前へ目次 次へ 24/94 またたきのあいだ‐7‐ 女の狼の部分、その耳が後ろに寝ていた。少々の警戒を肌で感じた。悪いことをした。唸り声の幻聴がした気がした。「……椛だ」しかし女の躊躇いも時間が振り切らせたようだ。椛。女は自身の名をそう紡ぐ。 「椛さんか。下の名前、だよな。上ではなく、下の名前で呼んでも?」 特に下の名前で呼んではいけないというルールは存在していなかった。しかしやはり、女の子の、うえではなく下の名前で呼ぶのは緊張があった。心の距離が近すぎるのではないか、そう考えていたのだ。