第二十四話「魔王の過去」
我は今、とても幸せだ。
娘のリリーにも会えた。
その娘が、妻も連れてきてくれた。
まだ一緒には住めないが、偶に会えるこの時がとても幸せなのだ。
あれもこれもシオンのおかげだな。
……だが、やはりまだ苛立ちはある。
あの時。呪いをかけられたあの時だ。
呪い自体はどうでもよいが、
それが理由で家族と暮らせぬのは癪だ。
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妻と結婚し、子を授かったと知った直後。
魔王城に、ある男が現れた。
『あの〜、ここが魔王城っすか?』
その時、我には妻がいたこともあり。
何事にも警戒をしていた。
同じ魔族が来たとしても。
しかし、この男は人間。
より一層用心した。
『なんだ貴様』
『俺の名前は――っす』
『――よ、なにをしにきた』
名前は思い出せないが、容姿は今でも鮮明に記憶している。
ガタイがよく、見るからに男という体つき。
『呪いをかけていいっすか?』
『……呪いだと?』
名を名乗ったかと思いきや、次は意味不明なことを言い出した。
『はいっす!』
『なんでだ? 何故に呪いなのだ』
『いやー魔王のくせに人間殺さないなって』
『人間は嫌いではない。それに意味がない』
途端に、男はケラケラ笑い出した。
そして、我の未来視にありえないことが映る。
『……!? なぜだ』
『あれ? どしたっすか?なんか見えたっすか?』
念のため、隣にいる妻を地下室へ逃した。
『貴様! どうやった!』
『呪いっすよ。魔王城にかけたんすよ』
『……魔王城に?』
『そっす。俺は貴方に勝てない。だからこの空間にいる者は魔力を練れなくしたっす。
当然、俺以外がね。
まーでも、建物に呪いは数分しかかけられない」
そして、未来視に映ったことが次に起きた。
――により、呪いを受ける我だった。
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「はぁ」
奴は呪いをかけてどこかへ消えた。
幸いにも妻には手を出さなかった。
それだけでまだマシだが。
最初、何の呪いかわからなかった。
けど、突然にして襲いにきた大勢の人間。
何もしてないのに、「許さない」と言われた。
妻が攻撃されそうになり、仕方なく殺した人間もいる。
その時のことが忘れられなく、我は妻とそのお腹にいる子を逃した。
クレスタという平和な街へ。
……それにしても、そろそろ呪いをどうにかしたい。
我は、なにがあっても当然家族を守る。
父として。
しかし、怖いものは怖い。
守りきれないかもしれない。
リリーも強いが、娘にそんなことさせたくない。
呪いの解呪は、呪い魔法持ちしかできない。
……あの男を探して、解呪しろ。
とかお願いをしても無理だろう。
奴はかなり極悪な心を持っていた。
腹黒、バケモノ、そういう感じであった。
シオンが復讐したアペプ一族に近いのかもしれぬ。
やはり、拷問しなければ……いやよそう。
自分でヘマをして受けたのだ。
頑張ろう。頑張って我が解決するのだ。
そうして、解決法を出すため研究室に籠った。
---シオン視点---
学食にやってきた。
ここでは学年などが違くても、
皆が会える場所でもあるのでよく利用する。
「それでさ、ママにも会わせたんだ!」
「へぇ、それはあいつも喜んだだろ」
魔王に奥さんを会わしたらしい。
彼の喜ぶ顔がすぐに浮かぶ。
「リリーさんの父上はどのような方なのでしょう?」
ミリアはリリーに尋ねた。
けど、魔王が父ということは内緒だ。
「まぁ、すごい人だよ」
「そうなのですか!? シオンさんよりも!?」
おぉ、そこで俺を引き合いに出すのか。
「うん、もちろん」
「もー! シオンの方がすごいでしょ!」
自分の父だからあまり分かってないんだろうが、
魔王はかなりすごい奴だ。
長く生きているし、偉業もたくさんある。
ほとんどの魔族が神と崇めている。
「師匠! 食べ終わったら呪い魔法を教えてください」
「あぁ、いいよ。シビアはがんばってるね」
「えへへ」
シビアは最近かなり頑張ってる。
呪い魔法を正しく、上手く使うために、
いろいろ修行の最中。
もしかしたら、この学園の誰よりも強いかもしれない。
いや、リリーの方が強いか。
「シオンくん! 僕にも魔法を教えてよ!」
「アイクにもね、教えるから」
「やった!」
アイクは犬のように懐いてる。
魔法を教えるのが散歩をすることみたいな。
そんな例えは失礼か。一応彼は王子だし。
そんなジョーク思考をかましていると、
珍しい人がやってきた。
「あの……」
「……? アニスさん?」
そう、アニスだ。
俺はまだ手下アピールしている。
……聞きたいことがまだあるし。
でもなんか、しょんげりしてる。
以前までとの差がすごい。
魔王城でビビらせすぎたか?
「どうしたんですか?」
「あ、いや、あの。リリーさん」
ん?リリーに用があるのかな。
「なに? アニス、座っていいよ」
あ、アニス?一応先輩だよ?
リリーちゃんダメだよ?
「あ、はい。すんません。座らせてください」
アニスはリリーに従い、席に座った。
な、なぜか俺の隣に。
どうしてここまでリリーに忠実なのか。
それは会話をしてすぐにわかった。
どうやら、俺の知らない間に、
リリー対アニスが行われた。
その結果、アニスがボコボコにされ、
学園での立場が逆転したそう。
「そんなことがあったんだ」
「はい……」
俺にも敬語なのは、リリーにそうしろと命じられたと。
好都合。
「アニスさん、聞きたいことがあるんだけど」
「なんでしょうか」
「なぜ、後輩3人に世界崩壊を使わした」
「……え」
「なぜ、バルクとアイとライに危険なことをさせたか聞いてる」
いけない事をした生徒に怒る鬼教師。
それにしか見えないだろう。
今のアニスと俺は。
「あの、世界崩壊って?」
「は?」
はぁ。とぼけるのか。
いるよな、こういう生徒。
「リリーやっちゃって」
「え? あ、うん!」
リリーがアニスを睨みつける。
これで、嘘はつけないはず。
「ひっ!! ほんとにしらないです!」
……あれ?ほんとうに?
「世界崩壊は?」
「使ったらダメな魔法ですよね」
ちゃんと分かっている。
まぁ授業で習うから当然だが。
「……バルクとアイとライ」
「アイとライは私の元手下です」
「バルク」
「ば、バルク? だれですか」
少し怯えているが、その顔は嘘一つついていない正直な顔。
いや、眼差しというべきだろうか。
「……わかった」
「ほっ」
ほっとするな。
……てかバルクは知らないのか。
アイとライは知ってる。
うーん。よくわからん。
でもあいつは16歳。
同じクラスのはず。
「お前はクラスにいる人を全部知ってるか?」
「え、まあアタシがトップだったから」
はぁ、こいつもしかしてクラス全員手駒にしてたな?
まあいいけどさ。
「その上でバルクを知らないんだな?」
「はい。バルクはいません」
……バルク。
怪しすぎる。見つけて問いただしてやりたい。
けどどこにいるんだ?
クラスにはいない。
16歳が嘘だったのか?
……わからん。
悩んだ末に辿り着いた結論。
よし!学園長に聞くか。




