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幽霊界隈で「派遣」と呼ばれています。~怖くない主人公の迷惑すぎる日常~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2・第20話:小学校へのバス旅と、増殖する乗客たち

シーズン2・第20話をお読みいただき、そしていつも温かい応援を本当にありがとうございます!


今回は、ついに次の目的地「古い小学校跡地」に向けて路線バスで出発する楓ちゃんのお話です。本人はワクワクの遠足気分ですが、背後の霊たちは車内でもすっかり大はしゃぎで……?


マイペースな主人公と霊たちのシュールなバス旅を描く第20話、ぜひお楽しみください!


それでは、スタートです!

「よし、準備万端! いざ、都内の廃小学校へ出発!」


土曜日の朝、水野楓(みずの かえで)は、防寒用のジャンパーに身を包み、パンパンに荷物の詰まったリュックサックを背負ってアパートの玄関を飛び出した。

今日の目的地は、数年前に統廃合で使われなくなった『旧・桜ヶ丘小学校』だ。

ネットの噂によれば、夜な夜な誰もいない校舎からオルガンの音が聞こえたり、理科室の人体模型が廊下を歩き回ったりするという、王道のホラー・スポットである。


「やっぱりホラーの王道と言えば学校だよねえ。音楽室のベートーベンがこっちを睨みつけてきたらどうしよう、なんて想像するだけでワクワクしちゃうな!」


満面の笑みを浮かべながら、最寄りのバス停へと軽快な足取りで歩いていく楓。

その背後には、アパートのリビングを占拠していた数十体の霊たちが、待ちきれないと言わばかりにぞろぞろと大名行列を作ってついてきていた。


『おいおい、今日の行き先は小学校だぜ!』

『やったなぁ! 俺、生きてる頃は給食の揚げパンが一番好きだったんだよなぁ』

『そういう話をしてたらお腹が減ってきた……って、幽霊だから食べられないんだけどさ!』

『あはは、でもあの女についていけば、また面白い人間どもの悲鳴が聞けるぞ!』


霊たちは、楓の背中からすっかり「遠足気分」ではしゃぎ回っている。

もちろん、霊感ゼロの楓にはその賑やかな気配すら一切感じられない。ただ「今朝は一段と空気が引き締まっていて、絶好の取材日和だなあ」などと、相変わらず的外れな感想を抱きながらバス停のベンチに腰掛けた。


やがて、ゴウンゴウンとエンジン音を響かせながら、年季の入った路線バスが滑り込んできた。

プシューと扉が開き、楓はリュックを背負ったまま一番乗りで乗り込む。


「おや、お嬢さん、今日はまた一段と大きな荷物だねえ。どちらまで?」

運転手がバックミラー越しに声をかけた。顔色は心持ち青白い。


「はい! 隣町の桜ヶ丘小学校のあたりまでお願いします!」

元気に答える楓の言葉に、運転手は「ゲッ……」という顔を隠しきれず、わずかに引きつった笑みを浮かべた。

「あ、あそこの廃校かい……。最近、あの一帯は妙な噂が絶えないから、夜はもちろん昼間でも気をつけるんだよ……」


「ありがとうございます、気をつけて探検してきます!」

快活に返事をすると、楓は一番後ろの席へと腰を下ろした。


――その瞬間。

楓を追うようにしてバスの車内に乗り込んできた無数の霊たちが、一斉になだれ込んできた。


『うわ、また狭い車内だな!』

『でも、みんなして窓の外の流れる景色が見られるから悪くないぞ』

『おい、一番前の運転席のオッサン、また冷や汗かいてやがるぜ。気合が足りないなぁ!』


バスが発車し、ガタゴトと揺れながら住宅街を抜けて山の方へと走り出す。

その車内では、みるみるうちに空気が冷え込み、窓ガラスにうっすらと白い結露が張り付いていった。


「……っ! なんだ、この冷気は……! エアコンは暖房にしてるはずなのに、なんで後ろからこんな凍てつくようなプレッシャーが……っ!」


運転手はバックミラーを恐る恐る覗き込み、冷汗をダラダラと流しながら必死にハンドルを握り締めた。

しかし、ミラーに映っているのは、一番後ろの席で熱心に取材ノートをめくる楓の姿と、その周囲を埋め尽くすようにうごめく無数の「冷たい影たち」だけだ。


そんな運転手の恐怖など露知らず、楓はノートのページに赤ペンで大きく「桜ヶ丘小学校」と書き込みながら、ひとりごちていた。


「ええっと、学校の怪談といえば……やっぱりトイレの花子さんと、音楽室のピアノ、そして理科室の人体模型かあ。どれか一つくらい、本物の怪異に出くわしてみたいなあ」


自分の背後が、東京中の霊たちを乗せた「超満員の特急バス」になっていることなど知る由もない。


バスはガタゴトと揺れながら、緑の濃くなってきた山あいの道路を走り続けていく。

廃小学校を舞台に、「幽霊派遣」のマイペースな大冒険がいよいよ始まろうとしていた――。

シーズン2・第20話、最後までお読みいただきありがとうございました!


路線バスの中で大はしゃぎする霊たちと、それを全く知らずに「絶好の取材日和!」と意気込む楓ちゃんの構図、楽しんでいただけましたでしょうか(笑)。

本人は本気で怪奇現象に遭いたいだけなのに、移動するだけで周囲の空間を凍りつかせていくこのスタイル、ここからいよいよ廃小学校での本番が始まります!

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