シーズン2・第17話:赤坂ドライブインの怪異と、マイペースな探索者
シーズン2・第17話をお読みいただき、そしていつも温かい応援を本当にありがとうございます!
今回は、ついに到着した心霊スポット「赤坂ドライブイン」で大はしゃぎする楓ちゃんと、彼女を利用して廃墟全体を一大ホラーアトラクションに変えていく霊たちのドタバタを描きます!
マイペースな主人公と悪ノリする霊たちのシュールな噛み合わなさが楽しい第17話、ぜひお楽しみください!
それでは、スタートです!
「うわあ……すごい。これぞ求めてた廃墟って感じだね!」
水野楓は、三十年前に閉業した『赤坂ドライブイン』の朽ち果てた建物の前で、目を輝かせてリュックから小型カメラを取り出した。
目の前には、色あせた看板が風に揺れ、割れたガラス窓からは雑草が這い出している、いかにもな心霊スポットが広がっている。ネットの噂通り、不気味な雰囲気をプンプンと漂わせている建物だ。
「よし、さっそく中を探索してみよう。食堂跡地の方から回れば、当時の雰囲気が一番残ってそうだな」
ワクワクしながら足を踏み出す楓。
その背後には、バスを降りてからぞろぞろとついてきた無数の霊たちが、待っていましたと言わばかりになだれ込んできた。
『おおー、ここだここだ! 懐かしいなぁ、このボロボロになった看板!』
『ねえ、中に入ったらまずはどのテーブルに陣取る?』
『あたしたちは厨房のあたりがひんやりしてて落ち着くかも!』
霊たちは、楓の背中からスルスルと離れると、まるで修学旅行生のようにワイワイと廃墟の中へと散らばっていった。
もちろん、霊感ゼロの楓にはその賑やかな気配すら一切感じられない。ただ「うわ、中に入ると一段と空気がひんやりしてて、夏場には最高の避暑地だなあ」などと、相変わらず的外れな感想を抱きながら、懐中電灯の光を頼りに薄暗い食堂跡へと足を踏み入れた。
ガリッ、と足元で何かを踏みつける音がした。
懐中電灯の光を向けると、そこには割れた皿の破片や、埃をかぶった古いメニュー表が散乱していた。
「ふむふむ。『ラーメン 350円』か……。昔は安かったんだなあ。こういう生活感のある廃墟って、なんだか歴史を感じられてロマンがあるよね」
ノートを取り出し、スラスラとペンを走らせる楓。
その背後では、霊たちが面白半分に悪ふざけを始めていた。
『ねえねえ、あそことかどう? ちょっと脅かしてみようぜ』
『いや、この女は脅かしても全然ビビらないから面白くないぞ。それより、あそこの天井の隅っこ、ちょうどいい埃が溜まってて最高に不気味な演出ができそうだ!』
ヤンキー風の霊や外科医の霊が結託して、食堂の天井や壁をペタペタと触っていく。
すると、どうだろう。
楓が「さて、次は奥の調理場に行ってみるか」と歩き出した瞬間、背後の壁にべっとりと黒い手形がいくつも浮かび上がり、天井の古びた換気扇が誰もいないのに「キイイイッ……!」と甲高い金属音を立てて勝手に回り始めた。
さらに、厨房の奥から、ガシャアアアッと大量の食器が崩れ落ちるような激しい音が響き渡る。
「おっ……!」
楓はパッと顔を上げ、目を輝かせた。
「今の音、けっこう大きかったぞ! もしかして、本当にネズミか何かが暴れてるのかな? それとも、噂にあったトラックの残骸の音……?」
足早に厨房へと向かう楓。
しかし、彼女が厨房のドアを開けたときには、そこに広がっていたのはただの静まり返ったガラクタの山だけであり、怪奇現象の主たちの姿はきれいさっぱり隠れていた。
『あはは、ざまあみろ! 全然気づいてねえの!』
『でも、今の音はなかなかいい響きだったな。あいつ、絶対にビビると思ったのに拍子抜けだぜ』
『やっぱりこの女を驚かせるのは無理だな。素直にここで暴れたほうが楽しいや!』
霊たちはすっかり赤坂ドライブインを自分たちの「新しい遊び場」として気に入り、思い思いにポルターガイスト現象を引き起こし始めた。
勝手に点滅する蛍光灯、勝手に開閉する冷蔵庫の扉、そして窓の外を横切る不気味な赤い影。
廃墟全体が、楓が持ち込んだ霊たちのせいで、一気に「本物の地獄絵図」のような様相を呈し始める。
だが、当の本人の楓はというと、スマートフォンで室内の写真をパシャパシャと撮りながら、すっかり満足げな笑みを浮かべていた。
「いやあ、ここまで綺麗に物音がしたり空気が冷え込んだりすると、記事の書きがいがあるなあ! よし、今日の取材は大成功ってことでいいよね!」
自らは何も怖がらず、むしろ「良いネタが拾えた」と大喜びしながら、次から次へと霊たちを引き連れて歩く「幽霊派遣」。
彼女がこの廃墟を出たあと、このドライブインがさらにヤバい心霊スポットとして都市伝説になってしまうことを、楓はまだ知る由もなかった――。
シーズン2・第17話、最後までお読みいただきありがとうございました!
赤坂ドライブインで大はしゃぎする霊たちと、それを「いい取材ネタが撮れた!」と勘違いして大喜びする楓ちゃんの構図、楽しんでいただけましたでしょうか(笑)。
本人は全く怖がっていないのに、周囲をどんどん危険な怪異まみれにしていくスタイル、ここからさらに物語は加速していきます!




