前へ目次 次へ 23/94 またたきのあいだ‐6‐ だがそれは返って来た。前よりも綺麗になってだ。感謝した。しかしそこで気が付く。──鏡太郎は、女の名を知らないのだ。 「自己紹介がまだだった。俺は鏡太郎。親しい奴らは、鏡さんと呼んでる」 よろしく、と自己紹介だ。欧米ならここで、握手でもするところだろうか。鏡太郎はそこまではしなかった。握手はまだ今は、馴れ馴れしいものと考えたのだ。 「私は……」 青肌で狼の群れの足をもつ女は言い淀んだ。鏡太郎の家まで突撃してきたが、名前の交換には抵抗があるらしい、ようだ。