第二十話「掃除掃除掃除」
マリアの研究室を掃除しだして10分が経過した。
俺は必死にぜぇぜぇとやっているのに、
この子、いやこいつはなに一つしない。
なんなら、愉快そうに見てくるだけ。
それでも俺は苦じゃなかった。
なぜなら落ちているゴミが面白かったからだ。
もちろんただのゴミもあったが、
中には魔法陣の途中式、開発魔法の途中式、謎のアイテムや、謎の武器など。
いろいろな物が落ちてたのだ。
「これもらっていい?」と聞くと、勝手にしろと言ってくれたのでたくさん貰った。
しめしめ、途中式まで書いてくれている。
俺がこっそり完成させてやるぜ!!
そう思いつつも掃除を着実に進めていった。
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「ふぅ」
終了だ。
なんということでしょう。
足場を探す方が難しかったこの部屋が、
床もピカピカ、物一つない!
いや、それは少し盛ったけどね。
俺はタオルで汗を拭き、達成感に浸っていたら、サボりマリアちゃんが話しかけてきた。
「はっは! よくやったぞ、でかしたでかした! 何か褒美をやろうか?」
「褒美?……うーんそうだなあ」
別に褒美欲しさにやったわけではない。
なので特に思い浮かばないが……。
あ!そうだ。
魔王の娘について知りたいな。
彼はあまり探らなくていいって言いそうだけど。
「魔王の娘ってどこにいますかね?」
「うん、魔王か。そして娘とな」
……!しまった。
魔王は倒されたことになっているし、
娘なんて言ってしまったら……!!!
「おもしろいな。よかろう!! 占ってやる! 魔王の娘がどこにいるか!」
「あ、あれ?」
なんだろう。
魔王が生きてるの知ってるのかな。
あまり驚かれなかった。
「あの、魔王が生きてるってことは……」
「うん! 知ってるぞ! 昔、試しに占ったら魔王が普通に生きてたから驚いたぞ!」
なんだそれ……。
マリアに隠し事は不可能じゃないか?
怖い、ちょっと怖いぞ。
そして、マリアは娘さんを占ってくれた。
……なんとその結果。
娘さんは近くにいる。
というのが見えたらしい。
でも近くって?王国内?
それとも学園内?まぁそれを知れてよかった。
俺が知りたかったのは、正直まだ生きているのか。
そのことについて。
魔王が会えていないと言っていたあの時、
とても悲しそうだった。
生きているかどうかも知らないようだった。
だから今度教えてやろう!
俺の近くで生きているって!
「だが、不思議だな」
突然マリアがそう言った。
「なにが?」
「いやな、ウチはかなり見える。詳細な場所も、その者の顔も名前も。
だが、今回は場所だけしかわからなかった」
確かに。
前に、アペプ一族を占ってもらった時、
結構具体的なものを教えてくれていた。
「魔王の娘、生きてはいるよな?」
「うん! 生きてるな! 場所がわかるし!」
安心した。
それが分かれば、それ以上のことは知れなくてもいい。
俺はマリアに礼をし、その部屋から出た。
ふぅ。なんかどっと疲れが今きた。
トボトボと学園内をうろちょろする。
すると、とってもでかい建物があった。
近くに行き、その建物の名を読む。
それは『闘技場』と書かれていた。
この学園は、たまにトーナメントで戦うようなイベント?試合?があるらしいし、
単純に模擬戦もできるっぽいな。
うんうん。
なんかすごくいい!俺もしたい!
自分で言うのもなんだが、俺は強い!
かなり強い。
復讐のために、人の何百倍も努力した。
……今となっては行き過ぎた力のようにも感じる時がある。
けれど、いつかきっと役に立つとそう思いたい。
「オラァァ!」
ん?闘技場から咆哮のようなのが聞こえた。
魔物ではない、男の声だ。
だれか模擬戦でもしてるのかな。
俺は中の様子が気になり、闘技場へ入ってみた。
そこにいたのは男1人と女2人。
1対2の魔法勝負って感じのことをしている。
なぜ1対1じゃないのか。それはみてすぐにわかった。
実力差を考えてのことだろう。
ガタイがいい男の人。
彼は魔法が得意みたいだ。
しかもその体格。万が一があっても力で勝てそう。
そして女の人2人。
彼女らは魔法が普通くらい。
だから2人がかりなのだろう。
「……」
それにしてもいい試合をしている。
男は目がいい。
女2人の連携プレイにも対応できている。
「いくわよ! ライ!」
「あぁ! いくよ! アイ!」
アイとライという名前らしい。
そして、ライはアイの背後で魔力を貯めている。
その間、アイは男の相手をしている。
……この魔力、この魔法は。
ダメだな。止めに行こう。
俺はライの異変に気付き、すぐさま止めに入った。
「やめろ!」
間一髪というところで防御魔法を発動し、大事には至らなかった。
そう、大事には……。
「なっ!!!」
「えっ!?」
ん?まだ遠くにいるライは魔力を貯めている!?
……やばい止めないと!
「発動!! 世界崩壊!!」
「あぁ!! くそっ、シゴロス防御!」
男とアイにシゴロス防御をかけた。
そして、ライが貯めていた魔力にも。
……ライというあの女め。
何をやっているんだ本当に。
俺は、先程からなにを焦っているのか?
それは彼女が放った魔法。世界崩壊。
この魔法は名前こそチートみたいだが。
そこまで威力はない。
けれど、魔力をどれほど貯めるかによる。
彼女の魔力は案外多く、最大火力で放ってしまったのだ。
そして、俺が防げなかった場合。
この闘技場は爆発し、俺は3人とも見殺しにしてしまうところだったのだ。
ていうか、世界崩壊は、戦争用に作られたとされる魔法。
学生が使っていいはずがない。
授業でも習うはず。
俺は3人を真ん中に呼び出した。
そう、お説教タイムだ。
「君たち、何歳か知らないけどさ、あれはダメでしょう」
「バルクっていう名前っす。俺たち16歳っす。……ほんとすんませんでした」
「ライがご迷惑をおかけしました」
「……なっ!? アイが使えって指示したんでしょ!?」
はぁ……年下か。
いや、でも一つ年下でこの子供っぽさ。
なんなんだこいつら。
「ほんとに反省してるの? 3人とも」
「……」
「は、はい! アイがすみませんでした」
「は、はい! ライがすみませんでした」
説教してもあれだし、反省してるようなので、すぐに帰した。
しかし、俺が闘技場を出ようとしたその瞬間。
あの3人の意味不明な発言が、遠くから聞こえてしまった。
「あーあ。惜しかったなお前ら」
「そうだね、アニスさんに言われてたのに」
「まぁまぁ。次はあの先輩がいないところで使おう! 世界崩壊を!」
……聞き間違いかな?
いやそんなはずはない。はっきり聞こえた。
さっきあれほどいったのに、まだ懲りていないのか?
ていうかアニスってだれだ。
俺はあの馬鹿どもを追いかけようとした。
ところがすでに姿を消していた。
バルク、アイ、ライ。
次見つけた時は牢屋に入れるか。
そのレベルの犯罪なのだ。
あんな魔法作られるのがおかしかった。
……いや、1つだけ、俺も作ったな。
憎しみと復讐心だけで作ったあれ。
アルゴス。
もう2度と使わないだろう。
まぁ……あれは人殺しにしか使えない魔法だから、まだましか。
そんなことを考えつつも、俺は後悔しながら、
魔法学園の男子寮へ帰宅した。




