第二十一話「魔王」
昨日の3人集。
バルク、アイ、ライ。
あいつらは反省していなかった。
世界崩壊とかいうほぼ犯罪魔法を呑気に放とうとしていた。
この件はアニスという奴が関係していそう。
アニス含め4人の誰かに会ったら、
次こそはちゃんとしよう。
先輩として。
まぁ最近入学してきた新参者ですが……。
それはいいとして今日は授業日だ。
初めての教室。初めての授業。
いいね、学生って感じがする。
俺は男子寮での自分の1人部屋を満喫しながら、学園へ向かう準備をした。
顔を洗い、歯を磨き、髪を整え、制服を着る。
そんなこんなで準備完了!
いざ!
---
教室はここかな?
一応それらしき所についた。
でもなんか、緊張する。
教室内はなんだか賑やかだし、
うーーーん。
教室に入ろうかなと、ウジウジとしていると、似たような人物が隣にいる。
「い、いや、どうしよう……入ろうかなぁ……ん?
あれ!? シオン!!」
「お、おう……リリーおはよう」
うん。
その人物はリリーでした。
こいつも同様、中に入れずにいた。
俺はリリーがいた事により、無事。
教室に入ることに成功した!
……リリー様々だ!
そして、中には色んな人がいた。
ここには16歳から18歳の生徒が集まってる。
上下関係は、なんと……
魔法の実力で決まるという。
いや、それはいいんだけど、
いじめとか起きないか?
弱い人とか普通にいるだろう。
それが心配だ。
俺とリリーは適当な席に座った。
友達はリリーしかいないので隣同士。
頼りになるなぁ。ほんとこの子は。
そう感心していると、遠くの席にいた、
ある女生徒が、こちらへきて話しかけてきた。
「ねぇ、アンタ」
アンタ呼びに驚きつつも、その女生徒に返事をした。
「な、なんですか?……えっと」
「アニス。18歳」
「……!」
アニス。こいつがアニスか。
昨日バルク達は、アニスに命令されて、あの行動をしたと思われる。……まぁ俺の推測だけど。
なら、後輩を危険な目に遭わそうとしたのか?
いや、そんなことをする理由は?
……わからない。
「アニスさん、初めまして。
シオン・グラジオラス、17歳です」
なんだか、アニスは怪しい気がする。
今は媚びへつらっておくか。
そしたら、いつか本性が見えてくるはず。
「はっ、なんだヘラヘラしやがって……まぁいい。アタシは1番強い。だからアンタはそこらへん気をつけな」
そこらへん。と言われても、あまりわからんが、
きっと上下関係のことだろう。
アニスは前世で言うヤンキーって感じの見た目。
ピアスバリバリで、茶髪ロング。
目も鋭く、とても怖い印象だ。
そして、強いのか……?
見た目で偏見を持つのはあれだが、魔法の訓練や努力をしてるようには見えないけど。
「はい、以後気をつけますねアニス先輩」
「ふん、それでいい。……それで? シオンの隣の女。 アンタだ」
次は、リリーの番だ。
リリーは「え、わたし!?」というような、驚きを隠せていない表情をしている。
そう、君だよ。つぎはきみだ!
「あ、はい? なんですか?」
「あ? さっきの話聞いてなかったのか? アタシは1番強い。だからそこらへん気をつけろ」
このセリフ、もしかしてアニスのテンプレ?
それはいいとして、リリー。
ちゃんとするんだぞ!ここはな!耐えろよ?!
「え? いや、シオンの方が強いでしょ」
馬鹿野郎!!
思っててもいうなよ!!
……はぁ。
仕方ない。
リリーには昨日の件を話していない。
そう、仕方ない。うん、仕方ない。
「……」
俺は恐る恐る先輩の方を見てみる。
……うっわ!
アニス怖い!めっちゃガン飛ばされてる!
