第十一話「王女ミリア」
「シュワン」
俺はすぐ、馬車に防御結界を貼った。
これで安全。
そして……。
「な、なんだこれ!?」
「馬車の周りにバリアみたいなのがあるぞ!」
こいつら。盗賊を倒さないといけない。
人数は10人くらいだね。
「おい!」
俺は盗賊に話しかけた。
「あ?! なんだてめぇ!!」
「兄貴、こいつの馬車も高級です!」
「お、本当じゃねえか! 俺は運がいいなぁ!!!」
まあなんともテンプレートな盗賊だろう。
これは流石にカッコが悪い奴らだ。
「痛い目に遭いたくなければ、今すぐ牢屋に行け! 自首しろ! そして普通に働いて稼げ!」
盗賊なんて、珍しくはない。ワンサカいる。
金を取るだけなら罪も大して重くない。
なので自首すれば数年で出てこられる。
もう諦めて自首してほしい。
「んだとぉ!! お前ら、やれ!!」
結局、下っ端みたいなのが魔法を打ってきた。これはもうダメだね。
「重力魔法!!」
盗賊10人は立っていたが、
俺の言葉と共に、地面にへばりついた。
「な!!!」
「ぐぺぇあ!!」
「ぐほぉ!!」
俺は重力魔法の『ヴァリティタ』を使用した。
最大威力で使用すると、
グロテスクになるのでやめておいた。
せいぜい、息がしづらい程度。
そのくらいにした。
「て、てんめ、なにしやがっ……たあ!」
ものすごい重力に押しつぶされ、地面に伏している状態で、兄貴とか呼ばれてたやつが喋っている。
「重力魔法の『ヴァリティタ』だよ」
「じゅ、うりょくぅ? しらねえぞ!」
まぁ、俺が開発した魔法の1つだからね。
でもこれはリリー達には難しいかな。
2人にはもっと簡単なのを教えよう。
とか思ってたら、10人いた盗賊達は、いつのまにか気を失っていた。
そして俺は、こいつらを拘束魔法で、そこら辺に置いておいた。
振り返り、馬車の方に目を向ける。
さて、あの馬車の中にいる人は無事だろうか。
というか人はいるのかな?
石投げられても無反応っぽかったし。
俺はその馬車に近づき、扉に向かってノックをした。
「コンコン」
「あ、あのー! もう大丈夫ですよー!
盗賊は拘束しました。大丈夫ですか?」
「……」
いや、これ大丈夫か?
反応なさすぎるだろ、死んでんじゃないか?
なんか不安になってきたので、扉をあけようかと、そうした瞬間。
「ガチャ」
扉のドアノブが少し回された。
そして、ゆっくりとゆっくりと、扉が開いていく。
扉と俺がぶつかりそうになったので、
数メートル離れておいた。
ふと、どんな人なんだろうと俺は思った。
恐らく、金持ちなので石油王みたいな人だろう。そんなよくわからない予想をして。
姿が見えた。
「あ、あの、あ、ありがとうございます……」
その姿は、おっさんでもなく、いや、男ではなく、
とてつもなく綺麗な。
綺麗という言葉一つで片付けていいのかわからないけれど、そんな人がいた。
いや、女性がいた。
綺麗な金色の髪の毛、腰まである長さだ。
そして、綺麗な青い瞳。
おっふ。これはまさにおっふ。
俺は、その綺麗さに口がポッカリ開いてしまっている。
恐らく間抜けな顔になっているだろう。
「あ、あの?」
「!!」
いけないいけない。
つい見惚れてしまっていた。
「いえ、すみません! ご無事でしたか?」
「は、はい! 助けていただき、本当にありがとうございます!」
彼女は、オーラがすごかった。
表情、喋り声、一つ一つが綺麗だった。
ん?俺、惚れてないよな?
すると、馬車の中にもう1人がいた。
「こほん、助けていただきありがとうございます! 僕たちは、ここで終わりかと焦ってしまいました!」
うん。見るからに婚約者って感じのイケメンが来た。
この人も金髪青い瞳。
そして凄くイケメン。
はぁ、さっきまでの俺が恥ずかしい。
すみません。
多分惚れてはないけど、惚れたらダメな人でした。身の程知らずすまぬ!!
すると、イケメンが喋った。
「あの、窓から見ていたのですが、あれは魔法でしょうか?」
見てたんかい。
「えぇ。そうですよ!」
「なんと! その魔法はなんというのでしょう?
初めて見る魔法でして……」
そう言ったイケメンは、ポケットからメモを取り出し、ペンを片手に持った。
魔法が好きなのかな。
でもごめんよ、これはオリジナルなんだ。
「すみません、これは開発した魔法なんです!」
「ふむふむ。か、開発!?」
「え、ええ!?」
イケメンと美女が驚いた。
ペンも落として……いやギリギリキャッチしていた。
「開発って、そんなことが可能なのですか!?」
美女が食い気味に近寄ってきた。
胸がドキドキするからやめてほしい。
「ええ。できますよ。がんばればですけどね?」
「なんと、開発か。僕も頑張ってみようかな」
「お兄様は無理です! あれは彼だからこそできるのですよ!」
ん、んん?お兄様?ん、んん???
「えっと、お二人は、ご兄妹なんですか?」
「はい?そうです。双子ですね! 私が妹です!」
確かに、よく似ているかも。
髪色も瞳の色も同じだし。
なにより美女とイケメン。
「あ、あのそれで、お二人はご無事ですね?」
俺はそう聞いた。
「あ、はい! 僕もこの子も無事です。本当に助かりました!」
「たすかりました!」
2人は綺麗に頭を下げた。
なんていうか綺麗だ。
普通のお礼ではない。
品があるというのだろうか。
「いえいえ、それでは俺はこれで」
そういいこの場を立ち去ろうとした。
そのとき、左腕の袖を掴まれていた。
美女に!
