シーズン2・第19話:アパートの占拠者たちと、次のターゲット
シーズン2・第19話をお読みいただき、そしていつも温かい応援を本当にありがとうございます!
赤坂ドライブインの取材を終え、自宅で次の準備を進める楓ちゃん。しかし彼女のアパートは、すっかり霊たちの「快適な溜まり場」と化していて……?
マイペースな主人公と、彼女をすっかりアテにして我が物顔でくつろぐ霊たちの日常を描く第19話、ぜひお楽しみください!
それでは、スタートです!
「ふあぁ……よく寝た!」
日曜日の朝。水野楓は、気持ちの良い太陽の光が差し込むベッドの上で、大きく伸びをした。
昨日の赤坂ドライブインの取材で歩き回ったせいか、心地よい疲労感が全身に残っている。
「よし、昨日の写真はどれもブレてなくていい感じだ。これをベースに、今週中には新しい小説のワンシーンを書き上げようっと」
ルンルン気分でリビングに移動し、お気に入りのマグカップにカフェオレを注ぐ楓。
――だが、そのリビングの光景は、彼女の認識とは全く異なる「別の空間」と化していた。
部屋の中央、ソファのまわりには、赤坂ドライブインから持ち帰った(というより勝手についてきた)数十体の幽霊たちが、まるで我が物顔でくつろいでいるのだ。
『いやあ、このアパート、昨日のドライブインより空気が暖かくて居心地がいいぜ』
『おい、そのテレビのリモコン、チャンネル変えられるか?』
『無理だって、俺たちの霊波じゃ物質は動かせないもん。でも、この女が淹れるコーヒーの匂いだけで、結構お腹いっぱいになるよな』
霊たちはすっかり楓の部屋を自分たちの「セカンドハウス(というか溜まり場)」として気に入っていた。
もちろん、霊感ゼロの楓にはその姿は見えないし、声も聞こえない。ただ、リビングに足を踏み入れた瞬間に「あれ、なんか今朝はリビングの窓を閉め忘れたっけ? 急に肌寒くなったなあ」と感じた程度だった。
「むぅ、やっぱり秋が近づいてるから冷えるのかな。体調管理には気を付けないとね」
呑気に首を傾げながら、楓はパソコンの前に座り、次の取材予定地が書かれた「取材ノート」を開いた。
「次のターゲットは……都内の古い小学校跡地、っと」
ノートに記されたその文字を見た瞬間、リビングのあちこちにたむろしていた霊たちが、パッと顔を輝かせて一斉に集まってきた。
『おおっ! 小学校だってよ!』
『やったぜ、あそこは昔の校庭とか体育館とか、走り回るスペースが広くて最高じゃねえか!』
『ねえねえ、あの女、今度はいつ出発するんだ? 土曜日? それとも日曜日?』
霊たちは、楓がペンを走らせる手元を覗き込みながら、まるで遠足を楽しみに待つ子供のようにソワソワし始めた。
当の楓は、自分のノートが幽霊たちの「次なる遊園地のスケジュール表」になっていることなど露知らず、真剣な顔でパソコンに向かってキーボードを叩いている。
「小学校の怪談といえば、やっぱり『音楽室のベートーベンの肖像画が夜中に動く』とか、『トイレの花子さん』とか定番だよねえ。よし、今回の取材ではそういう王道の怪異をガッツリ体験して、リアルな描写を小説にぶち込んでやるんだから!」
闘志を燃やす楓。
その背後では、霊たちが「おっ、いいぞいいぞ、もっと意気込んでくれ!」と言わばかりに、パチパチと(音の出ない)拍手を送っていた。
「あ、そうだ。小学校に行くなら、懐中電灯の電池も予備を買っておかないとね。あと、防寒用のジャンパーも……っと」
テキパキと持ち物のリストアップを始める楓。
彼女自身は「本物の怪奇現象に遭いたい」と切実に願っているだけなのだが、彼女が動けば動くほど、その背後に群がる霊の数はネズミ算式に増えていき、街全体の怪異密度がどんどん跳ね上がっていく。
「ふう、準備は万全! 今週末の小学校探索が今から楽しみだなあ」
満足げに伸びをする楓。
その背後で、数十体の霊たちがニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ、次の「大移動」に向けた作戦会議をこっそり始めているのだった――。
シーズン2・第19話、最後までお読みいただきありがとうございました!
自宅のリビングを幽霊たちに完全占拠されているとも知らず、優雅にカフェオレを飲む楓ちゃんのマイペースさと、それをすっかりエンタメとして満喫する霊たちの構図、楽しんでいただけましたでしょうか(笑)。
本人は本気で怪奇現象に遭いたいだけなのに、周囲の環境がどんどんホラー化していくこのギャップ、ここからさらに加速していきます!




