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記憶消された復讐者  作者: 納豆にはネギ
第3章 魔王の娘編
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第二十ニ話「悲しみの怒り」


 魔王は扉が開いたのに気づいた。

 そして、俺に視線を向け、喜んだ表情になった。

 次に、隣のリリーに視線を向けた。

 魔王は戸惑っていた。


「シオン、彼女は一体?」


「あぁ。俺の友達だよ。色々あって魔王城にくることなったついでに紹介しようと思って」


「はじめまして! シオンの友達の……」


 魔王は「ほう」という顔をし、

 リリーが自分の名を名乗るのを待つ。


「リリー・アマリリスです!」


「……」


 その瞬間、先程までのワクワクとしていた魔王の表情は消え去っていった。

 次に見えたのは悲しい表情。

 

 またもや、その顔は変わっていき、

 突然、魔王は怒りを露わにした。


「出ていけ!!! 2度とくるな!!!」


「……え? おい、どうしたんだよ」


 魔王はかつてないほどに激怒した。

 けれどそれは怒りだけではなさそうな顔。

 ……あまりよくわからない。


 リリーは「わたし、なにかしちゃったかな?」といいつつも、

 俺は、偶然、魔王の機嫌が悪かった。ということにし、寮へ帰らせた。


---


 そして、俺は地下室に残った。

 魔王は黙ったまま俯いている。


「なぁ、どうしたんだよ」


「……シオンは奴の友達なのか?」


 顔をこちらに向け、微笑しつつ尋ねてきた。


「あぁ。友達だよ」


「ふっ。そうか……」

 

 またもや黙ってしまった。

 何か、隠している。

 そんな気がする。


「魔王、話してくれよ? なにかあるんだろ」


「……まあそうだな。話そう」


 向かいに座ってくれと言われ俺も座る。


 魔王は何かを決意し、

 椅子に座り直して。

 俺に視線を向け、

 真剣な表情で、語り出した。


「あやつはな、我の娘なのだ」


「む、娘?」


 なんだか、とんでもない話になりそう。

 ……それでも最後まで聞くと決めた。


「うむ。前に話しただろう? あれがリリー。我の娘なのだよ」


 と、とりあえず話を続けよう。


「そうだったのか……でもなんで、リリーにあんな態度をとったんだ?」


 以前の、彼は娘と妻を大切に思っているようだったし、何より愛情が伝わってきた。

 なのになんで、あの時、怒鳴ったのか。

 

「我はな、リリーも妻も愛している。

 この世の誰よりも。

 でもダメなのだよ。会っては……だめなのだ」


「ダメ? ど、どういうことだ」


「我は人間に恐れられているだろう?

 あれは呪いなのだ。

 過去に何者かによってかけられた呪い。

 それは人間に憎悪されるというものだった。」


 だから、魔王は悪とされているのか。

 謎の嫌悪の正体は呪い……か。

 なんの因果かわからんな。

 俺も呪いをかけられたし……。


 でも俺のはまた別。

 記憶を消すという呪いだった。

 解決法は記憶を残して戻すこと。

 それは簡単だったからよかった。


 けど、魔王の場合……厳しいな。


「てことは……」

 

 俺はなんとなく理解した。

 

「そう、もし我が妻と娘がいると人間に知られでもしたら……

 とてもじゃないが、彼女らは安全には暮らせまい。

 その事実を知った時、リリーが生まれた日だった。

 その時は絶望したぞ。

 最愛の妻と子と暮らせないのだからな」


「……」


 魔王は拳を強く握りしめた。

 指先から血が出てきている。

 その拳には悲しみと怒りが感じてきた。


「先程は、すまんとリリーに伝えておいてくれ。

 そして、我はシオン以外とは仲良くできない。そうとも伝えておいてほしい。」


「……無理だ」


「……?」


 俺は1つ理解できなかった。

 なぜその呪いを理由に暮らせないのか。

 人間が魔王を恐れているから?

 魔王が妻子持ちだと知られたら?

 そんなのどうだっていいこと。


「あのな、お前は父親だろ」


「……」


「妻と娘がもし、危険な目に遭うことがあったら、それを守るのが父親のお前の役目だ。

 さっきから呪いがどうのいってたが、

 元々お前は守る立場」


「……」


「そして最後にいうぞ?

 お前が自ら守ろうとしなくてもな、

 リリーは強い」


「……強い? リリーが?」


「あぁ、強いとも。

 クレスタ最強と呼ばれる冒険者だし、

 氷魔法はえげつないし、

 娘に遺伝したのか、お前の未来視もある」


「クレスタ最強、氷魔法、未来視。

 ……ほんとうなのか?

