルコです。……随分と幼い姿ですが、望んでその姿でいるのですか?」
彼女は、それこそ十歳にも満たない幼子の姿形をしていた。しかし喋り方だけ見ると熟練の年長者で、もしかしたら天使の能力のひとつかと思ったのだ。
「マルコ殿、彼女はな、昔アレクの家が内紛で襲われた時、幼いアレクを護るために命を落としたんだ。私からしたら恩人の恩人なんだ」
「もう、弟を護るのはお姉ちゃんとして当たり前よ。大袈裟なんだから。……そういうまっすぐなところも好きだけど」
「恐縮です」
「も~、この子は。そういう訳で、姿は子どもだけど精神年齢ならアレクより上なのよ。だけど気軽に接してねっ」
「なるほど。つまり中身ばばぁか」
瞬間、顎に衝撃が走った。
下から殴られたのだ。
「悔しい! 失礼なお口をふっ飛ばしてあげたかったのに!」
「え、代わりにやりましょうか?」
「代わるな! 剣を抜くな! あんたが気軽につったんじゃねぇか……!」
「女性に歳のことを言うのは、殺されても文句ないのよ!」
「すげぇ既視感……」
そうだ。この天使のノリ、誰かに似ていると思ったら——お袋である。
(苦手な人種だ……!)
よりにもよって、助っ人がこれか。……助っ人?
「おいお前、守護天使を助っ人にするつもりか?」
「何よ。私じゃ不服だって言いたいの?」
「我慢してくれ、マルコ殿。ラファエル殿にはアレクの傍にいてもらわないといけないんだ。でも、彼女もとても頼りになるぞ」
「ちげぇ! 守護天使といえども、天使を使いっ走りにすんなっつってんだ!」
「失礼だな。きちんとお願いしたぞ」
「お願いされたわ」
「いや、だから……」
「あ、そうか。マルコ殿は天使が苦手だったな」
「え、そうなの? ラファエル様が聞いたら悲しんじゃうわ」
「違う違う違う! 天使が教会の脅威でおれは教会の下僕だからで苦手とかでは決してちげぇ!」
「すごい早口~」
「つまりは、仲良くしたいんだな?」
「っ…………そうだ」
グッと息を詰め、言葉を絞り出す。ジャンマルコはもう開き直ることにした。
「えらく間があったわね~。本当かしら?」
「彼は照れ屋なんですよ」
「おれは、照れ屋、です」
「なんだか私たちが通い詰めていじめてるみたいだわ」
みたいじゃねぇよ。そう思っても口には出さない。学習したのだ。
「まあいいわ。昼間、リリアンちゃんに頼まれてた件だけど、指輪の在り処が解ったわ」
「! さすがです! どこでしたか?」
「は?」
呆気に取られるジャンマルコを尻目に、シャルロットは話を続ける。完全に先ほどの意趣返しだった。
「その前に少し悲しいお話になるけれど、幽霊の彼女は貴族のご令嬢さんで、恋人が商人だったみたいなの。それでご家族に反対されてね、二人は駆け落ちしたみたい。商人の恋人が『式は挙げられないから』って、必死に稼いだお金で結婚指輪を彼女に贈ったようよ」
「そうだったのですね……」
「待て。恋人がいて、そいつが商人とまでは解るが、指輪の価値のくだりは女の方には解らねぇはずだろ」
「だから会って話したんだろ」
「女の幽霊にか?」
「なんでそうなる。商人の方に決まっているだろ」
「はあ!?」
「……リリアンちゃん、恋人の彼に何も話してないの?」
「こ!?」
「いや、シャルルさん。彼は私の……私のなんだ?」
「ただの知り合いだ!」
「私の知り合いです」
「そうなの? アレクに話したら面白い反応しそうなのに」
「マジでやめろ! いや、やめてくださいお願いします!」
