↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/10

第七話 クリケット用具店

 久しぶりの満腹感。


 ノクターシアは幸せそうに食堂から出ると、酒を飲んでいるヴィオラの姿を見つけた。


 ヴィオラもノクターシアに気づき、軽く手を上げる。


「満足したかい?」


「うん」


「そいつはよかった」


 ヴィオラは嬉しそうに笑い、酒をあおった。


「それで、今から用具店の方に行くのかい?」


「うん。魔法アイテムとか武器があるなら見てみたい」


「なるほどねぇ。ただ、魔法武器だと結構値が張るよ?」


「そうなの?」


「あぁ。素材の値段も込みになるからね。もし欲しいなら、素材は自分で集めるのをお勧めするよ」


 ヴィオラはニヤリと笑った。


「特にシア。お前は戦える側の冒険者だからね。そっちの方がいい」


「戦える?」


 ノクターシアは首を傾げた。


「あぁ。冒険者ってのは、魔物を倒すだけが仕事じゃないんだよ。戦えない奴だって登録してる。ギルドには日雇いの求人も来るからね」


「日雇い?」


「一日だけ働く仕事さ。報酬は安いが、戦うより安全だし、色々な経験もできる。戦える冒険者でも、料理や応急処置を習うために働く奴がいるくらいさ」


「へぇ……」


「シアも機会があればやってみな。薬草の知識なんかも覚えておけば、冒険で役に立つよ」


 ヴィオラはそこで、思い出したように笑った。


「おっと、話がそれちまった。用具店に行くんだったね。場所は──」


 用具店への道を教えてもらい、ヴィオラと別れた。


 教えられた道を進むと、特に迷うことなく店に辿り着く。


 店内に入ると、並べられた品々から、魔法アイテム特有の感覚が微かに伝わってきた。


「……本当にたくさん売ってる」


 昔とは違い、手頃な値段で売られている魔法アイテムに驚いていると、店主が声をかけてきた。


「いらっしゃい。なんか欲しいものでもあるのかい?」


「あ……えと……」


 答えに詰まった。


 ただ珍しくて見ていただけで、そもそも何が売られているのかすらよく分かっていない。


 なんと答えようか迷っていると、店主がもう一度声をかけてくる。


「もしかして新人の冒険者? ここに来るのも初めてかい?」


 こくりと首を縦に振った。


「なるほど。じゃあ、軽く自己紹介しておこうか」


 店主はカウンターに肘をついたまま、愛想よく笑った。


「俺はケビン。この店はクリケット商会が経営してる『クリケット用品店』だ。日用品から冒険者向けの物資まで色々扱ってるぜ。それで、お嬢ちゃんは何を見てたんだい?」


「あ……えと……魔法アイテムが珍しかったから」


「珍しい?」


「私はあんまり使ったこと……ない」


「へ〜、珍しいね」


 怪しまれただろうか……。


 少しドキドキしながら待っていると、ケビンは近くにあったランタンを手に取った。


「魔法アイテムに馴染みがないなら、これなんかお勧めだね。魔力ランタン。普通のランタンより高価だけど、魔力さえあれば灯油なしで使えるから便利だよ」


 ケビンからランタンを受け取ると、ノクターシアは試しに魔力を流し込んでみた。


 すると、ランタンの中にぽっと光が灯る。


「お〜……すごい」


「光の強さも、流す魔力の量で変えられるんだ。お次はこいつ」


 ケビンは地図を取り出し、カウンターの上に広げた。


「地図?」


「地図もだけど、本命はこっち」


 手に持っていたのは、黒い羽ペンだった。


「こいつはマジックペン。魔力で色をつける代物だ。よく見てて」


 インクもつけずに、地図の上にペンを走らせる。


 すると、ペン先から色が現れた。


「色が……」


「面白いだろ? ただ、こいつは一時的にメモするためのもんだから、時間が経つと消えてしまう。重要なことを書いた日には……まあ、後悔することになるな」


 脅かすような口調に、不安そうにマジックペンを見つめた。


「とまぁ、こんなところかな。ペンの方は結構するからやめた方がいいけど、ランタンなら銀貨1枚で買えるからお得だぜ?」


 しばらく悩んだあと、「分かった」と頷いた。


「毎度あり。他に何か欲しいものは?」


「それじゃあ……武器は?」


「武具かい? それなら、まぁ少しは置いてるが」


 ケビンが出してきた武器は、どれも粗悪なものばかりだった。


「一応、武器や防具も扱ってるが、ここは用品店だからな。ちゃんとした装備が欲しいなら武具屋に行きな。あっ、でも魔獣や魔物を倒すことが多いなら、工房に行ってみるのもいいかもな」


「どうして?」


「武具屋には新品から中古品まで色々揃ってるが、魔物の素材を使った装備は高いんだ」


「じゃあ工房は?」


「素材を持ち込めば、加工費を払って武器や防具、装飾品なんかを作ってもらえる。素材によっては完成品を買うよりずっと安く済むぞ。それに、駆け出しの頃から腕のいい職人と知り合っておくのも損はない」


 ノクターシアは少し考えた。


「じゃあ武具屋と、その工房……両方の場所も教えて。そこに広げてある地図も買うから」


「おっ。嬢ちゃん、分かってるねぇ。またいつでも来てくれよ」


 買った地図を大事そうにしまい、教えてもらった工房の場所を思い浮かべながら、店を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。