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幽霊界隈で「派遣」と呼ばれています。~怖くない主人公の迷惑すぎる日常~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2・第18話:帰路のバスと、次なるターゲット

シーズン2・第18話をお読みいただき、そしていつも温かい応援を本当にありがとうございます!


赤坂ドライブインでの探索を大満足で終え、ルンルン気分で帰路につく楓ちゃん。しかし、彼女の背後では霊たちがすっかり「次の目的地(次の路線図)」に大興奮していて……?


マイペースな主人公と、彼女をすっかり気に入った霊たちのシュールな旅を描く第18話、ぜひお楽しみください!


それでは、スタートです!

「ふう、お疲れ様私! いやあ、今回の赤坂ドライブインは今までにない大収穫だったなあ!」


夕暮れ時の山道。

水野楓(みずの かえで)は、パンパンに膨らんだリュックサックを背負い、軽快な足取りでバス停のベンチへと戻ってきた。

カメラのSDカードには、崩れかけた食堂跡や、誰もいないのに勝手に開閉した冷蔵庫(の残骸)、そして壁に浮かんだ不気味な黒い手形の写真がたっぷりと収められている。


「これだけ揃えば、今度のWEB連載小説はアクセス数が跳ね上がること間違いなしだぞ。やっぱり、現場に足を運ぶって大事だなあ」


満足げにスマホの画面をスクロールする楓。

その背後には、赤坂ドライブインでさらに数体の「新しいはぐれ霊」をちゃっかり引き連れ、総勢がさらに膨れ上がった大名行列(幽霊たち)が、満足そうな顔をしてひしめき合っていた。


『いやあ、あのドライブイン、久しぶりに暴れられて楽しかったなぁ!』

『あの女、相変わらず全然ビビらなかったけど、俺たちが壁に描いた手形の写真めっちゃ嬉しそうに撮ってたぞ』

『最高だな、この「派遣(乗り物)」。自分じゃ一歩も遠くへ行けなかったのに、この女についていくだけでいろんなスポットに行けるなんて最高すぎるぜ!』


霊たちは、楓の背中ですっかり彼女のことを「便利な移動手段兼エンターテインメント・プロデューサー」として崇め始めていた。

一人では決して山あいの廃墟から出られなかった彼らにとって、全国津々浦々の心霊スポットを自ら歩いて回ってくれる楓は、神様よりもありがた存在だったのだ。


ガタゴトと音を立てながら、帰りの路線バスがバス停に滑り込んできた。

プシューと扉が開き、疲れた様子の運転手が顔を出す。


「おや、お嬢さん、無事に帰ってきたかい。あのドライブイン、何か変なものでも出たか?」

心配そうに尋ねる運転手に、楓は満面の笑みで首を縦に振った。


「はい! めちゃくちゃ最高でした! 空気もひんやりしてて涼しかったし、色々と面白い音も聞こえたし、大満足です!」

「は、はあ……若いってのはすごいねえ……」


運転手は、楓から漂う尋常ではない冷気に身震いしながら、早々に彼女を一番後ろの席へと促した。

バスが発車し、夕暮れの山道を街へと下っていく。


その車内、楓の周囲を囲むようにして、またしてもキンキンの冷気が充満し、窓ガラスが真っ白に凍りついていく。

運転手はバックミラーを恐る恐る覗き込み、青い顔で冷汗を拭いながら必死にハンドルを握り締めていた。


そんな運転手の恐怖など露知らず、楓はリュックからノートパソコンを取り出し、今日の取材メモをまとめ始めていた。


「ええっと、赤坂ドライブインの次は……どこに行こうかな」

ペラペラと取材ノートのページをめくる楓。

その手元を、背後から何十もの冷たい視線がジッと覗き込んでいた。


『おっ、次のページに何か書いてあるぞ!』

『どれどれ……「来週の予定:都内某所のいわつきトンネル、または古い小学校」だってよ!』

『小学校かぁ! あそこなら子供の霊もたくさんいそうだし、もっと賑やかになりそうじゃねえか!』


霊たちは、ノートに書かれた次の候補地を見て、まるで修学旅行の計画を立てる小学生のように大はしゃぎした。


「よし、来週は都内の古い小学校跡地に行ってみよう。あそこなら、教室の黒板とかに何か面白いメッセージが残ってるかもしれないぞ」


パタンとノートを閉じ、満足げに伸びをする楓。

彼女が自らの足で歩き、自らの手でノートに記す「取材予定地」そのものが、今や東京中の幽霊たちを熱狂させる「巨大なフリーパス路線図」として機能していることなど、本人は相変わらず微塵も気づいていない。


バスが街の灯りの中に差し掛かり、静かにスピードを落としていく。

楓の日常は一見平和そのものに見えるが、その背後でうごめく「幽霊の大名行列」は、確実に次のターゲットへと向けて規模を拡大し続けていた。


「ただいま、我が家!」

アパートのドアを開け、元気に部屋へと飛び込む楓。


その背後から、無数の冷たい影たちがぞろぞろとなだれ込み、また新しい一夜が始まろうとしていた――。

シーズン2・第18話、最後までお読みいただきありがとうございました!


帰りのバスの中でも次のスポットを品定めする霊たちと、それを知らずにウキウキで取材ノートをまとめる楓ちゃんの構図、楽しんでいただけましたでしょうか(笑)。

本人はただホラー小説を書きたいだけなのに、行動するたびに霊のネットワークが拡大していくこの物語、ここからさらにスケールアップしていきます!

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