最終章 多くの 笑いと感動をありがとう
闘病生活、百三十五日。
検査きつかったね。
痛かったね。
辛かったね。
苦しかったね。
薬も苦かったね。
気持ち悪かったね。
眠れなかったね。
怠かったね。
歩きたかったね。
おしっこしたかったね。
うんちしたかったね。
耳痒かったね。
ブルブルしたかったね。
お尻、痛かったね。
寅次郎は、何も言わなかった。
ただ、あの顔のまますべてを受け入れていた。
本当は――もっと早く楽になりたかったのではないか。
そんなことを思ってしまう。
それでも寅次郎は最後まで生きようとしていた。
私たちのそばで。
寅次郎は
たくさんのものを残してくれた。
何気ない日常。
当たり前だった時間。
同じ景色。
同じ道。
そのすべてがかけがえのないものだったと教えてくれた。
言葉はなかった。
それでも確かに通じていた。
そして――
寅次郎は人とのつながりも残してくれた。
寅次郎が旅立ってから、たくさんのメッセージが届いた。
たくさんの花が届いた。
そして、多くの方が弔問に来てくださった。
寅次郎のまわりには、こんなにも人がいたのかと驚いた。
一つ一つの想いが、胸に沁みた。
寅次郎のことを覚えていてくれる人がいる。
それだけで、どれだけ救われたか分からない。
私たちは一人ではなかった。
寅次郎がつないでくれた人の輪の中にいた。
そして――
私自身もまた、仲間に支えられていた。
仕事の合間の連絡。
短い言葉。
「大丈夫か」という一言。
それだけで、前を向くことができた。
私は一人で抱えているつもりだった。
けれど、そうではなかった。
あの時間の中で、私は多くの選択をしてきた。
仕事を調整し、予定を断り、寅次郎と妻を優先した。
正しかったのかは、今でも分からない。
ただ――そうするしかなかった。
あるとき、部下から言われた。
「あのときの判断を見て、自分も家族を優先していいんだと思えました」
その言葉に、少し驚いた。
自分では必死だっただけだった。
それでも――
寅次郎と向き合った時間が、誰かの背中を押していたのだとしたら。
それは、寅次郎がくれたもう一つの意味なのかもしれない。
寅次郎は最後までたくさんのものを私たちに残してくれました。
そして――
最後まで私たちに出会いを残してくれました。
寅次郎を通して出会えたすべての方々へ。
温かい言葉をくださった方。
そっと見守ってくださった方。
遠くから想いを寄せてくださった方。
たくさんのメッセージと、
たくさんの花と、
そして弔問に来てくださった皆様に、
心より、感謝申し上げます。
寅次郎、多くの笑いと感動をありがとう。
またな。
リード、付けさせろよ。 完