アレクシスという男の驚異的な親ばかぶりは、先日アスタロトから聞いたばかりである。冗談でも命が危ないと直感した。
「シャルルさん、私からもお願いします。マルコ殿の命はまだ惜しい」
「命!? 惜しい!?」
「じゃあ、二度と私をおばさん扱いしないことね」
「……肝に銘じます」
というか、まだ根に持っていたのか。女って執念深い……と恐れながらちらりとリリアンを見て、(こいつは本当に女か?)と改めて性別を疑った。
「リリアンちゃんは過程をすっ飛ばして話す癖があるからね。私からお話しするわ」
「……よく解ります」
それには、ジャンマルコも心から同意した。
「幽霊の噂を聞いたリリアンちゃんに『彼女と接触できないか』ってお願いされたのよ。私は元人間の守護天使だから、どちらかというと存在も能力も幽霊に近いのもあってね。さっそく色んな霊から彼女のことを聞き出して見つけたの。その時に商人の恋人のことも聞いたから、そっちにも話を聞きに行ったのよ。どうやら駆け落ち先で二人して不運な事故……馬車の転倒に遭って亡くなったみたいなの。さらに不幸が続くんだけど、ここまでいい?」
「はい。……ていうか、それはこいつは知って?」
「いや、商人の恋人がいたというのは聞いていたが、駆け落ちだったのは今知った。どうやらとても真面目な男性だったらしい。家族仲もよくて、亡くなったと知った時は大変嘆かれたようだ」
「言え! そういうことは! ……もう犯人も解ったようなもんじゃねぇか。指輪は彼女の実家だ。違うか? ……いえ、違いますか、シャルロット殿」
「無理に敬語使わなくていいわ。そうね、マルコくんの言う通りよ」
「彼女の身内に、儀式に参加した者がいた……?」
「頭は回るのに、なんで気づかねぇんだよ!」
「いや、まだ解らない。彼女の左手を落として埋葬したとして、指輪は儀式には持っていけないのだろう? なら恋人の男性の家に返すか、彼女の亡骸と一緒に埋めてやるのが普通じゃないか?」
「もっと遡れ。まず、儀式に参加する予定があった身内の元に、そんな都合よく死体が手に入るのがおかしいだろ!」
「! まさか……」
「本人たちが不運な事故と思ってんなら、その方がいいけどな」
「私もそう思って、何も言えなかったわ。……彼女のお宅にもお邪魔した時、偶然聞いちゃったの。『せっかく新鮮な死体を手に入れたのに、息子も捕まった』って。どうやら息子を儀式に向かわせ、自分たちの願いを天使に叶えてもらおうと思っていたみたい。馬鹿よね。天使はそんなことのために存在するんじゃないのに」
リリアンは額を押さえ、もう片方の手をシャルロットへ向けた。
「待ってほしい。実の娘を殺したのか? 事故に見せかけて? 息子は怪しげな儀式に参加させて、捕まったことより願いが叶わなくなったことが残念……? は? そいつらは……人間か?」
自分も実の父親に捨てられたが、殺されるまではいかなかった。
(結婚が可能なほど……十五、六だろうか。そこまで育てた娘を私欲のために手に掛ける親が存在するとは)
怒りのあまり、背中の毛が逆立つ。
リリアンは深く息を吐き出すことによって、何とか感情を鎮めようと試みた。
「大丈夫か?」
「…………大丈夫だ。指輪は、彼女の実家で間違いないのですね?」
「ええ。さらに親たちは続けていたわ。『この指輪を換金すればいい額になる』『少しはあの下民も役に立ったな』って」
「よし、斬るか」
「待て! 気持ちは解るけど!」
なんでこいつはこうも零か百しかないんだ!
