シーズン2・第14話:実家の帰省と、家族を襲う大名行列
シーズン2・第14話をお読みいただき、そしていつも温かい応援を本当にありがとうございます!
今回は、マイペースな楓ちゃんが久しぶりに「実家」へ帰省するお話です。本人はのんびり実家を満喫する気満々ですが、彼女の背後に群がる霊たちは、久しぶりの一軒家を大はしゃぎで散策し始めて……?
無自覚な「派遣行脚」が実家の家族を直撃する第14話、ぜひお楽しみください!
それでは、スタートです!
「ただいまーっ! いやあ、やっぱり実家は落ち着くなあ!」
水野楓は、大きなボストンバッグを玄関の三和土にドンと下ろし、元気よくリビングの扉を開けた。
今日は久しぶりの実家への帰省日である。地方都市にある一軒家は、庭の緑が美しく、いつもなら温かい家族の笑い声に満ちているはずだった。
——だが、そのリビングの空気は、いつもとは全く違っていた。
「ひっ……! な、なんだい急に……このリビング、冷蔵庫の中より寒くないかい……?」
ソファに座っていた母親が、両手で肩を抱えながらブルブルと震えている。
その傍らで、父親も新聞を読んだまま「うーん、なんだか最近、我が家は妙に湿気が多くていかん……床のあちこちに泥の足跡がついているしな……」と、眉間にしわを寄せていた。
もちろん、その原因が「娘が背中に背負ってきた無数の幽霊たち」であることなど、家族が知る由もない。
玄関をくぐった瞬間から、楓の背後に群がる「大名行列(幽霊たち)」は、一斉に広々とした一軒家になだれ込んでいた。
『おおー、ここはまた広くて綺麗な家じゃないか!』
『おいおい、あそこのリビングのテレビ、画面がデカいぞ!』
『ねえねえ、お母さんらしき人がめちゃくちゃ震えてるよ。何か面白いことやってくれないかな?』
廃病院、スーパー、編集部を経て、すっかり楓の「お供」として移動範囲を広げた霊たちは、一軒家のあちこちに散らばり、思い思いに怪異を引き起こし始めていた。
そして、彼らを運んできた張本人である楓は、家族が凍え上がっていることなど全く気づかず、ニコニコしながらキッチンへと歩いていく。
「お母さん、ただいま! わあ、夕ご飯の準備中? なんか今日、家の中がひんやりしてて気持ちいいねえ。夏場には最高のクーラーいらずじゃん!」
「クーラーいらずじゃないよ! お前、外から変な風を一緒に連れて入ってきただろ……っ! さっきからリビングの窓ガラスが勝手にガタガタ鳴るし、廊下の電気はチカチカするし、もう霊障のオンパレードじゃないか……!」
母親は青い顔で半泣きになりながら、ぶるぶると震えて訴えた。
その母親の背後では、廃病院からついてきた外科医の霊が、ふうっと冷たい息を吹きかけながら面白そうに覗き込んでいる。
「ええ? お母さんも吉川くんみたいなこと言うなあ。うちの家系って、もしかして最近みんな想像力が豊かになる時期なのかな?」
キョトンと首をかしげながら、楓は冷蔵庫から麦茶を取り出してゴクゴクと飲み干した。
「想像力とかそういう問題じゃないっ! ほら、見てみなさい! 食卓の椅子の上に、泥だらけの足跡がついてるんだよ……!」
父親が立ち上がり、ダイニングチェアを指さした。そこには、確かに誰が乗ったのか、べっとりと湿った泥の足跡がいくつも残されている。
「あ、ほんとだ。誰か靴のまま上がっちゃったのかな? あ、もしかして、ご近所さんが泥棒に入られたとか……?」
「泥棒がわざわざダイニングチェアに泥の足跡だけ残して何も盗らずに帰るか! もう、お前が変な心霊スポットばかり巡るから、変なものまで一緒に連れて帰ってきたんじゃないだろうな……っ!」
両親の必死の抗議を聞きながら、楓は「うーん、まさかあ」と頭をポリポリとかく。
その背後では、霊たちが大喜びでキャッキャと(霊波で)はしゃいでいた。
『この両親、めちゃくちゃいいリアクションするじゃねえか!』
『なあ、あそこのお父さん、頭の上に小さな埃がついてるぜ? ちょっと取ってやろうか』
『やめとけやめとけ、もっと派手に驚かそうぜ!』
霊たちのイタズラによって、リビングの天井から吊るされていた照明が、まるで振り子のようにユラユラと揺れ始めた。
「うわっ、照明が勝手に揺れたぞーーっ!?」
「お父さん、やっぱりこの家、お祓いした方がいいんじゃ……っ!」
大パニックに陥る両親の姿を前にして、楓だけは「あらあら、地震でもあったのかな? でも震度1くらいだったし平気平気!」と、相変わらずのマイペースぶりを発揮している。
自らは何も感じないまま、実家をも一大ホラーアトラクションに変えていく「幽霊派遣」。
楓が帰省するだけで、家族の平和な日常は音を立てて崩れていくのだった――。
シーズン2・第14話、最後までお読みいただきありがとうございました!
久しぶりの実家でリラックスしようとする楓ちゃんと、彼女が持ち込んだ大量の霊たちによって恐怖のどん底に突き落とされるご両親のギャップ、楽しんでいただけましたでしょうか(笑)。
本人は全く悪気がないのに、実家がそのままポルターガイストの実験場になっていくシュールな構図、これからも全力で加速させていきます!




