第八話「アイススペース」
翌日。
朝が来て、俺は集合場所へと向かおうと、外に出て歩いていた。
今日の決闘で結果がどうあれ、俺がこの街にいれるのも、おそらく最後だ。
ゆっくり歩いて、景色を楽しもう。
周りを見渡したり空を見上げたり、
そんなことをしていると、ある子供がいた。
「うわーーん!!!」
男の子だ、5歳くらいだろうか。
泣いている。転んで怪我をしたっぽい。
俺はその子のもとへ駆け寄った。
「大丈夫? 怪我しちゃった?」
そう聞くと子供は泣きながら頷いた。
「う、うん。走ったらころんだの」
グスングスンと言いながら喋っている。
可哀想に、ここら辺は石がよく落ちているからな。
危ないのだ。
「う、うぅ」
「ほれ、お兄さんに見してみろ! 治してやる!」
「ふぇ? なおす?」
俺はその子の怪我している部分に手をかざし、
治癒魔法をかけてあげた。
「すごい! 痛くなくなった! 怪我治った!」
「だろ? これは魔法だぜ? すげーだろ!」
「うん! まほう、すごい! どうやるの?」
ほう。そう来たか。
教えたいけど、治癒魔法は難しいんだよな。
よし、あれを教えようか。
「ふっふっふ。教えてあげよう! でも、治癒魔法は難しいから、簡単なのね?」
「うん!」
納得してくれたので、その子にとある魔法を見せた。
その魔法とは『ウォーターボール』である。
流石にファイアーボールは危険なのでやめといた。
「水だ! おしえておしえて!」
「いいぞー? でも、変なことには使うなよ? 魔法は便利だけど、恐ろしいこともできちゃうからね?」
「うん、わかった!」
よーし。教えてやろう!
シオン直伝ウォーターボールを!!
〜数分後〜
「みて! できた、できたよ! みずたま!」
「すげーな! あと、ウォーターボールな!」
この子はすごい。とても才能がある。
俺は普段、無詠唱なので、
ついでに無詠唱での魔法を教えたが、
なんと、できてしまったのだ!
無詠唱はかなり難しいとされているのに。
「ぼく、つよいかな!!」
「おー? つよいかー? 俺に撃ってみろ!」
「おりゃ!!!」
ビシャっという音と共に俺の顔面に、
可愛らしいウォーターボールが放たれた。
威力は、水鉄砲より、弱いくらい。
「う、うぉぉ! つよすぎる!」
「きゃはは!」
子供特有の無邪気で満面な笑み。
かわいい。
俺、子供好きなんだよなあ。
「ぼく! つよい!」
「おうおう。強いな! でもな、それを悪用するなよ? 怖い魔物に食べられるぞ?」
「ひっ!!!」
おっと、やばい。ウルウルし出した
怖がらせすぎた、でも本当に悪用は良くないからね。
「その魔法はな、将来冒険者とか、魔法師とかになって魔物を倒すために使おうな!」
「うん!! まほうしになる。魔物をたおすぞー!」
俺たちは、ハイタッチをした。
「あ、そろそろ行くね」
「あ、うん! まほうありがとう! もっとできるようになるね!」
「おう!」
そうだ、最後に名前を聞いておこう。
この子は才能があるし将来有名になりそうだ。
「きみ、名前はなんていうの?」
「ぼく? ぼくはね、『アリス・バーベナ』っていうよ!」
……あ、ありす?待ってくれ。
この子、男じゃなくて女の子!?
いや、髪は短くて、金髪で、顔が整っている。
確かにこれだけで男と決めつけていたのはおかしいか。
「あ、アリスちゃんか! 覚えておくよ! またいつか会おうね。魔法がんばれ!」
「ま、まって、おにいさんは? なまえ」
名乗るほどのものではないさ!