「待ってください!」
「は、はい。なんですか?」
何か言いたげな顔をしている。
よく見たらイケメンくんもそんな顔だ。
話がしたいのだろうか。
別に俺は構わないけど、
馬車でリリー達を待たせているしな。
思念通話で待って欲しいと伝えようか。
(リリー聞こえるか?)
(うん。きこえるけど?)
ん?なんだろう。
リリーの声が低い?
というか、怖い。なに?キレてる?
(リリーさん? どうかしました?)
(その女だれ? かわいいね。好きなの?)
はい?こいつはなにをいってるんだ?
たしかにかわいいけど。
(好きではないよ)
(だよね! で、どうしたの?)
リリーは急に元気を取り戻した。
……なんだったんだ一体。
そして俺は、リリーに少し待っててと伝えた。するとリリーはギルゾックを連れて、
こちらへきてしまった。まあいいけれど。
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リリー、ギルゾック、イケメン、美女、俺の。
謎のお茶会が始まった。
お茶はないけど、馬車の中で座って喋ることになった。
俺の方の馬車は帰ってもらった。
どうやら、行き先が同じホンギル王国らしく、到着までは、イケメンの馬車を使わせてもらう。
「いやーシオンに助けてもらってよかったね! ふたりとも!」
リリーがそういうと、美女が口を開いた。
「えぇ、本当に助かりまし……あ!」
「あっ」
俺の名を聞いてからか、イケメンと美女が目を合わせた。
そして、2人は頭を下げ謝罪しだした。
「申し訳ないです! 自己紹介がまだだった!」
「本当にごめんなさい! 私達、名乗っていませんでした!」
そういうことだったのか。
たしかに名前を聞いていなかった。
すると、まずはイケメンからの自己紹介が始まる。
「僕の名前は『アイク・ホンギル』。アイクと呼んでほしいです!」
次に、美女。
「私の名前は『ミリア・ホンギル』。と申します!
私もミリアと気軽に呼んでください!」
おー。と拍手をした。
けど、リリー達はしてなかった。
なぜしないのか疑問に思い、リリーの顔を見てみると固まっている。
ギルゾックは?……固まっていた。
「リリー、ギルゾックどうしたんだ?」
「し、シオン、気づかないの?」
「へ? なにが?」
「……お前、今向かってる王国の名前は?」
ギルゾックが急に問題を出してきた。
そんなの簡単だ。
答えは……ん?ん?????
「ほ、ホンギル王国」
「だよね?ってことは」
「だよな?ってことは」
なんとなくわかってしまった。
家名が王国の名前。
そして、彼女らのとてつもないビジュ。
礼儀も正しかった。
まるで、王子様と、王女様みたいだ。
いや。
王子と王女やないかーーーいい!!!
と心の中で自分にツッコミを入れてしまう。
「ふ、2人は王子と王女なの?」
一応、確認してみた。
すると、2人はコクりと頷いた。
だから、金持ちなのか。
でも俺はあんまり気にしない。
正直、貴族だから、王子だから、とか
めんどくさい。同じ人間なのだから、そんなこと気にしなくていいのにと思う。
「まぁ、そんなの気にせずさ! 仲良くしよう!」
その言葉に、リリー達も、「たしかに」と俺に賛同した。さすがはマイフレンド。
そうだ、気になっていたことを聞こう。
「えっと、アイクは魔法が好きなんだよね?」
「あ、うん! そうだね。魔法は好きだよ!」
仲良くと言ったからか、アイクは俺に対してタメ口へ変わっていた。
「お兄様は、魔法オタクなんです! 魔法のことになると目を輝かせるんですよ?」
ミリアは相変わらず丁寧な口調だ。
……てか魔法オタクってなに?
「なんの魔法が使えるの?」
そう聞くと、アイクは色々教えてくれた。
「基本何でも使える! でも、氷魔法が苦手なんだ。炎は得意だけどね!」
なるほど、炎が得意か。
でも氷魔法が得意な人なら俺の隣にいる。
「リリーに氷魔法を教わってみたら? こいつ氷魔法が本当に得意なんだよ」
「え、そうなんですか!? ぜひ教わりたいです!」
アイクがリリーへ視線を向ける。
「え? あ、ああ! いいけど、いつ教えようか?」
確かに、教えると言っても、
王国についたら離れてしまうしな。
「それなら、魔法学園に来てもらったりとかできませんか?」
「ま、魔法学園? そんなのあるのか?」
ミリアの言葉で、
俺は学園という単語に反応してしまった。
「うん! 魔法学園は、ホンギル王国にある学園! 魔法をとにかく学べるんだよ!」
「へぇ、そこでリリーに教わるのか」
魔法学園、やばい、行きたい。
気になるなあ、どんなかんじか。
……でも、復讐がある。
「ごめんアイク。俺から教われと言ったが、探してる人がいるんだ。だから学園にはいけない」
するとミリアが口を開いた。
「それでしたら、学園にいる、マリア博士に占いをしてもらえばいいのでは!?」
「占い? マリア博士?」
「はい! その人は、占いができるんです! 探し物、人探し、なんでもわかりますよ!」
占いとは魔法なのだろうか?
前世の占いは当てにならないイメージしかなかったけど、ここは異世界だ。
「いいかもしれない。よし、行こう。一から探すより、魔法学園に行く方が早そうだ!」
俺は「本当にありがとう」と、
ミリアに礼を言うと、
彼女は「い、いえ」と言い、
何故か顔を真っ赤にして、下を向いてしまった。
「ちっ」
ん?なんか、リリーの方から舌打ちが聞こえた。いや、まさかな、この世界で舌打ちとか聞いたことないし。空耳だろう。きっと。