 本当にそこまで成長して……」


 俺は最後。

 ほんとの最後に、とっておきの台詞を吐いた。


「リリーは俺を倒したぜ!」


「……! お前をか!?」


 ま、実際は2対1だし、

 俺は本気を出せていなかった。

 けどそんなのはいい。

 彼女は俺を撃破したんだ。


「……すまなかった。我はバカだった。

 己が父親という立場なのに。

 我は、呪いに恐れていた。

 だがそれは我が対処する運命。

 我の家族だ。我が守ってみせる」


 魔王の瞳に光が宿った。

 俺は今、わかった。

 今まで見てきた魔王は少し闇を抱えてた。

 それがやっと解放されたんだ。


「ははっ! 最初からそうしとけよじじい!

 念のため俺がなんか魔法作ろうか?

 最強の防御魔法とか?」


「いや、いい。シオンには頼れないことだ。

 これは我の問題だからな!」


「そっか。父親っぽく見えてきたぞ」


「はっは! 我はリリーの父親だ! シオンのではないぞ?」


 さっきまでのネガティブ思考がパッと消え、

 魔王はとても明るくなっていた。


「ん、まてよ?」


 俺は、何かを察した。


「うむ? なんだ?」


「えっと、奥さんは魔族だったよな?」


「あぁ。もちろんそうだが?」


「え、てことはリリーって……」


「魔族だな」


 は、はい?????

 リリーは魔族?

 え?ずっと人間かと思ってたよ?


「で、でも角は? 角生えてないじゃん」


「角は魔王になった者しか生えぬ」

 

「未来視も全然使えてなかったよ?」


「それはまだリリーが未熟なだけだろう。

 我が鍛えればすぐ魔族並みのものになる」


 俺は今日だけで情報が脳に入りすぎた。

 これがいわゆる、情報量が多い。というやつ。


---


 そんなこんなで、魔王城へきた理由を、魔王に話した。

 頼むと言われたのでやったります!

 アニス、その他配下供――覚悟しろ。



 3時間経過した。


 遅い、遅すぎる。

 なにやってんだあいつら。

 しょんべんチビって逃げたか?


 すると、魔王城入り口から声がした。


「アンタたち、装備付けすぎだ!

 遅れたじゃないか!!」


「す、すいやせん!!」


「魔王ってつよそうじゃないですか」


「は? アンタたち、アタシが負けるとでも?」


「ひぃぃぃぃぃ!」


 アニス御一行の登場だ。

 ちなみに俺がすることはない。

 というよりも仕掛けておいた。


「アンタら! さっさと走れ!」


 そして魔王がいると勘違いしてる場所に奴らは辿り着いた!

 そこの扉にアニス達は触れた!

 その瞬間!!


「シュワン」


「は?」


 適当に起きまくった魔法陣にまんまと引っかかりやがった!

 この魔法陣は、マリアの部屋掃除をした時に手に入れたビックリ魔法陣!


『パニック』


 これに触れたものは、2度と同じことができなくなる程の恐怖を感じることになる。

 そういう恐ろしい魔法陣。

 マリアが作りそうなものだ。


「い、いゆぁぁぁぁぁ!!」


「あ、あにす、さまぁぁぁ」


「こ、こわあいいいいいい」


「あ、あんたらぁぁぁあおちつけぁぁ」


 今、奴らは何を体験しているのだろうか。

 それは本人達にしかわからない。

 そんなことを陰で観察しつつ考えていると、マリアは1番先に逃げた。

 それに続くかのように配下も逃げてった。


「ふっ。大した奴らではないな」


「だな。魔王、あの茶髪強いと思う?」


 俺と同じく、陰で観察して楽しんでた魔王に、アニスの強さを問う。

 俺はあまりそういうのを鑑定できないが、

 魔王である彼はそれが得意だ。


「うむ。弱くはないな。シオンの話を聞くには、リリーの方が何倍も強い」


「え、そうなの? それ親バカじゃない?」


「ちがう。本当に何もかもリリーが上なのだ」


 ほう。

 アニスはあれほど自分を評価していたけど、実際はその程度なのか。

 いや、リリーが強すぎたのかな。


---


 アニス達にも、恐怖を植え付けておいたし、

 今後、魔王城には手を出すまい。


 それもわかって俺は一安心した。

 

「じゃ魔王、俺帰るな?」


「うむ。今日は色々ありがとな」


「おう! それで……わかってるな?」


「うむ。家族は我が守る。娘と妻に会うぞ! 呪いなんかには負けてたまるか」


 魔王の意気込みを感じ取り、

 俺はもう一度一安心した。


 そして、俺は寮へと帰宅する。


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