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幽霊界隈で「派遣」と呼ばれています。~怖くない主人公の迷惑すぎる日常~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2・第12話:スーパーの特売日と、背後の大名行列

シーズン2・第12話をお読みいただき、そしていつも温かい応援を本当にありがとうございます!


今回は、マイペースな楓ちゃんがご機嫌で「スーパーの特売日」にお出かけするお話です。本人は半額シールに大喜びですが、彼女の背後に群がる霊たちは、明るい店内や他の買い物客の反応をすっかり面白がっているようで……?


無自覚な「派遣行脚」が日常の街を直撃する第12話、ぜひお楽しみください!


それでは、スタートです!

「よし、今日の晩御飯は特売の豚肉で野菜炒めにしよう!」


水野楓(みずの かえで)は、お気に入りのエコバッグを片手に、近所のスーパーマーケットの自動ドアをくぐり抜けた。

夕方の店内は、主婦や会社帰りのサラリーマンたちで適度に賑わっている。お惣菜コーナーから漂う揚げ物の香ばしい匂いが、食欲をそそる平和な空間だ。


——だが、その平和な空気が、楓の歩みに合わせてみるみるうちに歪んでいく。


自動ドアをくぐった瞬間、店内の空気が一気に数度下がり、野菜売り場のレタスやキャベツの表面に、うっすらと白い霜が降りた。

もちろん、店員も客も「あれ、今日やけに冷房が効いてるな?」と首を傾げる程度で、それが異世界の存在によるものだとは誰も気づかない。


だが、楓の背後にぴっとりと張り付いている「大名行列(幽霊たち)」にとっては、この明るいスーパーは格好の遊び場だった。


『おいおい、見てみろよここ! 菓子パンが山積みになってやがるぜ!』

『私、生きてる頃はこんな明るいところで買い物なんてしたことなかったなぁ……』

『ねえねえ、あそこのお惣菜コーナーのコロッケ、ちょっと触ってみたくないか?』


廃病院や心霊スポットからついてきた霊たちは、すっかり物珍しそうにあちこちを見回している。

そして、彼らを運んできた「乗り物」である楓は、周囲の人間がわずかに寒そうに身震いしていることなど露知らず、鼻歌混じりに肉売り場へと歩を進めていた。


「ええっと、豚のバラ肉は……っと、あ、これ美味しそう。しかも半額シールが貼ってある! ラッキー!」


楓が手を伸ばして豚肉のパックを取ったその瞬間。

彼女の背後に立っていた首の曲がった女の霊が、ふうっと冷たい息を吹きかけた。


――ヒュウッ。


「うわっ、冷たっ!?」

流石の鈍感な楓も、首筋に直撃した冷蔵庫並みの冷気には小さく肩を跳ねさせた。

「なんだろ、冷凍庫の風がこっちまで漏れてるのかな。風邪ひかないように急ごう」


そう呟いて、楓はカートに食材をポンポンと放り込んでいく。

その様子を眺めながら、霊たちはクスクスと笑い声を漏らしていた。


『あいつ、相変わらず俺たちの存在に気づきもしねぇのな』

『本当におもしろい人間だよ。怖がらせがいはないけど、こいつについていくだけで色んな場所に連れていってもらえるから退屈しないね』

『お、おい、あそこのレジの列、並んでる客の顔がすっげえ怯えてるぞ?』


霊たちの視線の先。

ちょうど楓が並ぼうとしているレジの列の少し後ろに、会社帰りのサラリーマンが立っていた。

そのサラリーマンは、なぜか青白い顔をしながら全身をガタガタと震え、冷や汗をダラダラと流している。それもそのはず、楓が近づいてきたことで、彼女の背後に群がる数十体の霊たちが一斉にそのサラリーマンを取り囲むように移動したからだ。


「はあ……なんか、今日めちゃくちゃ背中が重いし、死ぬほど寒いんですけど……誰か後ろに立ってる……?」

サラリーマンは青い顔でぶるぶると震え、恐怖のあまりその場でうずくまりそうになっていた。


順番が回ってきた楓は、レジ打ちの店員にカゴを差し出しながら、後ろで震えるサラリーマンに気づいてきょとんと首を傾げた。

「あのう、お兄さん? 大丈夫ですか? 顔色すごく悪いですよ。もしかして、流行りの風邪ですか?」


「ふ、ふ、ふざけんな……! お前の後ろに……お前の背中に、何匹いると思ってるんだよ……っ!!」

恐怖の限界を超えたサラリーマンは、引きつった声を上げてその場からダッシュで逃げ出してしまった。


「え……? 私、何か変なこと言ったかな……?」

首を傾げたままで会計を済ませ、戦利品の入ったエコバッグを持ってスーパーを後にする楓。


彼女が去ったあとのレジ周辺には、なぜか冷たい空気と、霊たちの満足そうな笑い声だけが残されていた。


自らは何も感じないまま、街中を恐怖のパレードへと変えていく「幽霊派遣」。

楓の日常の買い出しは、今日も知らぬ間に大騒動を巻き起こしながら、平然と続いていくのだった――。

シーズン2・第12話、最後までお読みいただきありがとうございました!


豚肉の半額シールに喜ぶ楓ちゃんと、彼女の背後から一般の買い物客を恐怖のどん底に叩き込む霊たちのギャップ、楽しんでいただけましたでしょうか(笑)。

本人は全く悪気がないのに、歩くだけで周囲がプチ心霊スポットになっていくシュールな構図、これからもどんどんエスカレートさせていきます!

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