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記憶消された復讐者  作者: 納豆にはネギ
第3章 魔王の娘編
23/36

第二十一話「魔王」


 昨日の3人集。

 バルク、アイ、ライ。

 あいつらは反省していなかった。


 世界崩壊とかいうほぼ犯罪魔法を呑気に放とうとしていた。

 この件はアニスという奴が関係していそう。

 

 アニス含め4人の誰かに会ったら、

 次こそはちゃんとしよう。

 先輩として。


 まぁ最近入学してきた新参者ですが……。


 それはいいとして今日は授業日だ。

 初めての教室。初めての授業。

 いいね、学生って感じがする。


 俺は男子寮での自分の1人部屋を満喫しながら、学園へ向かう準備をした。


 顔を洗い、歯を磨き、髪を整え、制服を着る。

 そんなこんなで準備完了!


 いざ!


---


 教室はここかな?

 一応それらしき所についた。

 でもなんか、緊張する。

 教室内はなんだか賑やかだし、

 うーーーん。


 教室に入ろうかなと、ウジウジとしていると、似たような人物が隣にいる。


「い、いや、どうしよう……入ろうかなぁ……ん? 

 あれ!? シオン!!」


「お、おう……リリーおはよう」


 うん。

 その人物はリリーでした。

 こいつも同様、中に入れずにいた。


 俺はリリーがいた事により、無事。

 教室に入ることに成功した!

 ……リリー様々だ!


 そして、中には色んな人がいた。

 ここには16歳から18歳の生徒が集まってる。

 上下関係は、なんと……

 魔法の実力で決まるという。


 いや、それはいいんだけど、

 いじめとか起きないか?

 弱い人とか普通にいるだろう。

 それが心配だ。


 俺とリリーは適当な席に座った。

 友達はリリーしかいないので隣同士。

 頼りになるなぁ。ほんとこの子は。

 

 そう感心していると、遠くの席にいた、

 ある女生徒が、こちらへきて話しかけてきた。


「ねぇ、アンタ」


 アンタ呼びに驚きつつも、その女生徒に返事をした。


「な、なんですか?……えっと」


「アニス。18歳」


「……!」


 アニス。こいつがアニスか。

 

 昨日バルク達は、アニスに命令されて、あの行動をしたと思われる。……まぁ俺の推測だけど。


 なら、後輩を危険な目に遭わそうとしたのか?

 いや、そんなことをする理由は?

 ……わからない。


「アニスさん、初めまして。

 シオン・グラジオラス、17歳です」


 なんだか、アニスは怪しい気がする。

 今は媚びへつらっておくか。

 そしたら、いつか本性が見えてくるはず。


「はっ、なんだヘラヘラしやがって……まぁいい。アタシは1番強い。だからアンタはそこらへん気をつけな」


 そこらへん。と言われても、あまりわからんが、

 きっと上下関係のことだろう。

 

 アニスは前世で言うヤンキーって感じの見た目。

 ピアスバリバリで、茶髪ロング。

 目も鋭く、とても怖い印象だ。


 そして、強いのか……?

 見た目で偏見を持つのはあれだが、魔法の訓練や努力をしてるようには見えないけど。


「はい、以後気をつけますねアニス先輩」


「ふん、それでいい。……それで? シオンの隣の女。 アンタだ」


 次は、リリーの番だ。

 リリーは「え、わたし!?」というような、驚きを隠せていない表情をしている。

 そう、君だよ。つぎはきみだ!


「あ、はい? なんですか?」


「あ? さっきの話聞いてなかったのか? アタシは1番強い。だからそこらへん気をつけろ」


 このセリフ、もしかしてアニスのテンプレ?

 それはいいとして、リリー。

 ちゃんとするんだぞ!ここはな!耐えろよ?!


「え? いや、シオンの方が強いでしょ」


 馬鹿野郎!!

 思っててもいうなよ!!

 ……はぁ。


 仕方ない。

 リリーには昨日の件を話していない。

 そう、仕方ない。うん、仕方ない。


「……」


 俺は恐る恐る先輩の方を見てみる。


 ……うっわ!

 アニス怖い!めっちゃガン飛ばされてる!

