第二十ニ話「悲しみの怒り」
魔王は扉が開いたのに気づいた。
そして、俺に視線を向け、喜んだ表情になった。
次に、隣のリリーに視線を向けた。
魔王は戸惑っていた。
「シオン、彼女は一体?」
「あぁ。俺の友達だよ。色々あって魔王城にくることなったついでに紹介しようと思って」
「はじめまして! シオンの友達の……」
魔王は「ほう」という顔をし、
リリーが自分の名を名乗るのを待つ。
「リリー・アマリリスです!」
「……」
その瞬間、先程までのワクワクとしていた魔王の表情は消え去っていった。
次に見えたのは悲しい表情。
またもや、その顔は変わっていき、
突然、魔王は怒りを露わにした。
「出ていけ!!! 2度とくるな!!!」
「……え? おい、どうしたんだよ」
魔王はかつてないほどに激怒した。
けれどそれは怒りだけではなさそうな顔。
……あまりよくわからない。
リリーは「わたし、なにかしちゃったかな?」といいつつも、
俺は、偶然、魔王の機嫌が悪かった。ということにし、寮へ帰らせた。
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そして、俺は地下室に残った。
魔王は黙ったまま俯いている。
「なぁ、どうしたんだよ」
「……シオンは奴の友達なのか?」
顔をこちらに向け、微笑しつつ尋ねてきた。
「あぁ。友達だよ」
「ふっ。そうか……」
またもや黙ってしまった。
何か、隠している。
そんな気がする。
「魔王、話してくれよ? なにかあるんだろ」
「……まあそうだな。話そう」
向かいに座ってくれと言われ俺も座る。
魔王は何かを決意し、
椅子に座り直して。
俺に視線を向け、
真剣な表情で、語り出した。
「あやつはな、我の娘なのだ」
「む、娘?」
なんだか、とんでもない話になりそう。
……それでも最後まで聞くと決めた。
「うむ。前に話しただろう? あれがリリー。我の娘なのだよ」
と、とりあえず話を続けよう。
「そうだったのか……でもなんで、リリーにあんな態度をとったんだ?」
以前の、彼は娘と妻を大切に思っているようだったし、何より愛情が伝わってきた。
なのになんで、あの時、怒鳴ったのか。
「我はな、リリーも妻も愛している。
この世の誰よりも。
でもダメなのだよ。会っては……だめなのだ」
「ダメ? ど、どういうことだ」
「我は人間に恐れられているだろう?
あれは呪いなのだ。
過去に何者かによってかけられた呪い。
それは人間に憎悪されるというものだった。」
だから、魔王は悪とされているのか。
謎の嫌悪の正体は呪い……か。
なんの因果かわからんな。
俺も呪いをかけられたし……。
でも俺のはまた別。
記憶を消すという呪いだった。
解決法は記憶を残して戻すこと。
それは簡単だったからよかった。
けど、魔王の場合……厳しいな。
「てことは……」
俺はなんとなく理解した。
「そう、もし我が妻と娘がいると人間に知られでもしたら……
とてもじゃないが、彼女らは安全には暮らせまい。
その事実を知った時、リリーが生まれた日だった。
その時は絶望したぞ。
最愛の妻と子と暮らせないのだからな」
「……」
魔王は拳を強く握りしめた。
指先から血が出てきている。
その拳には悲しみと怒りが感じてきた。
「先程は、すまんとリリーに伝えておいてくれ。
そして、我はシオン以外とは仲良くできない。そうとも伝えておいてほしい。」
「……無理だ」
「……?」
俺は1つ理解できなかった。
なぜその呪いを理由に暮らせないのか。
人間が魔王を恐れているから?
魔王が妻子持ちだと知られたら?
そんなのどうだっていいこと。
「あのな、お前は父親だろ」
「……」
「妻と娘がもし、危険な目に遭うことがあったら、それを守るのが父親のお前の役目だ。
さっきから呪いがどうのいってたが、
元々お前は守る立場」
「……」
「そして最後にいうぞ?
お前が自ら守ろうとしなくてもな、
リリーは強い」
「……強い? リリーが?」
「あぁ、強いとも。
クレスタ最強と呼ばれる冒険者だし、
氷魔法はえげつないし、
娘に遺伝したのか、お前の未来視もある」
「クレスタ最強、氷魔法、未来視。
……ほんとうなのか?
