第十六話「復讐」
あの時のことは今でも鮮明に覚えている。
目の前で母親、父親、弟が殺されていく場面。
ガゼルに母を殺され、
ビズリスに父親を殺され、
ロバルタに弟が殺された。
俺は無力だった。
ただそれを眺めることしかできず、
泣いていた。
そして、最後に
家族はそれぞれ俺にこう言った。
『シ……オン。にげ……て!』
『シオ……ン! にげるん……だ! はやく!』
『に……に』
両親は『にげろ』と言ってくれた。
弟はあまり喋れなかったが、同じようなことを言ってくれていたような気がした。
結局、俺は逃げれなかった。
しかも生かされた。
理由は『おもしろいから』それだけ。
その日から、復讐のことで頭がいっぱいになった。
家族に与えられた苦しみの倍を、
奴らに味合わせてやりたい。
そして、アペプ一族の今まで殺してきた人たちの分も、俺が……やってやる。
過去のことを思い出し、心を憎悪で埋めた。
なぜなら、今から3人殺すから。
邪魔な感情はいらない。
――ただ、殺すだけ。
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今俺たちは、ある場所に着いた。
それは誰も住めないような村。
いくつか家のようなものは建ってるが、
魔物の巨大な足跡のようなもので踏み潰されているのがほとんど。
……でも、一箇所だけ少し綺麗なのが残っている。
4人ほど入ると思われるデカさの家。
ーーあそこか。
「リリー、ギルゾック。ここでまってて」
「シオン?」
「大丈夫か?」
2人が俺の顔を覗き込んできた。
「……」
「……」
おそらく、今の俺は凄く怖い顔をしているんだろうなあ。
それこそ子供が見たら大号泣するほどの。
リリー達は「わかった」と言って、
村に入る手前で待ってくれることになった。
そして俺は村へ……ロット村へ入る。
「少し遠いな」
村はかなり広い。
俺が向かってる建物はかなり奥にある。
超加速魔法を使うと秒で辿り着く。
……けれど、なぜかゆっくりと歩くことにした。
その一歩一歩を、誰かが見ている気がしたから。
誰だろうな。
アペプ一族に恨みを持った幽霊かな。
そんなことを考えつつ、ただ歩いた。
すぐそこまで、きた。
「……」
中で話し声が聞こえてくる。
とても不愉快。
少し前にも聞いた声だ。
あの時は命乞いしてたっけな。
ふっ。だれがしてんだって話だけど。
俺は扉の前まできた。
奴らは気づいておらず、ぺちゃくちゃと談笑している。とても不愉快だ。
1番火力のある魔法を使えば、一気に殺せるけれど、それはつまんない。
ので、扉をノックしてみた。
「コンコン」
「あ?」
「なに?」
「ウム?」
出てこないのでこちらから開ける。
もちろん、蹴り飛ばして豪快にだ。
「バゴーーン!」
「な!?」
「え!? て……おまえは!!」
「ナヌ!? あの時のやつ!?」
俺の姿を確認して、こいつらは察したのだろう。
2度目の復讐に来たのだと。
「ん?……あいつ」
部屋の隅を見てみると、記憶消去の呪いをかけてきた例の女がいた。
けど、顔面血だらけで倒れ込んでる。
「おい、あれはなんだ? 仲間割れでもしたか?」
質問した。
誰に。というわけではないが、男3人に聞いた。
「ん? どうした? 喋れよゴミ野郎共」
あぁ。
奴らは顔面蒼白。
手足も震えている。
ビビってるんだろうな。
勝てるはずもない奴が、
呪いも効かない奴が、
この場に来てしまったと察せているから。
「な、なんで居場所がわかったぁ!?」
ガゼル。
声が震えすぎていて、とても滑稽だ。
「なんでだろうな。それはどうでもいいことだろ」
なんか、がっかり。
襲いかかってくると予想していたけれど、
固まっている。
「う、うおーー!!!!」
「やー!!!!!!」
「ウオー!!!!!」
とか考えてたら、襲いかかってきた。
ガゼルは鞘から剣を取り出し、
ビズリスは魔法を、
ロバルタは机に置いてた弓を、
3人は俺に向かって攻撃しようとした。
「拘束魔法・発動」
「……?」
「へ?」
「ナ……?」
奴らは動きが止まった。
いや、俺が止めた。
必死に踠いているが、動けるはずがない。
「魔王をも拘束できる魔法で、お前ら如きカスが抵抗できるとでも思っているのか?」
「ま……!?」