 今にでも殴って……いや、魔法か。

 魔法を使ってきそう。


 

 その後、俺は、リリーが無知。

 そういうことにしておいて、なんとかアニスの怒りを制御できた。

 

 リリーは不服そうにしていたが、今度一緒にご飯食べようと言ったらご機嫌になってくれた。

 

---

 

 今は授業中。

 教壇には男の教員が立っている。


 教える立場というだけあり、

 実力は見ただけで察せるほどのものだ。

 ……アニスと同じくらい強いだろう。


「さて! 次に教えるのは魔王について」


 ……魔王についてか。

 友達が授業に出てくるのは面白い。

 けれど、きっと面白くはないことがくる。


「魔王は残虐無慈悲な化け物です。

 彼は罪なき人間を大勢殺し、結果。

 勇者ショーリが断罪しました」


 やはりそうくるか。

 皆、なぜか魔王が悪だと思い切っている。

 それは授業にも取り入れられるほどに。


 本当は人などあまり殺してない。

 そう、殺しはした。けれど罪なきではない。

 罪しかない奴だけを殺した。


 しかも、殺したくて殺してはない。

 仕方なく。

 ……彼は優しすぎるのだ。

 俺はそんな魔王が好きなんだけどね。


 あと、勇者ショーリが断罪。

 ……結構くるな。

 

 勇者ショーリは俺のこと。

 魔王を殺そうとしにくる人間が大勢いたので、俺が魔王を殺したことにしたのだ。


 だから俺が最低な魔王を断罪した。

 というのを聞かされるのは結構心にくる。


 そんなことを思っていると、アニスが声を出した。


「せんせー、魔王は、ほんとに死んだんすか」


 その問いに、アニスの近くにいる配下のような生徒達も驚き、先生も驚いている様子。


「な、なんですか!」


「いや、だって〜アタシより強い人なんかいないっすよ〜」


「どういうことですか! アニスさん!」


「だ〜か〜ら、勇者ショーリはアタシより弱いって!  そんな奴が魔王殺せるわけないっしょ」


 彼女は自分が最強だと思い上がっている。

 そして、皆はショーリが最強だと認識している。

 そんな状況がアニスにとって許せないのだろう。


「魔王は死にました! 証拠に、クレスタという街のギルドには魔王の角がありますよ!」


「はぁ〜? そんなのたまたま切れたとかっしょ」


 あっ、確かにそう思えるかもしれない。

 俺はミスをしたのか?

 あの時、魔王の角をギルドに置いた。

 『魔王は殺した。これが証拠だ』的な内容の手紙と共に。


 それが失敗したのかな。

 角だけでは証拠になりきらないのかな。


 すると、隣のリリーが俺に話しかけた。


「シオン? 大丈夫? 変な顔になってるよ」


 いや、変な顔はしてない。

 ただ、失敗したかも、という後悔の顔をしてる。

 え?そういうつもりだけど、俺、変な顔してる!?


「い、いや。ちょっとね」


「あ、そっか! お腹痛いの? 治癒魔術かけようか?」


 ちがーう。

 腹痛を耐えてるわけではない!

 あとそれなら自分で治癒かけてるだろうが。


「いやいや。アニスの言葉が気になって」


「あーそういうこと? ショーリがどうとか」


 そういえば、リリーはショーリを尊敬してるらしい。

 記憶がない俺の時、そんな話をしてきた。


 ごめんリリー。それ、俺だ。

 理想を壊してしまっている気分だ。

 

 ごめんなさい!と、心で謝っていると、

 またもや、アニスが口を開いた。


「アンタ達! 魔王城へいくぞ!」


「はい! アニス様!!」


「喜んで!!」

 

 アニスのとんでも発言に、

 配下が賛同してしまった。


「ちょ、ちょっと! アニスさん! それは危険です! 教師として認められない!」


 先生は必死に止めようとしている。

 それ以外の生徒達も、それはダメだろうという顔だ。


 1番、やめて欲しいと思ってるのは俺。

 アニス含め、配下は10人はいる。

 ということは魔王城に10人で攻めるということ。


 魔王は余裕でこいつらを倒せる。

 しかし、倒しはしない。

 ……とても迷惑極まりない。


---


 授業はなんとか終わった。

 そしてアニスは止まらなかった。

 

 今夜、攻めるということになってしまった。

 ほんとにどうしようか。

 魔王は地下室にいるが、奴らは魔王城を破壊するほどの気合いを感じる。


 地下から登り、自分の家がぶち壊されていることを知ったら、流石に魔王も悲しむ。


「よし!」


 陰ながら、アニス達を止めよう。

 こっそり攻撃して、追い出そう。

 

