第七話「ともだち」
やばい、5分遅刻している。
魔王とくっちゃべっていたせいで。
あの魔王め!
……いや、俺が悪いね。
そう思いつつ、走っていると、
ギルゾックの酒場が見えてきた。
俺は魔法を使って、すごく早く移動した。
見えてきたらあとは数秒で着く。
それくらい俺の魔法での移動は早いのだ。
でも遅刻はするけどね。
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ついた。
俺は恐る恐る、ガチャりと、酒場の扉を開ける。
「パーン!」
……!なんと、開けた瞬間に、
待ち構えていた2人がクラッカーを俺に目掛けて鳴らした。
「シオン、17歳の誕生日おっめでとう!」
「シオンおめでとうな!」
「……お前ら」
怒られるとかビビってたのがバカみたいだ。
それにしてもこんなに待ってくれていたとは、
申し訳ない。
と、考えていたら、
ギルゾックがこっちへ来て、俺の背中を思いっきり叩いた。
リリーは、ちょこんと俺の近くにいた。
「ささ、主役はテーブルにつけ!」
「そうだよ! ケーキとかあるから! でも、それは最後のお楽しみね!」
「ああ!」
盛大に祝われ、ステーキやら、レアな魔物のお肉やら。
俺の好きな肉系がたくさん並べられていた。
バックバクとすぐに食べ、ケーキがやってきた。
「じゃ、改めて、シオン! まぁ、なんだ。色々あったけど17歳おめでとうな!」
「そうだよ! まだ友達になって半年くらいしか経ってないけど、『これから』もっと仲良くなろうね!
いつかは、こ、こいび……」
「ギルゾック、リリー。ありがとう! あと、こいびってなに?」
「な、なんでもないよ!! ケーキを食べるよ!」
なんだか、よくわからないけど、ケーキを食べようと リリーが顔真っ赤にしているのはわかった。
そんなに楽しみなのだろうか。ケーキが。
でも、これから、か。
……言わないとな。
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俺たちはケーキを食べ終えた。
そして、プレゼントを渡してくれるらしい。
「プレゼントとか、くれるの!?」
「あぁ!」
「もちろん!」
なんだろう、プレゼントか。
まだ、2人は俺のことが記憶喪失のままだと思っている。
なら、強い武器とかかな。
それともお金?いや、金はないか。
楽しみに待っていると、
まずはギルゾックから渡してくれるらしい。
「よし! シオン。お前にはこれをやろう!」
ギルゾックが渡してきたのは、チケットのようだった。
「これなに? ちけっと?」
「これはな、なんとな!」
「もー。勿体ぶるなよ!」
俺がそういうと、ギルゾックはへへっと笑い、教えてくれた。
「これは、この酒場の飲食すべてが1年間無料になる最強のチケットだ!」
「おお!」
なんと!これはかなり最強だな。
自分で言うのもなんだが、今の俺よりも最強だ。
金欠ではないけど、この酒場は全てが美味いので。
1番嬉しい贈り物かもしれない。
「ありがとうギルゾック! 最高だな!」
「はっはっは!」
と笑い合ってたら、次はリリーの番らしい。
リリーが俺の方にテクテクと近づいてくる。
なにやら、モジモジもしている。
「シオン!」
「は、はい!」
びっくりするほど大きな声で名前を呼ばれ、すぐさま返事をした。
「あ、あのね! シオンってね。昔、アクセサリー作って売ったりしてたって……」
「あ、あー。そうだな、してたな」
まぁ、それはギルゾックに嘘をついていた。
俺がどう稼いでいるのか説明しづらかったからだ。
「それでね。シオンはアクセサリーが好きだったんじゃないかって思って!」
そういいリリーは後ろから何かを取り出して、俺に渡した。
「これ! シオンにプレゼント!」
「……!これは……」
赤い宝石。それが埋め込まれている首飾りだ。
前世で言うとネックレスのようなものか。
とても綺麗だ。リリーの瞳の色によく似ている。
「これ、くれるの? とっても綺麗だね!」
「う、うん! うれしい?」
不安そうな顔をして、俺に聞いた。
「もちろん。毎日つけるね! アクセサリー持ってなかったし、とっても嬉しい!」
それを聞いた瞬間、リリーの顔は、
パァーッと明るくなり、ニコニコになった。
「よ、よかった! ギルゾックさんが、あまりにも凄いものを、あげるからプレッシャーすごかったよー!」
「はっはっはっ! リリーも凄いものをあげたな!」
「へ?……凄いもの?」
おい!ギルゾック!まさかあれを言うのか!?