「魔王!?」
「ナヌ……?」
あー。
ロバルタの口調が腹立つ。
きもいんだよ。くそじじいが。
「切断魔法」
「ピシャ」
「……ナヌ?」
ロバルタ付近の地面が赤に染まった。
そして、立てずに転けてしまっている。
なぜ、立ちあがれないか?それは簡単。
「な!? ロバルタ!! おまえ……」
「あ、足がー!!!」
2人は寝転がっているロバルタの足を確認した。
両足が切れていたのを確認して絶句している。
流石に殺してはない。
足だけ切り落とした。スライドという魔法で。
みんなも練習したら使える。
「ナ! あ……しがぁ!!!」
本人も状況が理解できたらしい。
このままだと出血過多で死亡してしまう。
それはダメだ。
ちゃんと俺の手で
――殺さないと。
「ロバルタ」
「は、はい!」
俺の声に反応した。
いつのまにかキモイ口調が直っている。
「生きたいか?」
「生きたい!!! たすけてください!!!」
ロバルタは涙を流している。
助けを求めている。
生きたがっている。
「わかったよ」
「……! ありがとうございます!」
俺はにっこり笑みを浮かべ。
魔法をかけてあげた。
『復讐』
「ひぇ? な、なにこれ、見える。
……人? いや、こいつ……こいつらは!」
よし。成功したかな。
この魔法は初めて使用するから不安だった。
「いや、やめろ! やめて……ぎゃゃゃ!!」
ロバルタは段々と、精神をおかしくしていっている。
悲鳴をあげ、手で自分の顔を掻きまくりだ。
「お、おい! ロバルタに何が起きた?!
助けたんじゃないのか?!」
「なに……? ロバルタのこんな所見たことないよ!」
こいつらに教えるわけがない。
今のあいつに何が見えているのか。
それは……。
苦しみだ。
奴が殺した人の味わった苦痛。
まぁあいつが今まで、何人殺してきたのかは知らないが、
例えば10人、それぞれ違う殺し方をしたとしよう。
その殺し方と全く同じ痛み、苦しみが、全て再現され、自分に返ってくる。
そんな魔法。
そして俺はこの日のために開発したのだ。
復讐のための魔法、そんな感じ。
「……」
あ、ロバルタ死んだ。
まぁそうなるよね。
痛いし苦しいもん。当たり前。
次はこの2人、どっちにしようか。
俺は悩み、人差し指を出した。
「どーれにしようかな。天の神様の……」
「お、おい! まて、こいつにしろ!
ビズリスにやれ! 俺はやめてくれ!」
「は!? なにいってんの!?
ガゼルがやれよ!!!!!」
みっともない。
仲間じゃないのか?……まあどうでもいい。
「い・う・と・お・り!」
指の先にはビズリスがいた。
「……!? ま、まって!!!
助けて、おねがい!!」
命乞いをするビズリス。
そしてその隣で勝ち誇った顔をしているガゼル。
何を勘違いしているのか知らないが、
この後、お前の番なのは確定だぞ。
そう思いつつも、ビズリスにも魔法をかけた。
『アルゴス』
「い、いやぁぁダァ!! た、たすけてぇ……!!! しにだぐなぃぃ!!」
数分経過した。
ビズリス死亡。
まぁ耐えたほうではある。
そして残るは1人。ガゼルだ。
嬉しそうな笑みを浮かべている。
そんなに楽しみなのかな?
死ぬのが。
「なぁ! 拘束早く解いてくれよ!」
「ん? なんで?」
「……は? いやいや」
いやいや。ってなんだよ。
普通に頭悪すぎるだろ。
「ガゼル。お前も殺すぞ? 当たり前だろ」
「……あ? な……んだと?」
が、こいつはこの手で、
殺してやりたい。
『ティシス! 来い!』
「シュワン」
空間魔法で魔剣ティシスを取り出した。
ティシスを握り、剣先をガゼルに向けた。
「ひっ!!……お前、人殺しだぞ!!! 俺らと同じだ! お前もゴミ野郎だぞ!!」
確かに。
人を殺すということでは同じだ。
そして、仮に復讐だとしても、
今の俺は躊躇いもなく人を殺している。
きっとクズなんだろう。
でも。
ここで、ガゼルを殺すことには変わりない。
こいつに手を差し伸べる優しさもない。
そんなに俺はかっこよくない。
俺は漫画の主人公ではない。
――人を殺せる。
そう思い、剣でガゼルの首を切ろうと。
瞬間、声がした。
「な……なに、何この状況」
先程まで気絶していたと思われる女が、
アペプ一族4人目の女が、目を覚ました。




