シーズン2・第15話:路線図の正体と、新たな目的地
シーズン2・第15話をお読みいただき、そしていつも温かい応援を本当にありがとうございます!
実家での大騒動を終え、マイペースに自宅へ戻ってきた楓ちゃん。本人は次の取材先に向けてウキウキですが、彼女の背後に群がる霊たちは、ノートに書かれた予定表をすっかり「自分たちの路線図」として活用しているようで……?
すれ違う思惑がシュールな笑いを呼ぶ第15話、ぜひお楽しみください!
それでは、スタートです!
「ふう、実家のご飯はやっぱり美味しいなあ。お母さんの手料理でパワーも全快したし、今週もバリバリ執筆するぞ!」
水野楓は、実家からの大量のお土産(野菜やタッパーに入った煮物)が詰まったボストンバッグを抱え、自分のアパートの部屋へと戻ってきた。
ガチャリと鍵を開け、リビングの扉を押し開ける。
——だが、その部屋の空気は、彼女が留守にしていた間も全く変わっていなかった。
むしろ、実家から戻ってきた楓の背後には、さらに数体「新しい霊」が追加されている。
実家の近所の古い神社や、バス停で見つけたはぐれ霊たちが、いつの間にか大名行列の仲間入りを果たしていたのだ。
『いやあ、実家のお母さんの料理、遠くから匂いだけ嗅いだけど旨そうだったな!』
『おい、このアパートの部屋、いつの間にか俺たちの溜まり場になってやがるぜ』
『ねえねえ、次はどこに連れて行ってくれるんだ? あそこのデータベース、次の行き先が書いてあるぞ』
部屋の壁際にたむろしている無数の霊たちは、リビングの机の上に無造作に置かれた楓の「取材ノート」を覗き込みながら、ヒソヒソと(霊波で)話し合っていた。
当の楓は、そんな霊たちの気配など一切感じることなく、ルンルン気分でパソコンを机にセッティングし、取材ノートを開いた。
「ええっと、今週はどこの心霊スポットに行こうかな……。ネットの噂だと、隣町の『廃ドライブイン』が最近アツいらしい。よし、ここにしよう!」
楓がパチパチとキーボードを叩き、新しい取材予定地をノートに書き込んだその瞬間。
彼女の背後に群がっていた霊たちが、一斉に首を伸ばしてその文字を凝視した。
『おおっ! 隣町の廃ドライブインか! あそこ、昔はトラックドライバーですげえ賑わってたんだよな!』
『マジか! よし、次の目的地はそこに決定だな!』
『おい、あいつのあの取材ノート、完全に俺たちの「路線図」になってんじゃねえか……!』
霊たちは大喜びで空中をふわふわと漂いながら、ガッツポーズ(のようなもの)をとった。
しかし、楓自身は、自分の書いている取材ノートが、幽霊たちの移動経路――いわゆる「鉄道路線図」のようになっていることなど、微塵も気づいていない。
「うーん、何度見ても私の取材ノートって完璧なスケジュール帳だなあ。でも、なんで最近、友達や家族に会うとみんな『最近家の中が寒い』とか『泥の足跡が増えた』とか、妙なことばかり言うんだろう?」
首をかしげながら、楓はマグカップに温かいコーヒーを注いだ。
そのコーヒーの湯気が、背後に立った首の曲がった女の霊のせいで、スッと一瞬で冷たく凍りつく。
「あれ、クーラーつけてないのにコーヒーが秒で冷めちゃった。もしかして、私の部屋ってものすごいエコ物件……?」
的外れすぎる推測をする楓を囲みながら、霊たちはクスクスと意地悪な笑い声を漏らしていた。
『こいつ、相変わらず自分のせいで周りが怪異まみれになってるって気づいてねえのな』
『まあ、気づかれたら面倒だし、このまま都合のいい運搬人でいてもらおうぜ』
『次の廃ドライブインも、こいつが先頭切って歩いてくれるおかげで楽勝で移動できるぞ!』
驚かせたい幽霊と、怪奇現象を体験したいのに全く遭遇できない人間。
その究極のすれ違いは、知らぬ間に街全体を巻き込む巨大な怪異のネットワークへと成長していた。
「よし、今週末は隣町の廃ドライブインに突撃だ! 今度こそ、本物の霊障に遭遇できますように!」
気合十分に拳を握りしめる楓。
その背後では、数十体の幽霊たちが「お供」として行進の準備を整え、ニヤニヤと彼女の背中を見つめているのだった――。
シーズン2・第15話、最後までお読みいただきありがとうございました!
取材ノートを「幽霊たちの路線図」にされているとも知らず、次の心霊スポットに張り切る楓ちゃんと、それをすっかり便利な乗り物扱いする霊たちの構図、楽しんでいただけましたでしょうか(笑)。
本人は全く悪気がないのに、彼女の行動原理そのものが怪異の交通網になっていく展開、ここからさらに盛り上がっていきます!




