第九話「17歳男のワガママ」
ギルゾックは先程よりも、一段上の身体強化を使用し、俺にもう一度斧を振るった。
それは小規模防御結界で防ぎ、
拘束魔法を使用し、ギルゾックを拘束した。
これでギルゾックは戦闘不能ということになる。
自慢だが、俺の拘束は魔王でも逃げれないことがある。
そしてリリーとの1v1になった。
「シオン! わたしはまだ諦めてはないよ!」
「また氷魔法か?」
そう聞くと、リリーは首を横に振った。
「ううん、ちがう!」
そう言いつつも、またもやアイススペースを使用してきた。
今回は上に飛んで避けることはせず、
青いファイアーボールを打ちながら、
氷を溶かしつつ、リリーの方へと進んだ。
なにが、違うのだろうと思った。
また氷魔法じゃないか?
まさか奥の手があるのだろうか。
俺はリリーの目の前まできた。
拘束魔法を、かけようとした。
その瞬間――
「シュバ!」
俺の一歩進んだ先の、足元に、
なにかが置かれていた。
あれ!?これって……。
「な、なんで!? トラップ型!?」
これはやばい。
トラップ型なんて、聞いていない。
リリーにはそれが可能だったのか。
俺は身動きが数秒取れず、
その間に、リリーから強い一発をもらってしまった。
「いって!」
数十メートルほど吹っ飛ばされてしまった。
傷一つなんてどころじゃない。
こんな傷、久しぶりに負った。
恐らく数箇所折れている。
脚、腕、肋骨。
いたすぎる!!
悶えていると、2人の歓喜の声が聞こえてきた。
「やったーーーー!!!!!」
「よっしゃ!!!! リリーよくやったぞ!!」
俺は遠くに倒れたまま動けずにいる。
まじか。
負けてしまった。予想外だった。
でも……なぜか嬉しかった。
そうか、俺は最初から勝ちたくなったんだ。
なぜか、魔剣は使いたくなかったし、
本気で行ってなかったと、
その理由を今理解した。
「ははっ。俺ってワガママだったんだな」
そう1人で呟いた。
俺はワガママで、甘えん坊で、人に頼りたくなる野郎だったらしい。
本当は1人で行くのが寂しくて、
2人はついて行くと言ってくれて、
それでも言い訳をして、1人で行くと言った。
けど結局は甘えたくて仕方がないガキだった。
そして気づかないうちに手加減していたんだ。
……けど、トラップ型には驚いたな。
呆気にとられていると、
倒れている俺の方へ2人がやってきた。
「シオン! 勝ったよ! ついていっくね!」
「何もできなかったが、俺もついて行くぜ!」
俺は身動きが取れないけど、口を動かした。
「おう、2人ともよろしくおねがいします」
リリー達はにっこり笑ってハイタッチをしていた。
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俺は自分で治癒魔法をかけ完治させた。
その後、あの戦いで知りたいことがあったので、尋ねた。
「リリー、あのトラップ型どうやったんだ?」
トラップ型の魔法は本当に難しい。
相手の動きを全て見切って、
次の行動を読み、
一箇所にトラップを仕掛ける。
まぁ、相手がどこに動くかの運任せもあるが。
あの位置は完璧だった。
運とかそういうのではない。技術で貼られた罠。
「実はね、わたしね! 未来視っての使えるんだ!」
「……は、はい??」
ん??み、未来視だって?
そんなの使えるの魔王くらいしか知らないんだけど。
「ま、まじ?」
「まじ!」
「俺も決闘前に聞いて、驚いたぜ! さすがはクレスタ最強冒険者だ!」
未来視とは名の通り。
未来を読める。が、デメリットもある。
使用はかなりの魔力を使うので、
1日で2回くらいの使用が限界だろう。
そして、人間のリリーは、
読めて2秒先が限界といったところ。
魔王も未来視を持っているが、
やつは魔族なので、1分先とか読んできたりする。
使用制限もない。あいつはチートだ。チート。
まあ、リリーがどうやって、トラップ型を使用できたのかは理解した。
「そんなすごいの持ってたのに今まで秘密だったのかー?」
「ぎ、ギク!」
いや、ギクって言っちゃってる。
「なんかね! 最強の魔物とかきて、その時に披露したりして? かっこいいとか言われたりしたかったんだよ!!」
な、なるほど。
たしかにそれはかっこいいけど。
なんていうか面白い理由だな。
「まー。それはいいとして、負けた負けた」
「でもよ、シオン。あれ本気じゃなかったろ」
あれ、?ギルゾックには気づかれてた。
「そうだよね! なんか手加減してた!」
うん、リリーにもバレてた。
「なんかさ、俺、
お前達に、結局は頼りたかったのかもしれない。
手加減してるつもりはその時はなかった。
けど、さっき気づいた」
ギルゾック達を、見てみるとニッコニコだ。
満面の笑みだ。こっちを目を細めて見ている。
「でも、ワガママすぎるけど、一ついいか?」
そう、一つ。
ワガママすぎて恥ずかしいけど、
頼み、いやお願いがあるんだ。
「なに?」
「なんだ?」
「旅にはついてきてほしいし、奴らを見つけるのに協力もしてほしい。
けど、殺すのは俺がさせてほしい。
お前らには人を殺させたくない」
2人は、ため息をついた。
「まあ。それでいいよ! でもねシオン!」
ギルゾックとリリーが
同時にこちらへと向かって、
俺の両肩に手を置いた
「もし、さっきみたいにシオンが負けそうになったら、私たちは手を出すよ!」
「あぁ、そうだ。
殺すとか以前に、お前が危険になったら、俺らも奴らを殺す!」
それを聞いた瞬間。
俺は涙が溢れていた。
ポタポタと。
ハンカチを貰ったとしても、
一枚じゃ足りないほどの量だ。
そして俺は一言、言った。
「俺は2人が人を殺さなくて済むように、戦うよ!」
「はっはっは!その時は手加減すんなよー?」
「そうだね!本気で行くんだよ!!」
「あとさ、もう1個ワガママいいかな」
やばい、俺は今日からワガママな子供にでも生まれ変わったのかもしれない。
「なになに?」
「なんだ?」
「本当は今日出発だったけど、
今日は、ギルゾックの酒場で、
3人で、たくさん飯食いたい」
それを聞いた彼女らは、またもや笑い、
「そうしよう!」とワガママを聞いてくれた。




