〜小 話〜 謹慎の理由
謹慎が明けたジャンマルコが検邪聖省を訪れると、上司のレオナルドが笑顔で出迎えてくれた。
「久しぶりだなマルコ! ローマに帰ってきたと思えばそのまま謹慎になりやがって! 心配したんだぞこのバカ!」
「すみません」
「だがよ、気持ちも解るぜ。長旅の任務の末が、身内の恥を晒すだけとなっちゃあな。ヤケも起こすってもんだ」
「すみま……ヤケ?」
「行ったんだろ? いかがわしい店に」
「なんて?」
「いやいい、気持ちは解る。だけどお前も男だったんだな。安心したぜ。でも次はバレねーようにやれよ?」
「ちょっと待って下さい! どういうことっスか!」
混乱するジャンマルコと尻目に、レオナルドは慈愛に満ちた笑みで続ける。
「だから娼館に行ったのがバレて謹慎になったんだろ?」
「はああああ!?」
酷い誤解である。魔女裁判のことは箝口令が敷かれている為、真実は表に出せないが、だからといってそれはない。人の名誉をなんだと思っているんだ。
「誰がそんなこと言ったんですか!」
「誰って、アレクシス司祭長だよ。お前は知らんだろうが、今度のフランス王室司祭長に任命されたお方だ。元貴族らしいが全く気取ってなくてな、初対面の俺の質問にも答えてくれる優しい人だったぞ。あれで俺よりも歳下ってんだから頭が下がるわ」
「………」
超知ってる。なんなら今もうちにいる。
「デマです!」
「そうなのか? じゃあなんで謹慎になったんだよ」
「え、」
ジャンマルコは焦った。改めて聞かれると何も浮かばない。何だかんだと真面目な青年であった。彼はあれこれと言い訳を探して、最後には唇を噛んだ。そしてしぼり出すように言った。
「……い、いかがわしい店に、行きました……」
「やっぱそうなんじゃねえか」
気にするな。気持ちはよく解る。と慰められ、屈辱でこめかみが痙攣した。
その日の仕事を終えたジャンマルコは、帰宅すると真っ先にアレクシスへと詰め寄った。
「あんた! なんつーデマを流してくれてんだよ!」
「おかえりマルコ君。デマって?」
「その、おれが、しょ、娼館に行ったとか」
「ああ、もしかしてレオナルド殿かな? 彼、いい上司だよね。君のこと心配してたよ。あと言っとくけど、彼にしか言ってないからね」
「それでも! もっとマシな言い訳があっただろーが!」
「あったけどそっちの方が良かった? なんなら今からでも訂正してくるけど?」
「……一応聞かせてくれ」
「袖の下で教皇にかつらを贈ったら謹慎になっちゃって」
「マシなのっつってんだろーが!!!!」




