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記憶消された復讐者  作者: 納豆にはネギ
第4章 バルク編
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第三十一話「魔王からの朗報」


 『ホンギル王国魔法陣一覧』。

 この本には、簡潔的に場所が記載されている。


 以前に使用した国王の城にあった魔法陣。

 これで例えると、


 ホンギル王国城→教会


 このくらい簡潔的に記載されてる。

 分かりやすいのでありがたい。


 それはいいとして、ホンギル王国……いや、王都と呼ぼう。

 王都はかなり広いが、その分、魔法陣の量も多くあり、

 15の魔法陣が本には書いてある。


 俺とリリーは、この15個すべてを使用するつもり。

 ……つもりといっても、ほぼ確定でそうなる。


 そもそも王都をすべて探るが、

 未だにバルクがここにいるとは思えない。


 それを考えると気が重くなる……。



---



 5個の魔法陣を使用した。

 これで王都の三分の一は探した。


「いないね」


 リリーは微笑みつつ、そう言った。


「なんか、楽しそう?」


「うん!」


「な、なんで?」


「楽しいから!」


 そうだろうか?

 ま、リリーはこういう、面倒ごとが好きなのかも知れない。

 ……そんな人いるのか?



---



 夜。


 15個の魔法陣を使用した。

 ということは、王都全範囲を探し終えた。

 

 しかし、バルクのバの字もなさそう。

 

「ふあ〜」


 隣のリリーはとても眠そうに、口を押さえてあくびをしている。


「宿屋とってるから、いこっか」


 俺がそう言うと、彼女は肩をビクッと跳ねさせた。

 

「え、え、まじですか」


 彼女からあまり聞いたことがない口調になっている。


「なんだその喋り方」


 もしかして、彼女は宿屋などで休む暇もない旅だと思っていたのだろうか。

 当然、それはない。

 さすがに俺でも寝たりしたいからね。


「じゃ、いくぞ?」


「……」


 返事はなく、顔を真っ赤にしたまま、俺の移動についてきた。


 さっきまで、上手く飛べてたのに、フラフラしながら飛んでいる。

 リリー、大丈夫なのか?



 と思いつつも、宿屋に到着した。

 その時間は約数分。


「着くのはや……」


 息切れしながら喋っている。

 ほんとに、熱でもあるんじゃ……。



---



「2名さまですね〜。それでは、2部屋の料金。

 銀貨10枚です!」


 意外と安いな。

 すぐさま、銀貨10枚を差し出した。


「はい」

「……え?」


受付みたいな人に返事をしたつもりだが、

隣のマイベストフレンドが反応した。


「ん? リリーどうした?」

「2部屋……?」


 リリーが硬直した。

 次に、「なーんだ」と言いつつ、全身の緊張が解けたように、息を吐いている。

 

「……?」



 よくわからないまま、階段を上がり、

 俺の部屋についた。

 隣がリリーの部屋である。


 俺は「おやすみ」と言って、

 扉を開けて自分の部屋に入ろうした。


 すると、横の部屋の前にいるリリーが口を開いた。


「一部屋でもよかったのに」


 え?

 こいついまなんていった?

 いや、そんなはずはないか。

 俺は、自分の耳を疑いつつも、


「ひ、ひとへや?」


 と、聞き返す。

 きっと、聞き間違いだろう。

 そう思っていると、リリーは首を横に振った。


「だ、だって宿代高いし……それに……」


 あ、あぁ。

 そういう……。

 危うく変な意味で捉えるところだった。


「大丈夫だよ、俺金持ちだし」


 なんて、調子乗った風にセリフを吐き、

 リリーは笑って、今度こそ「おやすみ」をした。

 


 部屋に入り、

 彼女が最後、付け足して何かを言おうとしていたことに気がついたけど、

 笑ってたし、まぁいっか。

 もし、重要なことなら明日聞こう。


 親友ってそんなもんだよね。

 男女の親友があまり分からんけど、

 男同士なら、重要事項も後回しだぜ!


「うんうん」


 そう、一人で頷きながら、

 シャワーを浴びて、就寝した。

 


---

 


 目覚め。

 いつもと違う天井。

 なんだか、部屋の空気も違うような……。


 あ、ここ宿でした!