今にも駆け出しそうなリリアンを、ジャンマルコは慌てて引き留める。
「指輪を取り戻すんだろ! なら、尋問が先だ!」
「……あなたも、リリアンちゃんのこと言えないわよ」
シャルロットは呆れたように肩をすくめた。
ジャンマルコという男も、冷静そうに見えて腸が煮えくり返っていたのだろう。
(この二人に任せておいたら、指輪を取り戻す前に犯人の両親を土に還しそうだわ……)
「指輪の在り処、もとい彼女の実家へは案内するわ。でも約束して! 両親は殺さず憲兵へ引き渡すこと! 殺しちゃ駄目よ!?」
「努力します」
「貴族の殺人罪は斬首刑だろ。それか財産没収か名誉剥奪。金に目がないようだからな、後者二つが選ばれるくらいなら『そいつらも死んだ方がマシだ』って思うぜ」
「それでも! 罪を償わせるのよ!」
シャルロットのその一言で、二人から殺気がすっと消えた。
罪を償わせることがどんなに大事か、二人は痛いほど知っている。そして、それが叶わない現状(アレクシスの冤罪や教会の闇)に深く悲嘆しているからだ。だからこそ、正当に償わせることができるなら、それに越したことはない。
「……もう大丈夫です。シャルルさん、改めて案内をお願いします」
「おれもだ。らしくなく頭に血がのぼっちまってた。糞な事件なんて山ほど見てきたっていうのによ」
「落ち着いてくれて良かったわ。じゃあ、案内するわね」
シャルロットに案内された屋敷に着くと、夜半にもかかわらず、リリアンは遠慮なく大音量で呼び鈴を鳴らし、声を張り上げた。
「ごめんください! わたくし、ミザリーさんの友人の者ですが!」
ミザリーとは、女の幽霊のことだ。名前を事前にシャルロットから聞いていたリリアンが、彼女の友人を騙って呼びかけるも、扉が開く気配はなかった。
「シャルルさん」
「任せて」
扉の向こうにシャルロットがすっと消え、数分も経たないうちに戻ってきた。
「大変よ! この向こうは広間になっているんだけど、主人らしき人と男性の使用人が数人、抜き身の剣を構えているわ!」
ちなみにシャルロットの姿は、彼女の力によって二人以外には見えないようになっている。
慌てて危機を知らせたシャルロットに対し、二人は焦るどころか、どこか獰猛な笑みを浮かべた。
「なるほど。知人に来られると困るのか。……そうか」
「先に抜いてくれるなんて、ありがてぇな。おい、正当防衛が使えっぞ」
「それは確かにありがたい」
「ちょっと!? 殺しは駄目よ!?」
「「殺し“は”しない」」
え? とシャルロットが声を漏らすのと、リリアンが右脚を跳ね上げたのは同時だった。
——バァンッ!
けたたましい衝動音とともに重厚な扉が吹き飛んでいくのを、シャルロットは呆然と眺めていた。
「こんにちは、くそ野郎」
扉を蹴破ったそのままの姿勢で、極めて優雅に挨拶を決めるリリアン。
そしてその傍らには、二対の半月刀を逆手に握り、低く構えるジャンマルコの姿があった。
先手で奇襲を仕掛ける気満々だった屋敷の人間は、大混乱に陥る。まず吹っ飛ばされた大扉の直撃を受け、使用人数名がまとめて戦闘不能となっていた。
「貴様ら! 目的はなんだ! 復讐か!?」
屋敷の主人らしい男が、泡を飛ばしながら金切り声をあげる。
「聞き出すのはおれに任せろ」
「ならば、私は邪魔が入らないように掃討しよう」
主人への尋問役はジャンマルコ。その他大勢の排除はリリアン。
一瞬で役割分担を終えた二人は、同時に床を蹴った。
「信じらんない! 信じらんない!」
先ほどから、ずっとこの調子である。
リリアンは「困ったな」と困惑気味に頬をかいた。
「こっちは二人だったのよ!? 無事だったから良かったものの、あんな無茶はもうやめて! 心臓が止まるかと思ったわ!」
「悪魔より弱かったですよ?」
「おれは昔、多勢に無勢を一人で相手したことがあるしな」
「二人とも反省してる!?」
「はい、すみません」
「シャルロット殿の前では無茶はやめます」
「私の、前じゃ、なくてもよ!!」
シャルロットはポカポカと、ジャンマルコの頭を小さな両手で叩いた。
しかし如何せん、大きさが大きさである。意識しないと衝撃すら感じられないほどの弱さだったが、ジャンマルコはあえて「痛いです」と口にした。
「反省した!?」
「しました、しました」
「してないわね……」
完全に棒読みで、嘘だと丸わかりだった。
何か効く手はないかと考え、シャルロットは「そうだわ」と閃いた。
「リリアンちゃんの前で怖いことしたら、嫌われちゃうわよ!」
「知ってます、シャルロット殿? おれが主人を尋問中、こいつ一人で屋敷の連中を全員戦闘不能にしたんですよ」
「……」
知っている。なんなら目の前で見ていた。そして、夢だと思いたかった。
(アレクはリリアンちゃんにどういう教育したの……!?)