 今はお昼。

 決行までは数時間ある。

 今のうちに魔王に知らせ、城の隅に隠れとこ。


 そう思い、リリーには行ってくると伝えた。

 すると予想外な返事が来た。


「私もいくね! 魔王城いきたいし!」


「……ん、ほんとに?」


「うん! シオンが行くならね!」


 うーん、正直断る理由はない。

 なんなら魔王に会わせたい。

 きっと2人は仲良くなれる。

 

 俺と魔王が仲良くなれたんだ。

 決めた!リリーも連れて行こう!


 

 この前、超加速移動魔法を習得したリリーと共に、魔王城へ向かった。


 超加速移動魔法。

 名の通り、とても、早く、移動。

 

 けれど、名前だけでは判断できない能力がある。

 それは空中で移動できるということ。


 ……まぁ、空を飛んで早く移動。

 そういう魔法なのだ。

 人が、上を向いたら鳥が飛んでると勘違いされるだろう。

 

 実際は、俺とリリーなのだけど。

 そして、飛びながらリリーにはあることを言う。


「なぁ、リリーは魔王のことどう思う?」


 彼女は勇者ショーリに憧れている。

 ということは、魔王を良く思っていないのかもしれない。


「んー。なんとも思ってないかな」


「……え?」


 人間は魔王を恐れるもの。

 実際に危害を加えられてないのにだ。

 それでもリリーは憎んでもいないらしい。

 ……あまりよくわからない。


「えっと……憎くない?」


「え、うん。別に何もされてないし」


「でも勇者ショーリに憧れて……」


「ショーリに憧れているというか、かっこいいから憧れてるね!

 私はどっちも都市伝説だと思ってるよ!

 魔王が悪さをしたのも、ショーリが倒したのも、噂としか思ってないんだ!

 そんな噂に私は憧れた!」


 ……リリーは最初からショーリと魔王の件は噂としか思っておらず、

 ただ、そのかっこいい話を知り、憧れた。

 リリーはそう言った。


 なんか、自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。

 そうだ、こいつも俺の友達なんだ。

 優しくて面白くていい奴。

 俺の周りはそういう集まりなんだ。


「よし! リリーに魔王を会わせよう!」


「え! 生きてるの?!」


「おう、生きてるぞ! 魔王は俺の友達なんだ!」


「すご!! 私も会いたい!!」


「もちろんだ! あと勇者ショーリは俺だぞ!」


 リリーは「え!?」と驚き、

 俺はそれに笑いながら、魔王との出会い、勇者ショーリという存在の真実を話した。


 そんなことがあったんだ。とリリーは言いつつ、「シオンに憧れてたのか」と笑っていた。


 そして、魔王城が見えてきた。


---

 

 とても大きく、漆黒のお城。

 アイク達の城の真逆のようだ。


 そして今、そこに到着した。

 リリーは目を輝かせていた。

 

「すごーい! ミリアの城よりかっこいい!」

 

「ははっ! それはそうかもな」


 最近分かってきたこと。

 リリーはかっこいいというのが好きらしい。

 未来視を隠していたのも、いざという時に使うのが、かっこいいからという理由だったし。


「それで、アニスが来るのは1時間後くらい?」


「そうだな……よし、魔王に会うか?」


「うん! 友達になってやる!!」


 その理由も、魔王と友達になるのは、なんだかかっこいからだそう。

 ほんとにリリーはおもしろい子だ。


 そして、魔王城の中をリリーに案内しながら、彼がいる地下への階段にたどり着いた。

 

「ここだぞ、それじゃ降りるか」


「うん! 魔王かぁどんな人だろ」


「はは、イケメンだぞ」


 歳は250歳だけど、

 魔族だから見た目は、まだまだ若々しい。

 国王に並ぶイケメンさだ。


 俺達は地下の階段を降りた。

 魔王はリリーにどう思うだろう。

 リリーは魔王にどう思うだろう。

 友達と友達の遭遇!


 2人はどういう会話をするのかな?

 そういう楽しみが増えつつ、階段を一個一個降りる。


「ここ?」


「そうだぞ」


 地下室の扉についた。

 そして、扉をリリーに開かせた。


 魔王は俺たちに気付いた。



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