第3章(3)
「よーし。じゃあ、今日も頑張ろう!!たしかに完成間近だけど、浮かれないで、よりいっそう気をつけて行こうね!!」
今日もいつも通り中島の掛け声から始まる。
中島の言うとおり、作業ももう完成間近。みんなの気合もずいぶんと入っているのも感じる。
だが、気合が入っているのと同時に浮足立っているのも感じていた。
「じゃあまず、翔太君と将大くんは向こうから木材を持ってきてくれるかな?海斗君は中島の方から指示をもらってくれる?女の子たちはこっちで周りの飾り付けをしよう!!」
ラストスパートに向かって動き出す。自然と指示出すをこっちにも力が入る。
昨日佐々原にはいろいろ言われたが、無事に完成したやぐらを見せればちゃんとわかってくれるだろう。
またひとつ、やぐらを完成させる理由が増えていた。
「ねえ、このビロビロしたひもはどうしたらいいの?」
「この赤と白の布に釘を打っていけばいいのー?」
「あ、ああ。ちょっと待って!!今説明するから……」
作業を始めるための下準備に手間取っていると、早く完成させたくてしょうがない女の子たちから次々と質問攻めにあう。勝手にひとりで作業を始めそうな勢いだ。
「まず、この布にひもを通すよ。布がおっきいからみんなでやろうね」
「「「はーい」」」
作業の内容を説明すると、とたんにみんなは大人しくなり作業に没頭しだす。
ほっとする反面、常に仕事を与えていなければならないことに不安をぬぐいきれない。
だが、完成はもうすぐそこ。そんな泣き言も言っていられない。最後の最後まで気を引き締めて取りかからなければいけない。
――と、そう思ったとたん。
「いてっ!!!!」
遠くから男の子の声と思われる悲鳴が聞こえた。
方角的には木材置き場あたりだろう。すると、声の主は木材を取りに行かせた翔太君か将大君あたりだろか。
「ごめん、ちょっと中断!!ここで待っててくれる!?」
俺はあわてて作業の中断を告げ、急ぎ木材置き場の方まで走りだした。
そうひどいケガではなければいいが、なんてことを思いながら、そう遠くない距離を走り続ける。
「い、いたた……」
現場に着くと、かばうように左足をさする翔太君と、それを心配そうに見つめる将大君の姿があった。
「大丈夫!?足痛めたの……?」
「う、うん。木をふんずけちゃって、それで足くじいたの……」
翔太君は少し涙目なりながらも、懸命にあったことを伝えようとする。すぐそばの崩れた木材の山を見る限り、ここの木をふんずけてしまったのだろう。
「ねえ、翔太は大丈夫なの……?」
隣から将大君も心配そうに状況を聞いてくる。
「うん、残念だけど今は安静にしといた方がいいね。とりあえず、本部の方まで行かないと……」
「翔太!!大丈夫か?」
すると、おかしな様子に気がついた中島がかけてきて翔太君の介抱に向かった。
「中島。どうやら足をくじいてるみたいだから、本部の方に連れて行って治療してもらわないと……」
「そうだな。あっちに行けばシップくらいあるだろうし……よし、じゃあ俺が向こうまでおんぶして行ってやるよ!!」
そう言って中島は後ろを向き、背中を翔太君に差しだした。
「え!?やだよ、こんな年にもなって恥ずかしい」
「んじゃあ、お前一人で歩けるか?」
「そ、それは……」
「そんな見栄張るなって。ちゃっちゃと連れてってやるから!!」
「う、うん……」
しぶしぶといった様子で翔太君は中島に身を預ける。
それを中島は軽そうにひょいと持ち上げて抱える。
「んじゃあ、清水。こっちは任せるわ。頼むな」
「お、おう……」
翔太君を肩に背負い、勢いよく走り去って行った中島を見送り、その場に立ち尽くす。
一瞬自分が何を次にするべきなのか、見失ってしまっていた。
「一度みんなのところに戻ろう。いつまでも待たせるわけにもいかないから……」
「う、うん。わかった………」
将大君は不安そうな表情をしながらも、素直にうなずいた。
俺がこんな頼りのない態度をしていてはみんなを余計に不安にさせてしまう。そう頭ではわかっていても、不安は消えてくれなかった。
将大君の手をとり、それを引っ張るようにしながら歩き出す。
不安を消してあげようとつないだ手だったが、消し去りたい不安は俺のものだったのかもしれない。
「大丈夫だよ。足をくじいただけなら一日安静にしていれば、すぐ良くなるから」
当たり前のことだ。常識のある大人ならその程度の怪我、大したことじゃないと分かってる。
けどそれでも不安が消えないのは、昨日の佐々原の言葉の所為だろうか。それとも、もっと別の何かがあるのか……?
次に何をしたらいいのかも、何もかもわからないまま、将大君の手を引き、二人不安を抱えたまま歩いていた。




