第二十九話「ミリアとアイク」
目覚め。
いつも通りの寮の天井。
そして、いつも通り二度寝を……。
したいところだけど、速やかに準備をして、バルクを見つける旅に出ないといけない。
まぁ、旅と言えるほど良いものではないが。
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まずは、学園にいるみんなに、挨拶しないといけないな。
突然いなくなるのは友達に失礼ってもんだ。
現在の時刻は、7時くらい。
王都魔法学園の授業は8時から開始。
なので、早い生徒は既に教室にいる。
そして、その早い生徒の中に、2人。
俺の友達がいた。
「おはようアイク、ミリア」
そう、王子と王女であり、マイフレンドのミリアとアイクだ。
「あ! おはようございますシオンさん!!」
「おはよう! シオンくん」
2人は声をかけた俺に気づいて、挨拶を返してくれた。
ミリアは相変わらず元気。
アイクは、犬のようだな。
そんなことを考えていると、
「すんすん」
と、突然アイクが急接近してきて、
体中を嗅いできた。
え、臭い?
ちゃんとシャワーしたよ?
朝シャンだよ??
「く、くさいか?」
「あ! ごめんね、今日はいつもの雰囲気が違うと思って」
「雰囲気?」
いつもと同じボディーソープだけど。
はっ! もしかして昨日、汗かいたから??
いやでも、シャワーで流せたはず……。
そう不安になりつつ、
視線を下に落としてしまっていると、
ミリアが口を開いた。
「お兄様!」
「え!? なに!?」
おぉ、俺もびびった。
彼女は、アイクに対して怒鳴った。
顔を真っ赤にして、頬をぷっくりしている。
「あんまりシオンさんを困らせないでください!」
「あ、あぁ。いやそんなつもりは……。
ごめんねシオンくん」
そう言って、彼は頭を下げた。
「いや大丈夫だよ。ていうか雰囲気って?」
「んー。なんていうか、今日は別れの挨拶でもするのかって雰囲気」
いや、怖い。
なんで匂いで分かるんですか?
ほんとに犬ですか???
「もう! 物騒なこと言わないでください!」
「いや、そういう別れじゃなくて、旅に出る的な」
「それでも物騒ですよ!」
ドンピシャすぎないか?
と、内心思いつつもミリアに申し訳なく思った。
「そのことなんだけどさ……」
俺は、アイクが正解だと言い、
今日から、人探しの旅に出るから、一旦お別れしないといけない。
いつ、学園に戻れるかも分からない。
けど、用が済んだら戻ると、2人に伝えた。
すると、王子くんは、驚きの表情。
きっと当たったことに対してのだ。
隣のミリアは、
「ダメです!!!」
大きい声をあげて、
座っていた席から思いっきり立ち上がった。
そのせいで、バコンと椅子が後ろに倒れた。
「帰ってくるのいつか分からないんですよね!?」
「あぁ」
「またリリーさんといくんですか?」
「いや、俺だけだね」
リリーはこの件に関係ない。
今回の失態はただ一人。俺のせいだから。
「……行っていいですか?」
今にも泣きそうな表情で尋ねてくる。
ここまで悲しんでくれるのは、
男としては嬉しい。
けど……
「ごめん。俺一人でいかせてくれ」
「……」
ミリアは黙ってしまった。
すると、彼女の隣にいるアイクが口を開いた。
「ミリア、シオンくんも理由があるんじゃないかな」
「……理由?」
「わざわざ『人探し』なんて言い方。
説明が難しいけど……きっとなにかあったんだよ」
……アイクは、
深刻な理由を俺が抱えているって思っているのだろう。
まぁ、あながち間違ってはいない。
俺がバルクについてちゃんと話さないのは、
話すと、彼らなら付いてきそうだから。
バルクは、そこまで強くない。
しかし、色々隠し持っている技がある。
よって危険。
今でさえ後悔しているのに、奴がミリア達と戦って危険な目に遭ったら。
……俺はそれが怖い。
どうしたら、説得できるか悩んでいると、
ミリアは表情を変えた。
先程までの悲しみではなく、
パッと笑顔になった。
そして、どこか決意の表情。
「わかりました」
「……?」
「待ってます」
「あ、ありがとう」
「そのかわり……」
そ、その代わり?
なにか言われるのだろうか。
「帰ってきたら……」
「は、はい」
少し怖いな。
何を言われるんだ?
帰ってきたら殺すとか?
いや、それは意味わからんな。
チラッと、ミリアの方を見る。
頬を赤らめて、眉をハの字にして、
髪を触ったりしている。
なにこれ。
ラブコメ漫画?
とか思っていると、ミリアが口を開いた。
「一週間デートする権利をくだびゃい」
……噛んだ。
えっと、一週間デート?
「デート?」
「はい! えっとでふね、――」
何度も何度も、噛みながら、ようやく最後まで聞くことができた。
それは、俺が学園に戻ったら、
一週間分のデートできる権利が欲しいとのことだ。
俺からしたら、それが権利なのかわからないし、
なんなら、毎日デートしたいところだけど。
本人がそれを望んでいるので承諾した。
それにミリアは大興奮して舞い上がっていた。
こんなフツメンを好いてくれてとても嬉しい。
と、思いつつも隣のイケメンを見ると、
可愛い妹を微笑みつつ見ていた。
おっと、それはいいとして。
ミリアも、「行っていいですよ」と許可してくれた。
アイクは最初から止めはしないつもりだったらしい。
男の友情はそんなもんですよね〜。
ん、アイク??
俺……何か忘れてるような。
あ!
寝る前に計画を立てていたんだ。
その一つに、魔法陣の場所を聞くと決めていた。
それを思い出し、彼に尋ねた。
すると、「うん! まってて!」と言い、どこかへ行ってしまった。
なんて、思いきやすぐに戻ってきて、
謎の大っきい本を渡してきた。
「これは?」
「これは、各所にある魔法陣の場所が分かる本だよ」
ほう、と言いながら、
ペラペラと読んでみると、
なんたら場所に、なんたら魔法陣が〜などなど。
分かりやすく記載されていた。
さすが王子と王女と、2人に礼をした。
「みなさん、席についてくださーい」
「ん?」
変な男の声が聞こえてきて、そちらへ視線を向ける。
あ、先生がきてる。
もしかして……。
「授業を始めます」
え、今何時だ?
時刻を見てみると、8時だった。
周囲の席を見てみると、みんないた。
俺は慌てて自分の席へ戻った。
「なにしてたの? ミリアと2人きりで」
鬼の形相でリリーが睨んでいる。
いやいや、アイクもいたけどな。
「アイクもいたよ。まぁ色々話してた」
今日のこの授業は1時間だけ。
すぐに終わる。
なので、リリーにはこの後話そう。
旅に出ると。