礼儀は正しいし、思いやりもある。しかし、戦闘力はもう少し控えめでよかった。
重い剣より刺繍針を持ってほしかったし、敵を倒して不敵に笑うより、花を愛でて優しく微笑んでほしかった。
「今の騒ぎで、もうじき夜警も来るでしょう。奴らを引き渡したら、指輪をミザリーさんに返しに参りましょう」
ジャンマルコが尋問の末に見つけ出した指輪を手に、リリアンがニッコリと笑う。
(うん! 元気なら、ちょっとくらいわんぱくでもいいわ……!)
どこまでも無邪気で強大なリリアンを前に、シャルロットはそっと思考を遠くに投げ捨てた。
それから先は、実に順調であった。
実の娘を殺害した罪で貴族夫妻を夜警へ引き渡した後、三人は指輪を持ってミザリーの元へと向かった。
彼女の現れる場所も、シャルロットが既に突き止めていたのだった。
「ねぇ、わたしの指輪を知らない?」
そう儚げに言って姿を現した幽霊に臆することなく、リリアンは彼女に指輪を差し出した。
「嵌めて差し上げても、よろしいですか?」
「え? でも……」
そこでミザリーは、初めて己の左手がないことに気づいたように、悲しそうな気配を纏った。しかし、リリアンは静かに微笑む。
「ああ……見とれるほど美しい手ですね」
そこにまるであるかのように優しく手を掬う仕草をすれば、不思議なことに、薄らと彼女の左手が現れた。
リリアンは片膝を突くと、驚くミザリーの左手薬指にそっと指輪を嵌める。
「これでもう、恋人に会いに行けますね? ミザリーさん」
ミザリーの頬を、幾筋もの涙が伝う。
そう……彼女はずっと、恋人の彼に会いたかった。けれど、彼に貰った指輪を失くしたままでは会いに行けなかったのだ。あの人は、そんなことを気にするはずもないと知っているのに。
「宝物って、贈る人より貰った人の方が、より輝いて見えるんですよね。見つかってよかったですね……あなたの宝物」
リリアンの言葉に滂沱の涙を流し、ミザリーは何度も頷いて肯定した。
それからか細い声で、たどたどしく、けれど心を込めて「ありがとう」と紡ぐと、すーっと姿を消した。
きっと、愛する恋人のもとへ旅立ったのだろう。
リリアンは静かに立ち上がると、後ろで見守っていたシャルロットとジャンマルコの方へ振り返った。
「さて、帰ろうか。二人とも」
帰路の途中、ジャンマルコは何度かリリアンに視線を向けては、目が合う前にサッと逸らしていた。
「さっきからなんだ、君は」
「……お前がなんで男じゃないんだっつー気持ちと、男じゃなくてよかったっつー気持ちがせめぎ合ってんだよ」
「は?」
「マルコくん、完全に空気だったもんねー! それに比べてリリアンちゃんの王子様っぷり! 私までドキドキしちゃったわ」
「私は何か変なことをしましたか?」
「これで無自覚よ? どう思う、マルコくん」
「ジャンマルコです。……とりあえず、自分に恋人ができても、こいつにだけは引き合わせたくないと思いましたね」
まあ、その前に聖職者である自分には恋愛などご法度なのだが。
「ここはリリアンちゃんに惚れるところでしょ~」
「いや、あれで惚れるのは女でしょう」
「なんの話をしているんだ」
「なんでもねぇ。……けど、もう帰っていいのか? そりゃもういい時間だけどよ、悪魔も残すとこあと一匹だし、もう少し探してみねぇか?」
「あ、そのことなんだが」
リリアンはそこで満面の笑みを浮かべると、どこか大げさに、両手を左右へ広げてみせた。
「今夜はいいことが二つあったぞ。ひとつはもちろんミザリーさんに指輪を返せたことと、もうひとつ……最後の悪魔を倒したことだ」
数拍置いてから、ジャンマルコの口から空気が漏れた。
「は?」と言ったつもりが、あまりの脱力に声すら出なかったのだ。
「驚きすぎて声も出ないか? そうか、そうか」
「……呆れてたんだよ! いつだ! 今夜はずっと一緒にいたはずだぞ!」
「私も途中からだけどずっと一緒にいたわ! もしかして、指輪を取りに行く前?」
