前へ目次 次へ 13/94 ひとりぼっち‐13‐ 鏡太郎の目では、手で払うような仕草には見えなかった。代わりに、その多くの足であろう狼の首らが、追い払おうとしていた。きっと手を伸ばせば噛み付かれるのだ。それはきっと、とても痛い。野生の生物に手を伸ばしては駄目なのだ。だが── 「ハンカチ。まだ口に残ってる」 ──傷や痛みを知らずに生きられないのだ。誰かと近づけば、それは必ず傷つく。ならばどうして、また痛みばかりを恐れて止められるのだろう。恐るだけでは進めないのだ。