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幽霊界隈で「派遣」と呼ばれています。~怖くない主人公の迷惑すぎる日常~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2・第7話:旧・廃病院への到着と、霊たちの観光気分

シーズン2・第7話をお読みいただき、さらにいつも温かい応援を本当にありがとうございます!


ついに因縁の「旧・青葉台病院」へと到着した楓ちゃん。本人は「極上の恐怖体験」に胸を躍らせていますが、その背後では幽霊たちがまるで観光バスのツアー客のようにはしゃいでいるという、なんともシュールな修学旅行状態が展開されています(笑)。


霊感ゼロの少女と、彼女を利用して我が物顔で進む霊たちの珍道中。この廃病院で待ち受ける展開とは……!?


それでは、第7話スタートです!

土曜日の午後二時。

山あいのくねくねとした細い舗装道路を、一足のトレッキングシューズが軽快に進んでいく。


「ふう、この坂道はなかなか登りごたえがあるなあ」


額の汗をハンカチで拭いながら、水野楓(みずの かえで)はふぅっと息をついた。

彼女が背負っている大きめのリュックサックには、前夜に詰め込んだ懐中電灯やノートがしっかりと収まっている。目指す目的地は、この山道を登りきった先にある『旧・青葉台病院』だった。


十数年前に経営難と不可解な噂が重なり、突如として閉院したというその病院は、地元でも指折りの危険な心霊スポットとして知られている。ネットの掲示板によれば、「夜に限らず、昼間でも白衣を着た何者かが窓から覗いている」「中に入ると二度と戻れなくなる患者がいる」など、香ばしい噂がてんこ盛りだった。


「これだけ条件が揃っていれば、さすがの私でも、今回は何か一つくらい……小さなラップ音くらいは聞こえるはず!」


期待に胸を膨らませる楓。

だが、彼女が気合を入れて歩いているその背後には、まるで修学旅行の列のように、およそ人間には見えない無数の影たちがぞろぞろと続いていた。


『いやあ、いい天気だねぇ』

『人間界の空気は久しぶりだ。あの女の後をついてくると、結界も何もなくスイスイ来れるから最高だよ』

『ねえねえ、今日の病院はどんな仕掛けがあるの? 私、新しい包帯の男の霊に挨拶しに行かなきゃ』


霊たちはひそひそと(もちろん人間には聞こえない声で)楽しそうに会話を交わしながら、楓の足取りに合わせてまるで観光客のようにぞろぞろと移動している。

一人では陽の光を嫌って街の端から動けない者も、霊界のネットワークで噂を聞きつけ、「水野楓という無料の移動バス」の噂を聞きつけて次々と合流していたのだ。結果として、楓の背後を引き連れる霊の列は、もはや小さなデモ行進のような規模に膨れ上がっていた。


「お、見えてきた……!」


鬱蒼とした木々の隙間から、コンクリートが剥き出しになり、窓ガラスが何枚も割れた不気味な洋風の建物が姿を現した。

『旧・青葉台病院』。

周囲にはピーンと張り詰めたような静寂が漂い、夏場であるにもかかわらず、その建物周辺だけが妙に肌寒い空気に包まれている。


一般人であれば、一歩足を踏み入れただけで心臓が凍りつくような圧倒的なプレッシャー。

だが、楓の反応は違った。


「わあ……! さすが廃病院、この朽ち果てた感じ、たまらないわね!」


目を輝かせ、パシャパシャとスマートフォンのカメラで建物の写真を撮りまくる楓。

もちろん、その写真の端々には、人間の目には絶対に映らないはずの「無数の歪んだ顔や影」がギッシリと写り込んでいるのだが、当の本人は「アングルもバッチリ!」と満足げにうなずくだけである。


『あの子、相変わらず肝が据わってるというか、なんというか……』

『怖いもの知らずって言うか、ただの鈍感だよねぇ』

『まあいいさ。さあ、中に入ろうぜ! あの建物の中にいる連中を驚かせてやるか、それともこの女を囮にして人間界をかき回すか、どっちが面白いかねぇ!』


霊たちはキャッキャと子供のようににはしゃぎながら、楓の背中に張り付いたまま、錆びついた病院の鉄柵を軽々とすり抜けて敷地内へと侵入していく。


楓が門をくぐった瞬間、病院全体の空気がわずかに揺らいだ。

建物の中に潜んでいた古い地縛霊たちが、「おや、外部から誰か来たぞ」と気配を察知して動き始める。


だが、彼らが待ち受けていたのは「一人で恐怖におののく獲物」ではなく、「背後に数十体もの幽霊を連れ込んだ、前代未聞の移動式モンスターハウス」だった。


すれ違う思惑の果てに、この廃病院で一体何が起こるのか。

楓は期待に胸を膨らませながら、ギィと音を立てるエントランスの自動ドア(もちろん電源はとっくに切れている)を、自分の手でこじ開けた――。

シーズン2・第7話、最後までお読みいただきありがとうございました!


「歩くターミナル駅」あるいは「フリーパス付きリムジンバス」と化した楓ちゃんに引き連れられ、ぞろぞろと廃病院へ侵入していく霊たちの楽しそうな様子、いかがでしたでしょうか。

恐怖のスポットのはずが、すっかり霊たちの遠足の目的地みたいになっていますね……!


次回はいよいよ、廃病院の内部へ潜入です。建物の中に元からいた地縛霊たちと、楓が外から連れてきた「大量の観光客(幽霊)」が鉢合わせした時、一体どんなカオスが巻き起こるのか――!?

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