「いや、二人も一緒にいたよ。ほら、ミザリー嬢の実家に襲撃……じゃない、お礼参り……でもないか。お宅訪問したじゃないか」
「あれは襲撃と言っていいわ」
「まごうことなき襲撃だわ」
「外聞が悪いかなと思ってな」
「いいから、リリアンちゃん! 話を続けて!」
「うん? ですから、今言いました」
「え?」
「使用人たちの中に紛れ込んでいたんですよ、悪魔が。まあ大きくなったとしても長身の男性くらいですからね。紛れ込まれたらちょっと解らなくなりますよね」
「はああああ!? あの時!? なんでおれに声を掛けねぇ!」
「だって、忙しそうだったし」
尋問で。
喜ばれると思ったのに想定外の反応ばかりが返ってきて、リリアンは徐々にしょんぼりと元気をなくしていった。
「これでアレクも自由の身になるのに。マルコ殿も故郷に帰れるのに。……なんで文句ばかりなんだ」
「お前っ……、ああ、クソッ!!」
ジャンマルコは未だ文句を言い足りない様子だったが、がしっとリリアンの頭を掴むと、乱暴にその髪を撫で回した。
「……よく、やった!!」
投げやりな言い方といい、明らかに褒め慣れていないぎこちなさに、リリアンはくすっと可笑しそうに笑った。
「下手くそだな」
そんな二人の微笑ましいやり取りを、一歩離れた場所からシャルロットが優しく見守っていた。
夜が明け、朝になると全員で宮廷に向かった。釈放されるアレクシスを迎えに行くためだ。
早馬で先に「すべての悪魔を取り除いた」旨は宮廷に伝えてあった。
正確には、アスタロトの手によってすべての悪魔が地獄へ送還されたことになっている。アレクシスの釈放条件は、アスタロトを除くすべての悪魔の帰還であった。
なぜアスタロトだけが除外されているのかといえば、アレクシスを確実に自由の身とするための保険だからだ。逆にアレクシスの自由さえ認められれば、アスタロトも素直に地獄へ去る手筈になっていた。
「リリー! みんな!」
衛兵を引き連れて現れたアレクシスのもとへ、まずクレマンとアニーが真っ先に駆け寄った。
「じい、アニーも心配かけたね」
「お帰りをお待ちしておりました、坊ちゃん」
「うっ……やっと……! 坊ちゃま……っ!」
リリアンが成長するにつれ、アレクシスを『坊ちゃま』から『旦那様』へと呼び改めていたアニーだったが、この瞬間ばかりは箍が外れたようだった。幼い頃の呼び名のまま、アレクシスの服を皺ができるほど強く握りしめている。
「本当に心配させてごめんよ」
アレクシスはアニーの細い肩にそっと手を回し、優しく宥めていた。
その光景を少し離れた場所からボニーベンナルト、ジャンマルコ、リリアンが見守っている。アスタロトは隣に立つ司祭長を牽制・威嚇するように佇んでいた。
そして姿は見せないものの、この場にはラファエルとシャルロットも同席しており、アレクシスの釈放を共に喜んでいた。
「お前は行かなくてもいいのか?」
「ん? 私はいいんだ」
ジャンマルコは不思議に思った。てっきり、一番最初に駆け寄るものだと思っていたからだ。
それはアレクシスも同じだったらしく、リリアンの方へと首を巡らせた。
「リリー! 本当に……また会えてよかった。そこのお二人が、手紙に書いてあったボニーベンナルト殿とジャンマルコ殿だね?」
アレクシスから視線を向けられた瞬間、ジャンマルコの背筋にぞっと冷たいものが走った。
まるで『娘への不貞を一欠片も見逃さない』と言わんばかりの、蛇のように鋭く冷徹な目つきだった。
「うちの子が大変お世話になったようだね? ……ぜひ、お礼をさせてほしい」
「遠慮します。遠慮している遠慮ではなく、心の底から遠慮します」
自分でも何を口走っているのか解らなくなってきた。ただ、己の本能が『この男は心底やばい』と全力で警鐘を鳴らしていた。
「リリーの髪に触れたとか」
(シャルロット殿ぉぉぉぉぉっっ!!)
