前へ目次 次へ 12/94 ひとりぼっち‐12‐ 「何見てんですか」 ですますの字面だが、その口調の色には棘しかなかった。ゲロ吐きを見たのだ。こんなものだろう。しかし女の態度と雰囲気に、鏡太郎は気の強さを感じた。ちょっと腰が引けた。女の腰下の狼群れが敵意と牙を剥き出しにして威嚇しているのだ。それでも、 「大丈夫なのか?」 「平気だよ」 「相当に吐いていたようだが」 「あんた、もしかしてゲロに趣味がある変態だろ」 「私にかまうな」と女は、あっちへいけと言わんばかりに、手を振った……のであろう。