今にでも殴って……いや、魔法か。
魔法を使ってきそう。
その後、俺は、リリーが無知。
そういうことにしておいて、なんとかアニスの怒りを制御できた。
リリーは不服そうにしていたが、今度一緒にご飯食べようと言ったらご機嫌になってくれた。
---
今は授業中。
教壇には男の教員が立っている。
教える立場というだけあり、
実力は見ただけで察せるほどのものだ。
……アニスと同じくらい強いだろう。
「さて! 次に教えるのは魔王について」
……魔王についてか。
友達が授業に出てくるのは面白い。
けれど、きっと面白くはないことがくる。
「魔王は残虐無慈悲な化け物です。
彼は罪なき人間を大勢殺し、結果。
勇者ショーリが断罪しました」
やはりそうくるか。
皆、なぜか魔王が悪だと思い切っている。
それは授業にも取り入れられるほどに。
本当は人などあまり殺してない。
そう、殺しはした。けれど罪なきではない。
罪しかない奴だけを殺した。
しかも、殺したくて殺してはない。
仕方なく。
……彼は優しすぎるのだ。
俺はそんな魔王が好きなんだけどね。
あと、勇者ショーリが断罪。
……結構くるな。
勇者ショーリは俺のこと。
魔王を殺そうとしにくる人間が大勢いたので、俺が魔王を殺したことにしたのだ。
だから俺が最低な魔王を断罪した。
というのを聞かされるのは結構心にくる。
そんなことを思っていると、アニスが声を出した。
「せんせー、魔王は、ほんとに死んだんすか」
その問いに、アニスの近くにいる配下のような生徒達も驚き、先生も驚いている様子。
「な、なんですか!」
「いや、だって〜アタシより強い人なんかいないっすよ〜」
「どういうことですか! アニスさん!」
「だ〜か〜ら、勇者ショーリはアタシより弱いって! そんな奴が魔王殺せるわけないっしょ」
彼女は自分が最強だと思い上がっている。
そして、皆はショーリが最強だと認識している。
そんな状況がアニスにとって許せないのだろう。
「魔王は死にました! 証拠に、クレスタという街のギルドには魔王の角がありますよ!」
「はぁ〜? そんなのたまたま切れたとかっしょ」
あっ、確かにそう思えるかもしれない。
俺はミスをしたのか?
あの時、魔王の角をギルドに置いた。
『魔王は殺した。これが証拠だ』的な内容の手紙と共に。
それが失敗したのかな。
角だけでは証拠になりきらないのかな。
すると、隣のリリーが俺に話しかけた。
「シオン? 大丈夫? 変な顔になってるよ」
いや、変な顔はしてない。
ただ、失敗したかも、という後悔の顔をしてる。
え?そういうつもりだけど、俺、変な顔してる!?
「い、いや。ちょっとね」
「あ、そっか! お腹痛いの? 治癒魔術かけようか?」
ちがーう。
腹痛を耐えてるわけではない!
あとそれなら自分で治癒かけてるだろうが。
「いやいや。アニスの言葉が気になって」
「あーそういうこと? ショーリがどうとか」
そういえば、リリーはショーリを尊敬してるらしい。
記憶がない俺の時、そんな話をしてきた。
ごめんリリー。それ、俺だ。
理想を壊してしまっている気分だ。
ごめんなさい!と、心で謝っていると、
またもや、アニスが口を開いた。
「アンタ達! 魔王城へいくぞ!」
「はい! アニス様!!」
「喜んで!!」
アニスのとんでも発言に、
配下が賛同してしまった。
「ちょ、ちょっと! アニスさん! それは危険です! 教師として認められない!」
先生は必死に止めようとしている。
それ以外の生徒達も、それはダメだろうという顔だ。
1番、やめて欲しいと思ってるのは俺。
アニス含め、配下は10人はいる。
ということは魔王城に10人で攻めるということ。
魔王は余裕でこいつらを倒せる。
しかし、倒しはしない。
……とても迷惑極まりない。
---
授業はなんとか終わった。
そしてアニスは止まらなかった。
今夜、攻めるということになってしまった。
ほんとにどうしようか。
魔王は地下室にいるが、奴らは魔王城を破壊するほどの気合いを感じる。
地下から登り、自分の家がぶち壊されていることを知ったら、流石に魔王も悲しむ。
「よし!」
陰ながら、アニス達を止めよう。
こっそり攻撃して、追い出そう。
今はお昼。
決行までは数時間ある。
今のうちに魔王に知らせ、城の隅に隠れとこ。
そう思い、リリーには行ってくると伝えた。
すると予想外な返事が来た。
「私もいくね! 魔王城いきたいし!」
「……ん、ほんとに?」
「うん! シオンが行くならね!」
うーん、正直断る理由はない。
なんなら魔王に会わせたい。
きっと2人は仲良くなれる。
俺と魔王が仲良くなれたんだ。
決めた!リリーも連れて行こう!