本当にそこまで成長して……」
俺は最後。
ほんとの最後に、とっておきの台詞を吐いた。
「リリーは俺を倒したぜ!」
「……! お前をか!?」
ま、実際は2対1だし、
俺は本気を出せていなかった。
けどそんなのはいい。
彼女は俺を撃破したんだ。
「……すまなかった。我はバカだった。
己が父親という立場なのに。
我は、呪いに恐れていた。
だがそれは我が対処する運命。
我の家族だ。我が守ってみせる」
魔王の瞳に光が宿った。
俺は今、わかった。
今まで見てきた魔王は少し闇を抱えてた。
それがやっと解放されたんだ。
「ははっ! 最初からそうしとけよじじい!
念のため俺がなんか魔法作ろうか?
最強の防御魔法とか?」
「いや、いい。シオンには頼れないことだ。
これは我の問題だからな!」
「そっか。父親っぽく見えてきたぞ」
「はっは! 我はリリーの父親だ! シオンのではないぞ?」
さっきまでのネガティブ思考がパッと消え、
魔王はとても明るくなっていた。
「ん、まてよ?」
俺は、何かを察した。
「うむ? なんだ?」
「えっと、奥さんは魔族だったよな?」
「あぁ。もちろんそうだが?」
「え、てことはリリーって……」
「魔族だな」
は、はい?????
リリーは魔族?
え?ずっと人間かと思ってたよ?
「で、でも角は? 角生えてないじゃん」
「角は魔王になった者しか生えぬ」
「未来視も全然使えてなかったよ?」
「それはまだリリーが未熟なだけだろう。
我が鍛えればすぐ魔族並みのものになる」
俺は今日だけで情報が脳に入りすぎた。
これがいわゆる、情報量が多い。というやつ。
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そんなこんなで、魔王城へきた理由を、魔王に話した。
頼むと言われたのでやったります!
アニス、その他配下供――覚悟しろ。
3時間経過した。
遅い、遅すぎる。
なにやってんだあいつら。
しょんべんチビって逃げたか?
すると、魔王城入り口から声がした。
「アンタたち、装備付けすぎだ!
遅れたじゃないか!!」
「す、すいやせん!!」
「魔王ってつよそうじゃないですか」
「は? アンタたち、アタシが負けるとでも?」
「ひぃぃぃぃぃ!」
アニス御一行の登場だ。
ちなみに俺がすることはない。
というよりも仕掛けておいた。
「アンタら! さっさと走れ!」
そして魔王がいると勘違いしてる場所に奴らは辿り着いた!
そこの扉にアニス達は触れた!
その瞬間!!
「シュワン」
「は?」
適当に起きまくった魔法陣にまんまと引っかかりやがった!
この魔法陣は、マリアの部屋掃除をした時に手に入れたビックリ魔法陣!
『パニック』
これに触れたものは、2度と同じことができなくなる程の恐怖を感じることになる。
そういう恐ろしい魔法陣。
マリアが作りそうなものだ。
「い、いゆぁぁぁぁぁ!!」
「あ、あにす、さまぁぁぁ」
「こ、こわあいいいいいい」
「あ、あんたらぁぁぁあおちつけぁぁ」
今、奴らは何を体験しているのだろうか。
それは本人達にしかわからない。
そんなことを陰で観察しつつ考えていると、マリアは1番先に逃げた。
それに続くかのように配下も逃げてった。
「ふっ。大した奴らではないな」
「だな。魔王、あの茶髪強いと思う?」
俺と同じく、陰で観察して楽しんでた魔王に、アニスの強さを問う。
俺はあまりそういうのを鑑定できないが、
魔王である彼はそれが得意だ。
「うむ。弱くはないな。シオンの話を聞くには、リリーの方が何倍も強い」
「え、そうなの? それ親バカじゃない?」
「ちがう。本当に何もかもリリーが上なのだ」
ほう。
アニスはあれほど自分を評価していたけど、実際はその程度なのか。
いや、リリーが強すぎたのかな。
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アニス達にも、恐怖を植え付けておいたし、
今後、魔王城には手を出すまい。
それもわかって俺は一安心した。
「じゃ魔王、俺帰るな?」
「うむ。今日は色々ありがとな」
「おう! それで……わかってるな?」
「うむ。家族は我が守る。娘と妻に会うぞ! 呪いなんかには負けてたまるか」
魔王の意気込みを感じ取り、
俺はもう一度一安心した。
そして、俺は寮へと帰宅する。




