第二十六話「棲家」
呪い魔法について説明しよう。
呪い魔法と、いっても沢山の種類が存在する。
まず、記憶消去する呪い。
これは、一部でも全部でも、指定した範囲の記憶を消去できる呪いだ。
多分だが、バルクは、闘技場での一部の記憶を消したのだろう。
もっとも、それはアイとライにかけている。
俺にはかかってない。
……通常、魔物に使うんだけどねこれ。
次が、憎悪の呪い。
魔王にかけられている呪いだね。
誰かから嫌われるという悲しい呪い。
全ての人間に憎悪されるように、魔王は呪われているけれど、
1人の人間に嫌われるように〜というのも可能。
当然、こちらも魔物用。
語れば長くなるので、この辺にしておくが、これら以外にも呪い魔法はある。
こんな呪い魔法を扱えるのが、稀にいる。
それが呪い魔法持ちと呼ばれる人である。
おっと、説明はこのぐらいにしておこう。
俺は今、ロット村にいる。
ここに来るのは二度目だな。
以前はアペプ一族がいた。
けれど、今回はバルクがいるとされている。
……ここは悪人の棲家か?
まあいい。この村は地味に広い。
壊れた建物もたくさんあるし、
見つけるのは苦労するっちゃする。
「うーん」
一旦、その場に立ち止まり、周囲を見渡す。
……わからない。
これは一つ一つの建物を見ていかないと。
……少し面倒くさい。
と、思いつつも頑張る!
呪い悪用ダメ絶対。
バルクが呪い魔法持ちか確定していないけれど、
もしそうなら牢屋にぶち込む一択。
俺は数え切れない程ある建物を見て回った。
そして、あと半分くらいかなってところで、
「お」
寝ている男発見。
すーぴーすーぴーしている。
うん。こいつはバルクで間違いない。
とても気持ちよさそう。
俺も寝ようかな?
な、なんてね。もちろん冗談だ。
「おーい起きなさい」
起こしに来るおかんみたいになっているが、
とにかく叩きまくった。
べしべしと。
「むにゃ……」
き、きもい。
まだ、夢の中にいるようだ。
本格的に起こさないと。
「君は呪い魔法持ちなのか?」
夢の中の彼に聞こえるように言った。
すると、
「は?」
目だけがパチクリと開いた。
そして、数回瞬きして、こちらを見た。
「え、は、あんた」
焦り。それが彼から感じる。
「呪い魔法」
もう一度尋ねた。
今度は起きている。
次に来る言葉を待っていると、
「しねぇ!」
と言って、同時に起き上がり、
魔法を放ってきた。
言葉通り、殺意マシマシ高威力で。
「それは肯定と受け取っても?」
なんのことですかと言わずに、
殺そうとしてくるのは確信犯。
「いいからしねや!」
彼が眠っていたベッドとその建物が、魔法により消え去った。
そして、いつの間にか戦闘に入った。
「いいからさ、牢屋に入れよ」
「入るわけねーだろ」
バルクの否定と共に、呪い魔法を放ってきた。
動けなくなる、麻痺の呪い。
「やっぱり呪い魔法持ちだね」
正直、彼の攻撃は俺に当たらない。
バルクは未熟すぎるのだ。
これなら、シビアでも勝ててしまいそうだ。
「拘束魔法」
拘束しようと、奴に魔法をかけようとした。
その瞬間、謎の呪い魔法を使用した。
「くっそ!ポータル!!!」
ぽ、ポータル?
そんなの存在したか?
呪いはかなり勉強したつもりだけど……。
その魔法が何なのか理解できないまま、バルクを拘束した。
「さぁ、牢屋に入ろ」
そういえば、牢屋ってどこだっけ?
あ、王都の騎士団に渡せばいいんだっけ。
とか考えているその時。
「お前どうやって居場所がわかった?」
突然の質問タイム。
それに仕方なく答える。
王都魔法学園にいるマリア博士に、占ってもらった。
とか、まあそんな感じのことを。
すると、奴は苦笑した。
「あーそんなのいたなあ」
多分、諦めたのだろう。
そりゃそうだろう。
俺の自慢の拘束魔法だもん。
ここから逃げる方法はないよーん。
……おっと、いけないいけない。
「俺も確かめたいことがある」
「なんすか?」
「お前は何故こんなことしてる?
何故、アイとライに危険な魔法を使わせたりした?」
この問いに、バルクはため息をつき、全て話した。
バルクは呪いを人にかけるのが好きだと。
過去に偶然、呪いを使って、思ったらしい。
気持ち良い、と。
快楽を感じた。
三代欲求すべてが無くなっても良いから、この快楽をずっと感じたいと。
それほどまでに彼は狂っていた。
聞いてる最中、共感できるとこは一つもなかった。
さらに、他人を危険に陥るのも好きだと。
アイとライはアニス信者のバカ。
この2人を利用して、世界崩壊を使わせたら、どうなるのだろうか?
アイ達は死ぬのか、それとも生き残って闘技場が無くなるのか。
それが知りたかったらしい。
本当に意味がわからない。
「はぁ、なんか聞いてないことまで聞かされたような……」
「まぁまぁ、これで最後っすからね」
そういうものなのだろうか。
牢屋にいっても面会とかできるだろう?
俺はしないけど。
よし、そろそろ牢屋にぶち込もう。
あ、騎士団に任せるのか。
「おい、そろそろ……」
と、バルクに話しかけた。
その瞬間、奴は、不気味に微笑んだ。
「さん」
「……は?」
なにか言い出した。
「に」
……に?
これって、カウントダウン?
なにかが起こる?
なんだ?何が起こる?
何か良くない気配を感じ、
でもそれが何か分からず、
とにかく頭をフル回転させた。
「いち」
答えより先に、間も無く何かが起こってしまう。
「ま……」
待ってと言おうとした。
「ゼロ」
きえた。
何が消えた?
見たらわかる。
「なんで?」
俺が拘束していた一人の人間が、
姿を消したのだ。
残ったのは、呆然と一人で立っている俺。
広い廃村の中に孤独と突っ立ってる俺。
「あいつ、まさか」
やっと、頭で回転させてた疑問が晴れた。
戦闘中、バルクが使った呪い魔法。
『ワープ』。
名からして、どっかに逃げたんだろう。
これは、彼の開発した呪い魔法なのか?
頭を使うほど、難しいことかなのか?
……はぁ、俺ってこんな頭悪いんだ。
空を見上げて、考える。
まずは、バルクのこと。
俺の想像よりあいつはクズだった。
呪いを平気で人に使うし、
死ぬのか生きるのか、とか意味わからん実験しているし。
これは最悪、牢屋が無理なら殺さないと、
「……」
脳裏にアペプ一族のことが掠った。
3人殺した時のこと。
今思い出せば、あの時の俺って……人殺し。
……いけない。
今はバルクのことについてだろう。
まず、学園に戻り、マリアに頼む。
バルク・カタラの居場所をもう一度占ってもらうんだ。
居場所を確認した後、
ワープという魔法の対策。
俺ならできる。
開発魔法は得意だろ。
そのくらい数日あれば作れる。
よし。
戻ろう。
王都魔法学園へ。