このアクセサリーの意味!
恐らく、リリーは知らないだろうに!
「自分と同じ瞳の色のアクセサリーを異性にあげるのは、プロポーズと同じ意味だぞ」
おい、言ってしまった。
「……へっ!?」
リリーは顔を真っ赤にし、目を点にした。
「リ、リリー? 分かってるから! そういう意味ではないよね? 友達として嬉しく受け取るよ!」
「はっ! う、うん。そうして!」
ったく、ギルゾック。変なこというなよな。
そうして、俺のプレゼント回も終わりを迎えた。
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俺の生誕祭も、そろそろ終わりを迎える。
外も真っ暗、帰って寝ようか。
そんなことを2人は言っている。
けど、俺は「待って」と引き留めた。
なぜなら、今日話そうと思ったことがあったから。
「なんだ?」
「どうしたの? シオン」
俺は、とても緊張している。
今日言うべきか?
さっきまで楽しかった雰囲気なのに。
壊してしまうんじゃないだろうか。
友達じゃなくなってしまうんじゃないか。
脳内には、そればっかりが流れた。
肩が震えている。
静まれ。と抑えようとしても収まらない。
……いや、言おう。
俺はゴクリと唾を飲み込み、口を開いた。
「あのな、2人とも」
2人がこっちを見ている。
「実は、記憶戻ったんだ」
「戻った!? いつからだ??」
「え!? そうなの!? 全部思い出した!?」
食い気味に聞いてくるな。
いや、当たり前か。
「全部思い出したね。思い出したのは、つい最近かな。 まぁいろいろあって」
「なんだ! よかったな!」
「うん。そうだよ! いいことじゃん!」
いや、違うんだ。
これが言いたいわけじゃない。
全部だ。明日から旅に出ること。
今までギルゾックに嘘ついてたこと。
――復讐すること。
「ち、ちがう。1番言いたいのはそれじゃない」
2人は、どういうこと?と言わんばかりに、首を傾げた。
「まず、ギルゾック」
「お、おう。なんだ?」
「両親は、俺が生まれた時に亡くなったと当時教えたよな? あれは嘘だ」
「嘘? 生きてるのか?」
「いや、生きてない。殺された。5歳の時に、目の前で」
その物騒な言葉を聞いた瞬間、リリーとギルゾックはなんだか真剣な表情になった。
2人は何を考えているのだろうか。
今回ばかりは表情だけでは読み取れない。
「そうだったのか」
「それだけじゃない、俺は強い。錬金術が使えるだけじゃなくて、戦える」
「そうなのか?
魔法は得意ということだったが……」
「そうなの!?」
リリーは俺が魔法を使えると聞いて、話に入ってきた。もういいか、このまま3人で話そう。
「あぁ。多分クレスタでは最強だな。リリーは2位だな」
「な、なんだとー? それは、聞き捨てならない!」
「ははっ」
なんだか、気が楽になった。
ここで少し笑いをとってみてよかった。
「クレスタだけじゃない。王都……いや、世界で見ても俺は最強だと思う」
自分で言って本当に恥ずかしいけど。
実際に強いから仕方ない。
「本当なのか? シオンがそこまで強いとは想像ができないな。ゴブリンに殺されかけてたし」
「うんうん」
確かに。ここ1年の俺は最弱だっただろう。
冒険者の中でも、1人の人間としても。
「それでな、みんなには悪いんだけど」
ここで俺は言う。
言ったら、嫌われるかもしれない。
怖がられるかもしれない。
そんな発言をする。
「……明日には旅に出る」
「え?」
「なんだと?」
「俺は、家族を殺した奴を殺す。
あいつらは何処にいるかわからない。
探し出して、殺す。その旅に出る」
リリー達は、固まった。
口を一度開いて、そして口を閉じる。
それを何度か繰り返していた。
そしてギルゾックが、俺に質問した。
「……復讐ってことか?」
「あぁ。そうなる。人殺しの旅だな」