と、カッコつけたい気持ちもあるが。
「シオン・グラジオラスだよ!」
「シオンにーに! またね!」
俺は手を振り、
またいつかの再会を願って、その場を去った。
それにしても、『にーに』か……。
脳裏に世界一可愛い弟の姿が掠った。
---
昨日リリー達に、ある森に集合と伝えた。
その森とは、俺が修行に使用していた所だ。
そろそろ俺も到着する頃。
かなり見えてきたが、なにかが違う。
木がたくさん生えていたのに、整地されている。
恐らく、リリーの魔法で戦いやすいように整えてくれたのだろう。
ということは2人はすでに到着している。
そう思っていると、俺もいつの間にか森へ着き、
2人の所へ近づいて行く。
それに気づいたリリー達が声を出した。
「おーい! こっちこっちー!」
「遅いぞ! シオン! 準備体操終わったぞ!」
2人は準備体操して待っていたらしい。
かなりガチっぽい。
俺も手加減はできないな。
「シオン、みてて!」
ん?なんだろう。
リリーが何かをするらしい。
彼女は、俺が見てるのに気付き、
目を閉じた。その時間、約数十秒。
そしてパッと目を開いた。
「ウォール!」
「ズゴゴゴゴっっ!」
なんと、地面から、壁が構築されて行く。
見た目は、そうだな。
闘技場みたいになっていってるな。
「すごいなリリー。これはかなりの技術だ」
「ふふん! クレスタ最強は伊達じゃないでしょ」
実際、俺にはこれができない。
このウォールという魔法は、誰でも使えるほど簡単だが、建物を作る想像力がいる。
想像力はあるが、建物関連はマジで無理なのだ。
だから、俺には真似できない。
そう、関心していると、ギルゾックがこちらへきた。
「シオン、そろそろやるぞ」
「あぁ」
そういい、ギルゾックはまず、
決闘の確認をしだした。
決闘の確認とは、ルールなどもある。
・俺vsリリー&ギルゾックの戦い。
・リリーやギルゾックは魔法など、色々な手段で、俺を倒そうとしてくる。
・もし俺に傷一つでもついたら、旅に2人がついてくる
・俺の勝利条件は、2人を続行不能にする事。
そんな感じである。
ギルゾックの説明が終えると、
早速決闘が、開始されることとなった。
「じゃあ、始めよっかシオン!」
「そうだぞ! 俺たちは本気で行く!」
「あぁ」
目の前に2人が立っている。
眼差しがすごい。本気の眼だ。
リリーは杖を、ギルゾックは大きな斧を構えている。
対して俺は、何も武器は持っていない。
舐めているわけではない。
けれどなぜだろう。魔剣を出したくない。
「開始!!!」
ギルゾックが開始の合図を出した。
俺は様子見で、とりあえず後ろに下がる。
そして早速来たのが、斧を持っているギルゾックだ。
迫力がすごい。
元冒険者なだけあって、かなり強そう。
あのでっかい斧を持てるのは、
かなりの筋肉が必要。
ギルゾックはパワー系の戦士だったのだろうか。
そんなことを考えていたら、
ギルゾックが目の前まできていた。
「せやぁぁぁぁぁ!!!!!」
彼は、身体強化を自分につけ、斧を全力で、
俺目掛けて振るってきた。
「ぴとっ」
「な!!!?」
斧の先端を摘んで動きを止めた。
その光景に、ギルゾックは驚いている。
その時、ギルゾックの背後から寒気がした。
霊的な寒気ではなく、本当に寒い。
冷たいのだ。
嫌な予感がし、ギルゾックをすぐにぶっ飛ばした。
多分怪我はないだろう。あいつは硬い。
ギルゾックが退いて、背後で何が起こっているのか判明した。
リリーが魔法を貯めている。
しかも、あいつの1番得意な魔法。
リリーが最強と呼ばれる所以となった魔法。
クレスタでは、見られるだけで歓喜される魔法。
仮に、俺がリリーと同じ魔法を使っても、
あそこまでは威力も出せない。
そんな魔法。
それは、その名は……。
「アイススペース!!!!」
その言葉と共に、リリーが俺に魔法を放った。
「やっば!」
すぐに上に飛んだ。
避けなければ、凍らされてしまう。
俺は空中に飛んでる中、下を向き、
状況を確認した。
そこは氷の世界になっていた。
闘技場の建物も、最初から氷で作られたかのように。
ギルゾックは対象外とされていた為セーフ。
そんな光景がすぐに見えたのだ。
俺はゾクっと震えた。
これはやばい、さすがに直撃したら
俺でも数分は固められてしまう。
……でも、それだけのこと。
リリーの氷を注意、ギルゾックの斧を注意。
それをしていればなんの苦労もなく勝てる。
2人は空中にいる俺を見上げている。
このまま降りたいところだけど、
地面が氷なので触れたら凍ってしまう。
俺は両足からファイアーボールを出した。
オリジナルの青ファイアーボールだ。
これで地面の氷問題は解決。
地面に着陸した俺を、
真っ先に攻撃したのが、リリーの氷の弓だった。
それを防ごうと、防御結界を張ると、
後ろにギルゾックがいた。




