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記憶消された復讐者  作者: 納豆にはネギ
第4章 バルク編
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第二十九話「ミリアとアイク」


 目覚め。

 いつも通りの寮の天井。


 そして、いつも通り二度寝を……。

 したいところだけど、速やかに準備をして、バルクを見つける旅に出ないといけない。

 まぁ、旅と言えるほど良いものではないが。

 

---


 まずは、学園にいるみんなに、挨拶しないといけないな。

 突然いなくなるのは友達に失礼ってもんだ。

 

 現在の時刻は、7時くらい。

 王都魔法学園の授業は8時から開始。

 

 なので、早い生徒は既に教室にいる。

 そして、その早い生徒の中に、2人。

 俺の友達がいた。


「おはようアイク、ミリア」


 そう、王子と王女であり、マイフレンドのミリアとアイクだ。


「あ! おはようございますシオンさん!!」


「おはよう! シオンくん」


 2人は声をかけた俺に気づいて、挨拶を返してくれた。


 ミリアは相変わらず元気。

 アイクは、犬のようだな。

 そんなことを考えていると、


「すんすん」

 

 と、突然アイクが急接近してきて、

 体中を嗅いできた。


 え、臭い?

 ちゃんとシャワーしたよ?

 朝シャンだよ??


「く、くさいか?」


「あ! ごめんね、今日はいつもの雰囲気が違うと思って」


「雰囲気?」


 いつもと同じボディーソープだけど。

 はっ! もしかして昨日、汗かいたから??

 いやでも、シャワーで流せたはず……。


 そう不安になりつつ、

 視線を下に落としてしまっていると、

 ミリアが口を開いた。


「お兄様!」


「え!? なに!?」


 おぉ、俺もびびった。

 彼女は、アイクに対して怒鳴った。

 顔を真っ赤にして、頬をぷっくりしている。


「あんまりシオンさんを困らせないでください!」


「あ、あぁ。いやそんなつもりは……。

 ごめんねシオンくん」


 そう言って、彼は頭を下げた。

 

「いや大丈夫だよ。ていうか雰囲気って?」


「んー。なんていうか、今日は別れの挨拶でもするのかって雰囲気」


 いや、怖い。

 なんで匂いで分かるんですか?

 ほんとに犬ですか???


「もう! 物騒なこと言わないでください!」

 

「いや、そういう別れじゃなくて、旅に出る的な」


「それでも物騒ですよ!」


 ドンピシャすぎないか?

 と、内心思いつつもミリアに申し訳なく思った。


「そのことなんだけどさ……」


 俺は、アイクが正解だと言い、

 今日から、人探しの旅に出るから、一旦お別れしないといけない。

 いつ、学園に戻れるかも分からない。

 

 けど、用が済んだら戻ると、2人に伝えた。


 すると、王子くんは、驚きの表情。

 きっと当たったことに対してのだ。


 隣のミリアは、


「ダメです!!!」

 

 大きい声をあげて、

 座っていた席から思いっきり立ち上がった。

 そのせいで、バコンと椅子が後ろに倒れた。

 

「帰ってくるのいつか分からないんですよね!?」


「あぁ」


「またリリーさんといくんですか?」


「いや、俺だけだね」


 リリーはこの件に関係ない。

 今回の失態はただ一人。俺のせいだから。


「……行っていいですか?」


 今にも泣きそうな表情で尋ねてくる。

 ここまで悲しんでくれるのは、

 男としては嬉しい。


 けど……


「ごめん。俺一人でいかせてくれ」


「……」


 ミリアは黙ってしまった。

 すると、彼女の隣にいるアイクが口を開いた。

 

「ミリア、シオンくんも理由があるんじゃないかな」


「……理由?」


「わざわざ『人探し』なんて言い方。

 説明が難しいけど……きっとなにかあったんだよ」


 ……アイクは、

 深刻な理由を俺が抱えているって思っているのだろう。

 まぁ、あながち間違ってはいない。


 俺がバルクについてちゃんと話さないのは、

 話すと、彼らなら付いてきそうだから。


 バルクは、そこまで強くない。

 しかし、色々隠し持っている技がある。


 よって危険。

 今でさえ後悔しているのに、奴がミリア達と戦って危険な目に遭ったら。


 ……俺はそれが怖い。


 どうしたら、説得できるか悩んでいると、

 ミリアは表情を変えた。

 先程までの悲しみではなく、

 パッと笑顔になった。

 そして、どこか決意の表情。


「わかりました」


「……?」


「待ってます」


「あ、ありがとう」


「そのかわり……」


 そ、その代わり?

 なにか言われるのだろうか。

 

「帰ってきたら……」


「は、はい」


 少し怖いな。

 何を言われるんだ?

 帰ってきたら殺すとか?

 いや、それは意味わからんな。


 チラッと、ミリアの方を見る。

 頬を赤らめて、眉をハの字にして、

 髪を触ったりしている。


 なにこれ。

 ラブコメ漫画?


 とか思っていると、ミリアが口を開いた。


「一週間デートする権利をくだびゃい」


 ……噛んだ。

 えっと、一週間デート?


「デート?」


「はい! えっとでふね、――」


 何度も何度も、噛みながら、ようやく最後まで聞くことができた。 


 それは、俺が学園に戻ったら、

 一週間分のデートできる権利が欲しいとのことだ。


 俺からしたら、それが権利なのかわからないし、

 なんなら、毎日デートしたいところだけど。


 本人がそれを望んでいるので承諾した。

 それにミリアは大興奮して舞い上がっていた。

 

 こんなフツメンを好いてくれてとても嬉しい。

 と、思いつつも隣のイケメンを見ると、

 可愛い妹を微笑みつつ見ていた。


 おっと、それはいいとして。

 ミリアも、「行っていいですよ」と許可してくれた。

 アイクは最初から止めはしないつもりだったらしい。


 男の友情はそんなもんですよね〜。

 ん、アイク??

 俺……何か忘れてるような。


 あ!

 寝る前に計画を立てていたんだ。

 その一つに、魔法陣の場所を聞くと決めていた。


 それを思い出し、彼に尋ねた。

 すると、「うん! まってて!」と言い、どこかへ行ってしまった。


 なんて、思いきやすぐに戻ってきて、

 謎の大っきい本を渡してきた。


「これは?」


「これは、各所にある魔法陣の場所が分かる本だよ」


 ほう、と言いながら、

 ペラペラと読んでみると、

 なんたら場所に、なんたら魔法陣が〜などなど。

 分かりやすく記載されていた。

 さすが王子と王女と、2人に礼をした。


「みなさん、席についてくださーい」


「ん?」


 変な男の声が聞こえてきて、そちらへ視線を向ける。

 あ、先生がきてる。

 もしかして……。


「授業を始めます」


 え、今何時だ?

 時刻を見てみると、8時だった。

 周囲の席を見てみると、みんないた。


 俺は慌てて自分の席へ戻った。

 

「なにしてたの? ミリアと2人きりで」


 鬼の形相でリリーが睨んでいる。

 いやいや、アイクもいたけどな。


「アイクもいたよ。まぁ色々話してた」


 今日のこの授業は1時間だけ。

 すぐに終わる。

 なので、リリーにはこの後話そう。

 

 旅に出ると。

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