↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶消された復讐者  作者: 納豆にはネギ
第4章 バルク編
30/36

第二十八話「後悔」


 後悔している。

 バルクを逃したということを。


 俺は、油断しすぎたんだ。

 相手が弱いからといってもしてはならないのに。

 

 けれど、次はしない。

 次こそは。


 ……てなわけで、マリアの研究室に来た。


「今度はなんだよ!」


「いや、申し訳ないんだけどさ、――」


 今回、ここに来たのは、

 バルクを探して欲しいからである。

 

 二度目で申し訳ない。


「また!? なんでだ?」


 マリアの問いに、気まずさを感じつつも答えた。


 まず、最初にバルクを占ってもらった理由。

 彼は、学園で呪い魔法を使用し、生徒に危険魔法を使わせた。


 そして、あいつ自身の性格の悪さ。

 腹黒さを分かりやすく伝えた。


 

 最後に、それを逃してしまったと。


「……ほう」


 珍しく、マリアは真剣な表情になった。

 いつもは、はっちゃけてる感じなのに。

 

 ぶっちゃけ、顔はガキ。

 だけど、顔だけでは判断できない、何かカッコよさを感じた。

 あ、そういえば、この人年上だった。


「すみません、なので占って……」


「任せろ。それはウチも許せん」


 最後まで喋らせてくれなかった。

 それほどまでに、マリアも怒りを覚えている様子。


「……」


 彼女は、すぐに目を閉じた。

 これは毎度のこと。

 そう、占いを始めるという合図。


 いや、これが合図かどうかしらんけど。


 と思いつつも、俺はマリアを凝視する。

 紫色の煙が、彼女の周りをクルクルと、渦のようにうごめいている。

 この煙は魔力だ。


「……」


 いつにも増して、魔力消費量が多い気がする。

 何故だろう。

 そう疑問に思っていると、マリアは目を開けた。


「すまん」


 あれ?

 いつもみたいに、脳内に居場所が映し出されるのを予想していたんだけれど。

 

 先に謝られた。

 

「どうしたんですか?」


「むり」


 無理?

 な、なにが?

 

「えっと、なにがでしょう」


「バルク・カタラ、対策してきておるな……」


「対策って?」


 さっきから、何を言っているのか?

 本当にわからない。

 むり、とか。

 対策、とか。


「え、えっと」

 

 俺が困っているのをみたマリアは、単刀直入に言った。


「バルクは、自分に呪いをかけた」


「自分にですか?」


 呪いとは勿論、自分にもかけられる。

 基本的には、戦闘が有利になるものだ。

 『ワープ』とやらも、自身に使用してた。


 ……待てよ?

 嫌な予感が頭を過ぎる。


「まさか……」

 

 次の瞬間、その予感が正解へと変わった。


「うん、『クルプトー』だろうな」


「……!」


 そんな……。

 バルクは、あれも使えたのか……。

 てことは、


「マリア博士の、占いでもバルクの居場所は……」


「……むりだな」


「…………まじですか」


 『クルプトー』。

 使える者は稀である、呪い魔法。

 自分を隠蔽できる能力だ。


 まさか、彼女の占いにも出ないようにするとは。

 ん……。まてよ?

 

 それってもしかして、俺がバルクに説明しすぎたからではないのか?

 『マリアに教えてもらった』的なこと言ってしまったから……?


「シオン?」


 この時、俺は自分を激しく責めた。

 マリアがいるから、いつでも奴を見つけられると。

 逃してしまったけれど、チャンスはいくらでもあると。

 

 ずっと、そんなことを頭の片隅に入れていた。

 けど違った。

 昨日のロット村が最初で最後だったのだ。

 

 呑気に授業とか受けている場合でも、

 アイクがモテて羨ましいなとか感じてる場合でも無かった。


 さっさと、バルクを探さないといけないんだ。


「マリア博士」


「……?」


「俺、行ってきます」

 

「探しにか?」


 彼女はとても悲しそうな声音で、俺に返事をした。

 恐らく、マリアも悔しいんだろう。

 苛立ちを覚えた相手を占えなかったから。


「はい、探しにです」


「厳しくないか?」


 ごもっともだ。

 アペプ一族なんか、何年も探してようやく見つけた。

 それも、運が良かっただけだろうしな。


 ……でもだ。

 バルクを見つけないと、俺の気が済まない。

 罪悪感で死にそうだし。

 それにもう、かなり鬱……。


「そうか……」


 表情を見て察してくれたっぽい。


「すみません。それでは」

 

 研究室から出ようとした瞬間、はぁ、とため息が聞こえてきた。


「まあまて!」


「うわ! なんですか」


 彼女は普段のような声音になった。

 元気で子供みたいな高い声。


 俺は、それを聞いて振り返った。

 それに何故か、

 さっきまで、自分にあった鬱々としたものが晴れた気がした。


 びっくりしたからかな。


「ウチは、天才!」


 彼女は毎度の台詞を吐いた。

 俺は、その次に来る言葉を待つ。


「だから! ウチの魔法を伝授しよう!」


「開発魔法ですか?」


「そう!」


 マリアは、変身魔法というのを開発している。

 ってことはそれかな?

 別にいらないんだけどな。


「じゃ、じゃあありがたく」


 でも、お言葉に甘えておこう。

 この世に不必要な魔法は存在しないからね。

 付け足すと、悪用しなければ。


「うん! それじゃ」



 それから、数分で習得した。

 それに、変身魔法では無かった。


 彼女はもう一つ開発していたのだ。

 その魔法の名は『データ』。

 

 能力は解析。

 相手の使用した魔法の詳細を知れる。

 普通に強くて驚いた。


 もし、昨日のバルクみたいに、

 『ワープ』を使われても、

 逃げれる魔法と分かるので、


「これなら!」


「うん!」


 以前のような失敗はしなくなるってことか!

 ついつい、嬉しくなり、

 俺は彼女を抱き上げた。


「やったぜ! さすが天才マリア博士!」


「わわ、下ろして! ウチ年上だぞ!」


 そう言いつつも、天才と言ったからか、

 マリアの顔は、微笑んでいて、とても嬉しそうだった。


---


 寮の自室に戻った。

 一応、今日は休みたかった。


 久しぶりに修行で汗をかいたことで、

 なんだか、疲れがものすごい。


「このベッド本当にフカフカだな」


 と、感動しつつ就寝の準備万端。

 あとは目を瞑るだけ。


 なんだけど、その前に計画を立てておこう。



 ・朝目覚めたら、出発の準備。

 バルクを見つけるためのだ。


 ・出発したら、王都全体を探そう。

 広いので、魔法陣を使おう。

 アイクとかに聞いたら、どこにあるか分かる。


 ・王都にバルクがいない場合、クレスタに行こう。

 可能性は極めて低いけど、念の為探す。


 ・もし、見つけて戦闘になったら。

 マリアに教えてもらった『データ』を駆使して、油断のしない戦闘にする。



「こんなかんじかな」

 

 これで完璧のはずだ。

 一通り、プランは立てられた。

 

 これの通りに立ち回れば本当に、

 何も心配はないはず!

 

 そう確信して、目を閉じ、

 頭の中で、羊を数えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。