 なんちゃって。てへへ。


 いやいや、ふざけてる場合ではない。

 朝シャンしてから、宿を出て、

 バルク探しを再開せねば。


 俺は服を脱ぎ、シャワーをしようと、

 その時。


(シオン……シオン!)


 ん、思念通話?

 この声は……魔王か。

 珍しい奴から通話きたな。

 

(なに? 珍しいな)


(おぉ、よかったぞ。我は思念通話など使用したことがないゆえな)


 早く本題に入ってほしいな。

 魔王から通話なんて、きっと何かあるんだろうし。


(で? どうしたんだよ)


(我に呪いをかけた奴を見つけた!)


 その突然の発言に、脱いでいた服を着直した。

 これは、かなり重要な通話だろう。


(ほう、それは誰だった?)


 俺もかなり苛立ちはある。

 魔王は、奥さんと娘……リリーと暮らしたかったのに、呪いのせいで色々あったからな。


 そして、『呪いをかけた奴』という者の名が出されるのを待っていると。


(名はしらん)


(……はい?)

 

 見つけたのでは無かったのか?

 場所だけってことか?


(えっと、何を見つけられたんだ?)


(今、奴がいる居場所だ)


 あ、あぁ。

 そういうことね。

 まぁ、確かに名前なんてどうでもいいか。

 場所さえ分かればいいからね。


(てか、なんで急に?)


 疑問だ。

 今まで彼は、自分の呪いに少しだけ苛立ちを感じている。

 そう薄々分かっていた。


 けれど、突然見つけたってどういうことだ?

 どうやって、発見に至ったんだろう。


 その疑問は、次の言葉で晴れることとなった。


(我は、この呪いが憎かった。

だから、見つけ出して、呪いを解いてもらおうとおもったのだ。

それに……)


(それに?)


(あやつは、性格が歪んでおったからな。

我以外にも呪いを掛けているかも、と思えてきたのだ)


 なるほどな。

 魔王も成長したな。

 自分以外の被害にも率先して、助けたくなる心。


 これも、娘のリリーの可愛さにやられたのかな。

 元々、魔王も性格は良かったけど、

 父親として、もっと良くなったんだろう。


 まぁ、それはいいとしてだ。

 気になることがある。


(どうやって居場所を突き止めた?)


 これが、よくわからない部分でもあり、知りたい部分でもある。

 バルクを見つける手段が手に入るかも。


(それはな……)


 数分間に渡り、説明をされた。

 彼は、研究室に籠り、努力して、ついに居場所を特定。


 その研究とは、

 呪いの逆算。


 彼が初めて、呪いを受けた時。

 魔王城にも呪いを掛けられたらしい。


 魔王城は、先代魔王のお城。

 あんな魔の建物に呪いなんかかけたら……。


 おっと、少し説明が怖くなるので、

 端的に、優しく言えば、


 魔王城に憑依した先代魔王(幽霊)が激怒!

 この呪い魔法の持ち主許さん!

 その『怒り』が呪いと交わり、

 ずっと、邪のオーラを発していたらしい。


 そのオーラに最近魔王が気づいて、

 それを解析。


 するとー?

 なんとー?

 呪い魔法持ちの足跡が見える魔法を作れた!

 魔法と言っても、足跡のみ!


(へー、そんなことあるもんなんだな)


(かっはは! 我も驚いたぞ!)


 正直、先代魔王の幽霊やら、憑依やら。

 ツッコミたいのも山々だが。


(呪い魔法持ちすべての人の足跡が見えるのか?)


 これが気になる。

 もし、魔王に掛けた奴以外にも探れるなら。

 バルクのことも?


(むりだな)


 なんて、思ってたのに一瞬で期待を壊されてしまったぜ。

 そんな甘くないよね。

 てか、甘えるな俺。

 自分が逃したんだろうが。


(だよな……)

 

(うむ? 大丈夫か?)


 落ち込んでいる俺に、魔王が心配してくれた。

 

 親子揃って優しい奴め。

 

 コンコン


 と、優しさに感動しているとノックされた。


「どぞ」


 ガチャっと開いた。

 入ってきたのはリリーだ。


「そろそろいくよ?」


「あー。バルクね、ちょっと待って」


 長通話しすぎて、バルクを探すと約束していた時間になっていた。

 

(うむ? その声……)


 あっ。やばいかもしれない。


(シオン、お前……まさか)


(ごほごほ!! あー喉がぁ〜)


 咳をしてごまかす。

 今、俺は窮地に立っているのである。

 何故ならリリーが来てしまったから。


 彼には、宿屋にいると説明してない。

 ということは?

