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第十八章 師匠を訪ねて

お盆を前に、私たちは東村山を訪ねた。

志村けんさんのモニュメントがある公園は、真夏の陽射しに包まれていた。

銅像の「アイーン」のポーズを見上げ、妻が笑い、寅次郎も尻尾を振った。


寅次郎はいつも少ししゃくれていた。

通りすがりの子どもたちが「この子、しゃくれてる!」と笑い、

そのたびに私たちもつられて笑った。

寅次郎は、笑われることを少しも気にしていないようで、

むしろその笑いを楽しんでいるように見えた。


——東村山。

狭山市から転校してきた中学時代、

私はこの町で青春のひとときを過ごした。

団地の影、夕立のあとの土の匂い、

そしてテレビの中で笑いを届けてくれた志村けんさん。

その笑いは、この街の空気のようにあたりまえに流れていた。


時が流れ、私は寅次郎と共に再びこの街を歩いている。

銅像の前に立ったとき、夏の風が吹き抜け、

寅次郎の毛をふわりと揺らした。


その瞬間、志村けんさんが

天国から寅次郎に“アイーン”をかましたように思えた。

寅次郎は口を尖らせて、まるで応えるように“アイーン顔”をした。

妻が声をあげて笑い、私もつられて吹き出した。


笑いが風に溶け、真っ青な空へと吸い込まれていく。

その空の向こうで、きっと志村さんも笑っている。


銅像の前にしばらく立ち尽くしたあと、

私たちは寅次郎のリードを手に取り、公園を後にした。

照り返すアスファルトの上を、蝉の声が包みこむ。

寅次郎は時おりこちらを振り返りながら、軽い足取りで歩いていた。


その背中を見つめながら、私はふと思った。

笑いというものは、

人と人、命と命を、

静かに結んでいくものなのかもしれない。

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