「……」
「……」
また、黙ってしまった。
次に出る言葉はきっと、
「怖い」「縁を切ろう」「でてけ」
そんな感じだろうか。
いや、もっとオブラートに包んで言ってくれるかな。
2人は優しいから。
「わかった。俺も行く」
「うん! 私も行くね!」
「……はっ?」
ど、どういうことだろう。
俺も行く?私も行く?意味がわからない。
いや、意味はわかるけど……。
「まってくれ、俺は人を殺しに行くんだぞ?」
「おう、俺は元冒険者だ!」
「私はクレスタ最強! シオンなんかより強いもん!」
「そう言う問題じゃなくて……」
2人の顔を見てみると、
それは冗談なんかじゃなく、
真摯な顔をしていた。
「俺は、嘘つきなんだ。ギルゾックには、嘘を何回かついた。
リリーからしたら、俺はもう別人かもしれないし……」
「はっ! 大して嘘つかれてないしなあ!」
「私からしたら、シオンはシオン!」
なんだこの優しさは。
全肯定してくれる。
甘えてしまうぞ、こんなの。
「ありがとう。2人とも。俺たちは友達のままでも、いいの……かな?」
「もちろんだ!」
「もっちろん!」
嬉しい。嫌われなかった。
……それだけで俺は救われる。
でも、こんなにいい奴らだからこそ、
俺と同じ道を歩ませるわけにはいかない。
「ごめん、凄い嬉しい。けど、俺にはついてこないで欲しい。2人を人殺しにしたくはないんだ」
俺は頭を下げた。
地面には謎の水滴が数箇所についていた。
あぁ、これは俺の涙か。
「バシーーン!!」
ものすごい音が鳴り響く。
「いっ!!!!」
リリーとギルゾックに頭を叩かれた。
かなり強烈な一撃だ。
「ナヨナヨすんな!」
「そうだそうだ! あと、なにが最強だよ! こんなの避けられないのじゃ私には勝てない!」
俺は突然の攻撃にびっくりした。
その後、ギルゾックが口にした。
「あのなあ。友達の家族を殺した奴とか、許せるわけねえだろ!」
「そうだよそうだよ!」
確かに。リリーやギルゾックの大切な人が殺されたら、俺は許せない。
「で、でも、人殺しに加担することになるんだ」
「さっきから、人殺しとか言ってるけどなあ。シオンの家族を殺した。そんな頭イカれてる野郎は人じゃねえ!」
「そう! だから、人殺しではないんだよ!」
なんか凄いこと言っている。
なにを言っているのか、あまりわからないけど、
俺はいいのだろうか。
2人を頼ってもいいのだろうか。
ここから先はずっと孤独の人生、そう思っていた。
けど、もしこの2人がついてきたら?
俺は、とても悩んでいた。
自分でも何を考えているのかわからない。
ただ、頼っていいのか。
2人を巻き込んでいいのか。
それだけを考えている気がした。
すると、リリーが喋りかけてきた。
「よし、決闘ね! シオン!」
「へ? 決闘? なんで?」
急になんだろう。決闘とは?
戦うってことだよな?なぜ?
「シオンねー。さっきから余計なこと考えてるでしょ? そんなんじゃ、いつまで経っても、話が終わらないでしょ!」
「リリー、俺は分かったぞ! お前の考えていることが! はっはっは! 俺も参加するぜ!」
2人で何かが、決定された。
俺はまだわからない。
こんなに頭悪かったっけ?俺って。
「つまり、どういうこと?」
「私とギルゾックさんが、シオンを相手にする! シオンは最強なんでしょ? じゃあ、私たちが、貴方に傷ひとつでも付けられたら」
「俺たちは、ついて行くぜ! シオンは何も考えるな! 傷を付けられたから。それを理由にして、俺たちを連れてけ!」
なんかもうめちゃくちゃだ。
……でもいいのかもしれない、
俺はこのまま色々考え込んでしまいそうだった。
この際、リリーが決めた決闘で話を終わらせよう。
そうして、
明日の朝、シオンvsギルゾック&リリーをすることになってしまった。