 同棲してるみたいになるやんけ!


「シオン大丈夫?」


 こらぁ!

 心配ありがたいけど!

 これ、ごまかすための咳だし!


(シオンよ、死にたいようだな)


 あ、おわた。



---



 リリーが、魔王と通話を代わって、これまでの経緯を話してくれた。


 そのおかげで、俺は死なずに済んだ。

 

「え? うんそうだよ?」


 ん、なにか話しているようだ。


「え!? ほんとに!?」


 気になるな……。

 リリーは、こちらに視線を向けながら喋っている。


 それと、なにか手でジェスチャーをしている。


 なになに?

 バルク、パパが、見つけた、呪いかけたやつ、バルクだった、シオンもこい。


「ほんとうか!?」


「きゃっ!」


 ジェスチャーを読み取り、咄嗟にリリーの肩を掴んでしまった。

 

「ほ、ほんとだよぅ」


「ちょ、代わってくれ!」


 顔が真っ赤なリリーが、思念通話を俺に譲ってくれた。



---


 

 衝撃の事実。

 なんと、魔王に呪いを掛けたのはバルクと分かった。


 リリーが、体格など、特徴を伝えると何かを察したらしい。


 バルク=魔王に呪いを掛けた本人


 なのだとしたら、彼はバルクの居場所を特定していることとなる。

 よって、俺も行くことになった。



 そして今。

 魔王城へと来ている。


「それで、どうするよ」

「うむ」

「うーん!」


 いつでも、バルクと戦えるが、

 誰が戦うかで悩んでいるところだ。


 でも、俺の中ではもう決まっている。


「魔王がやってくれ」

「よいのか?」


 もちろんである。

 ……確かに、逃してしまったせいで『次こそは!』という気持ちもあった。


 けど、そんなの魔王に比べたら薄い感情。


 約17年間。

 奥さんとリリーと暮らせていたはずの時間。

 それを奪われているのだ。魔王は。


「わかった。我にやらせてくれ」


 決心の目をしている。

 彼だって、人間を殺すのは嫌だろう。


「よし! 殺すからには対策を……」

「うむ?」


 俺の話を遮ってきた。

 『うむ?』じゃないわ!

 対策大事だろう。

 突然なんだよ!


「我は殺さないぞ」

「え?」


「殺しはしない。牢屋に入れるのだ」


 嘘ではない。

 それが彼の声音でわかった。


「殺さないでいいのか?」

 

 俺の場合は、牢屋だったけど、

 彼の場合は、殺してもいいくらいだと思っていたのだけれど。


「……苛立ちはある。しかし、我は今幸せだ。」


 微笑みつつ、リリーの方へ視線を向けた。


「リリーもいるしな。

 あやつは牢屋に入れることにしよう」

「そっか、そうだな!」


 うん、彼が牢屋というなら牢屋だ。


「あはは! 二人仲良いね!」


 リリーが笑って言った。

 俺と魔王は少し恥ずかしくなった。



 次に、作戦会議をした。

 バルクと戦うのは魔王。

 しかし、バルクは妙な呪い魔法がある。

 『ワープ』。

 

 その対策として、俺の開発魔法の一つである、

 『結界』を使う。

 結界を発動すれば、バルクはどう足掻いても逃げられないだろう。


 といっても、ワープにさ、他に能力が隠されているかもしれない。

 その対策は、マリアの開発魔法。

 『データ』を使用する。


 これで、ワープの全能力を知れる。

 以上が作戦である。


 対策尽くしではあるが、

 これが俺の油断しない戦闘方法なんだ。


 あ、ちなみにリリーは何もしない。

 『父の背中を見ておるがよい!』とのこと。

 それに彼女は苦笑していた。


「よし、これで準備万端だ」

「うむ!」

「うん! いこう!」


 皆、いい意気込みだ。


「魔王、場所はどこだ!」

「うんうん! どこにいるの!?」


 俺とリリーが、バルクの居場所を、魔王に尋ねた。


 彼はゆっくり口を開いた。


「――クレスタだ」


 魔王の言葉に、

 俺は、リリーと目を合わせた。

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