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第三十四章 復活と後退
正月が過ぎた頃、一つだけ安堵できることがあった。
心配されていた傷口は、壊死せずに済んだ。
あれほど深かった傷が、少しずつ落ち着いてきていた。
それは確かに、小さな復活だった。
私たちは胸をなでおろした。
だが――同時に別の変化も現れていた。
寅次郎の呼吸だった。
以前よりも肩で息をするようになっていた。
静かに横になっていても、呼吸が少し荒い。
検査では血液の状態も良くなかった。
鉄分が足りない。
寅次郎は貧血状態になっていた。
舌が白く見えたのもそのせいだった。
壊死は免れた。
だが、安心できる状況ではなかった。
復活と、後退。
その二つが同時に起きていた。
そして何より――
状況がめまぐるしく変わっていった。
昨日まで出来ていたことが今日は出来ない。少し良くなったと思えば
また別の問題が現れる。
私たちはその変化についていくのがやっとだった。
寅次郎の呼吸を見ながら頭に浮かんだ言葉があった。
酸素ハウス。
もしかしたら考えなくてはいけないのかもしれない。
そして――
あと数日で、状況は大きく動くことになる。