ジャンマルコは心の中で声なき悲鳴をあげた。
確かに髪には触れた! 触れたが、あれは何の他意もない! ただ不器用に褒めただけだ!!——と、必死に心の中で弁明を叫ぶのだった。
「知っているよ。褒めたんだろう? ありがとう。でも、年頃の娘の頭を気軽に撫でるなんて、紳士としていかがなものかと思うよ。君はそう思わない?」
「自分、神父見習いでして」
「だから?」
こ、こええええええええええーーーー!!
司祭長の手前もあるし、衛兵たちの目もあるため「神父」と偽の肩書を名乗ってみたが、華麗に一蹴された。見習いでも聖職者なら女性にそうそう触れない(恋愛などご法度だ)と伝わると思ったのだが、完全に甘かった。
(なるほど……常軌を逸した親バカか)
アスタロトの事前忠告は正しかった。今、身をもってそれを痛感している。
丸腰の相手を前にしてこれほど冷や汗をかくなんて、暗殺専門の異端審問官が聞いて呆れる。助けを求めるようにリリアンを見ると——そこで、違和感を覚えた。
彼女が、ずっと凪いだような笑みを浮かべていたのだ。
「リリー、どうしたんだい? こっちにおいで」
アレクシスもまた、娘の異変に気づいたのか、不安そうにその名を呼んだ。
しかし、リリアンは一歩も動かない。凪いだ笑みを張り付けたまま、彼女は静かに口を開いた。
「あなたに仕え、護り抜くこと。それが私の誓いです」
アレクシスの瞳が、恐怖に大きく見開かれる。
その誓いは、あの日の夜の——。
とてつもなく嫌な予感が、背筋を駆け抜けた。
「リリー、早くおいで! 急にどうしたんだ……!」
「アレク、私は正しく、あなたの騎士であれただろうか」
「リリー、こっちに来るんだ……!」
アレクシスの焦りが最高潮に達し、とうとう命令口調へと変わる。
それでもリリアンは動かない。ならばこちらから出向くまでと、アレクシスが地面を蹴ろうとした瞬間——左右で彼を護衛していたはずの衛兵たちが、その両脇をガシリと捕縛した。
「なんだ、貴様ら! 離せ!」
「惑わされてはなりません!」
「あなた様のためです!」
「はあ!?」
いったい何を、何を言っているんだこいつらは。
驚愕して左右の衛兵たちを睨みつけると、それと同時に新たな人間たちが続々と宮廷の門から吐き出されてきた。武装した兵士数名と、厳めしい法衣を纏った異端審問の聖職者たちだ。
彼らは一直線にリリアンへ向かうと、瞬く間に彼女の周囲を取り囲んだ。その奥からは、黒塗りの重厚な馬車が近づいてくる。
「なにが……何が起こっているんだ……!」
「あなたたちも離れなさい! 危険ですよ!」
「どういうことだ、おい!」
「リリアンさんを、どうするつもりじゃ!」
ジャンマルコも、ボニーベンナルトも、駆け寄ろうとしたが屈強な兵士たちに無理やりリリアンから引き離された。
それから、リリアンが静かに馬車へと乗り込み、どこぞへと連れ去られていくのを、全員がただ呆然と見送るしかなかった。
重々しい馬車が去っていくと、押し寄せた兵士たちも潮が引くようにいなくなった。
その場に唯一残った高位の聖職者が、冷徹な目で一瞥をくれると、罪状を読み上げるように携えていた巻物を上下に大きく開いて見せた。
「リリアン・ホーマンは、自らが魔女であることを認めた。これより聖なる教会の厳正なる裁判にかけるため、ローマの審問所へと連行する」




