第二十五話「謎多きバルク」
俺は1人で学園長室に赴いた。
「それで、聞きたい事とはなんだ?」
ジビス学園長に聞きたいこと。
それはバルクについて。
「バルクという生徒はいますか?」
単刀直入に聞いた。
その問いに学園長はこう答えた。
「知らないな」
と、彼女が知らないということは、
バルクは、ここの生徒ではないということ。
それなら闘技場でのあれはなんだったんだ?
バルク、アイ、ライ。
彼らが危険な魔法を使用した。
あの日、去り際に聞こえたのは、
アニスがどうたらこうたら。
でもそのアニスは何も知らない様子。
そうだ、アイとライに聞くのが手っ取り早い。
よし。「バルクってだれ?」と尋ねよう。
そう決め、ジビスに礼をし、学園長室から離れようとした。
すると、去り際に声をかけてきた。
「まぁなんだ! 困ったら助けよう!」
「……え?」
「これは最後の切り札って奴さ! 本当の本当に困ったらもう一度訪ねてこい!」
「わ、わかりました」
その男らしくかっこいい台詞を聞き、俺は今度こそ部屋を離れた。
---
教室にきた。
どんな生徒がいるか知らなかったけど、
よくよく探したらアイとライを発見した。
しかも、案外席も近かった。
アイライは、いつも2人でいるな。
バルクについて、洗いざらい吐き出させてやる!
「アイとライだよな?」
2人は、同時に首をかしげた。
「……?」
「だれですか?」
ははーん。
説教されると思っているのかな?
とぼけても無駄だ!
「アイ、ライ。怒らないからさ、聞きたいことがあるんだよ」
「え? ライ、この人知ってる?」
「は? アイも知らないの?」
ん、おかしい。
怒らないと言っても、とぼけるのか?
「前に闘技場で会ったでしょ?」
「闘技場なんて行ったっけ私たち」
「いってない、いってない」
俺は少し面倒くさくなりつつも、
先輩として、優しめに色々質問した。
まずはバルクのこと。
「バルクって? だれ?」
「男の人? そんな友達いないよね」
数分の会話で色々分かった。
そもそも、アイとライは他に友達がおらず。
普段はこの2人でしか絡まないと。
ここで俺は気づいた。
最初からこの子達は何も知らない。
嘘なんてついておらず、
俺のことも、闘技場でのことも、バルクと戦闘していたことさえも。
なにも分かっていなかった。
いや、記憶していなかった。
「……わかった。ごめんね」
「? はーい」
「はーい」
なんだったんだろうね。と言いつつ、彼女たちは自分の席に座り直した。
俺も自分の席に座り、頬杖をつき、目を閉じた。
深く考えたかったから。
……はじめに、アイとライは覚えてなかった。
闘技場には行ったことすらないらしい。
それに、バルクの存在も知らず。
世界崩壊を使ったらダメとも理解してた。
彼女らは、とても勤勉なようで、そこの判別はついてた。
もしかして、アニスではなくて……。
やっぱり、バルクか。
あいつが怪しすぎる。
16歳ってのは、もちろん嘘。
アニスがどうたらってのも嘘。
そして、奴は……。
――呪い魔法持ち。
アイとライに記憶消去の呪いをかけた。
って考えるのが合理的ではある。
実際、昔、俺もかけられたから似たものを感じた。
当然これは推理でしかないが。
よし、バルクは見つけなければ。
あいつはかなり危険だ。
何のために呪いをかけたのかしらんが。
いいことではないのはわかる。
でも、どうやってバルクを見つける?
……あ。
あいつがいた。
アペプ一族を見つけてくれたし。
魔王の娘、リリーの場所も特定できる。
そう。
占い師マリア博士だ!
---
「で、なんだ! 少女の部屋にきて」
確かに、チビの童顔で声も高いけども。
「少女て……いや占ってほしい奴がいてさ」
マリアは、はぁとため息をついた。
「仕方ないな。というか敬語」
あっ。一応マリアは年上だった。
「ほんとうですか!」
「ただし!」
ん、嫌な予感が……。
「開発魔法おしえてちょ?」
とても小さな身長のマリアが、俺の見上げ、究極の上目遣いをしてきた。
……うるうるした目で。
かわいい!って思いたいけどね。
性格がだーめ。
ま、開発魔法はいくらでもあるので、
俺からしたら容易い条件。
「いいですよ、何個?」
「うーん、3個!」
……ちょっと多いけどまあいい。
アペプ一族とまではいかないけど、
バルクも少しだけヤバそうだし。
そして、適当なのを3つ教えた。
天才なだけあって、習得も早かった。
「よっしゃ! 占うぞ!」
マリアは深呼吸をして、目を閉じた。
占う時のあの雰囲気……。
「……」
バルクという名と、ガタイの良い体格を共有しておいた。
前回は、魔王の娘ってだけで場所がわかったし、
今回はかなり詳細を知れそう。
「わかったぞ!」
すぐにマリアは目を開け、研究室を、その高い声で響かせた。
ていうか、掃除したのにまた汚く……。
まあいい。
「で? どこにいる!?」
「ふむふむ。ここだ!!」
いつも通り、脳に直接映像が映し出されるように、奴の居場所が判明した。
「ほうここか」
よくやったマリア。
ふっ。バルク覚えておけ、呪いを悪用したことの重大さをその身に刻んでやる。
「な、きもちわる!!」
いかんいかん。
くひひと笑みを浮かべてしまったので、マリアにキモがられた。
「まってろ! バルク!!」
俺は大きな声を出し、研究室から飛び出した。
そして、バルク・カタラの居場所へ。