この前、超加速移動魔法を習得したリリーと共に、魔王城へ向かった。
超加速移動魔法。
名の通り、とても、早く、移動。
けれど、名前だけでは判断できない能力がある。
それは空中で移動できるということ。
……まぁ、空を飛んで早く移動。
そういう魔法なのだ。
人が、上を向いたら鳥が飛んでると勘違いされるだろう。
実際は、俺とリリーなのだけど。
そして、飛びながらリリーにはあることを言う。
「なぁ、リリーは魔王のことどう思う?」
彼女は勇者ショーリに憧れている。
ということは、魔王を良く思っていないのかもしれない。
「んー。なんとも思ってないかな」
「……え?」
人間は魔王を恐れるもの。
実際に危害を加えられてないのにだ。
それでもリリーは憎んでもいないらしい。
……あまりよくわからない。
「えっと……憎くない?」
「え、うん。別に何もされてないし」
「でも勇者ショーリに憧れて……」
「ショーリに憧れているというか、かっこいいから憧れてるね!
私はどっちも都市伝説だと思ってるよ!
魔王が悪さをしたのも、ショーリが倒したのも、噂としか思ってないんだ!
そんな噂に私は憧れた!」
……リリーは最初からショーリと魔王の件は噂としか思っておらず、
ただ、そのかっこいい話を知り、憧れた。
リリーはそう言った。
なんか、自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。
そうだ、こいつも俺の友達なんだ。
優しくて面白くていい奴。
俺の周りはそういう集まりなんだ。
「よし! リリーに魔王を会わせよう!」
「え! 生きてるの?!」
「おう、生きてるぞ! 魔王は俺の友達なんだ!」
「すご!! 私も会いたい!!」
「もちろんだ! あと勇者ショーリは俺だぞ!」
リリーは「え!?」と驚き、
俺はそれに笑いながら、魔王との出会い、勇者ショーリという存在の真実を話した。
そんなことがあったんだ。とリリーは言いつつ、「シオンに憧れてたのか」と笑っていた。
そして、魔王城が見えてきた。
---
とても大きく、漆黒のお城。
アイク達の城の真逆のようだ。
そして今、そこに到着した。
リリーは目を輝かせていた。
「すごーい! ミリアの城よりかっこいい!」
「ははっ! それはそうかもな」
最近分かってきたこと。
リリーはかっこいいというのが好きらしい。
未来視を隠していたのも、いざという時に使うのが、かっこいいからという理由だったし。
「それで、アニスが来るのは1時間後くらい?」
「そうだな……よし、魔王に会うか?」
「うん! 友達になってやる!!」
その理由も、魔王と友達になるのは、なんだかかっこいからだそう。
ほんとにリリーはおもしろい子だ。
そして、魔王城の中をリリーに案内しながら、彼がいる地下への階段にたどり着いた。
「ここだぞ、それじゃ降りるか」
「うん! 魔王かぁどんな人だろ」
「はは、イケメンだぞ」
歳は250歳だけど、
魔族だから見た目は、まだまだ若々しい。
国王に並ぶイケメンさだ。
俺達は地下の階段を降りた。
魔王はリリーにどう思うだろう。
リリーは魔王にどう思うだろう。
友達と友達の遭遇!
2人はどういう会話をするのかな?
そういう楽しみが増えつつ、階段を一個一個降りる。
「ここ?」
「そうだぞ」
地下室の扉についた。
そして、扉をリリーに開かせた。
魔王は俺たちに気付いた。




