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僕はワンと一鳴きお礼を行って、また駆け出した。
今度はりくくんを誘ってみよう。
さっき見たときのまま、りくくんはペタンと座っていた。顔を近づけるとゆっくりと立ち上がってくれた。
少し後ろに下がりぴょんぴょん跳ねながらステップ踏んで、前足でドンドン地面をたたいて誘ってみる。なかなか動いてくれなかったが、のろのろと走り出してくれた。
もっと早く!と後ろから追いたててみる。
うお。
スピードを上げてくれるどころか、とまって振り返ったのでびっくりして体が跳ねた。
走ってはとまりを何度か繰り返したあと、ちょっと気持ちよく一緒に走ってくれて僕は満足した。
しばらくしてりくくんのお母さんがやってきた。だいきのことも伝えてあったので、話をするのをそちらにまかせ、僕とりくくんはドッグランのエリア内で並んで座って二人が話しているのをそばで見ていた。
結局柴犬の姿のままりくくんは帰っていった。
「俺らも帰るか」
だいきが言った。
僕は見上げてワンと返事をした。
「しゅんもそのまま帰れば。人型でシャワーしてもなんか気持ち悪いだろ。俺が洗ってやるよ」
え。驚きの提案をされた。
確かに僕は今すごく汚れている。人型になって洗っても綺麗にはなるが、なんとなく気持ちが悪いのも事実だ。家族だったら迷わずそうしてもらってたけど、相手はだいきだ。
「ずっと待ってるだけだったから、体力有り余ってんだよ。俺はそこらへん走り回るわけには行かないだろ」
なかなか返事をしない僕を見てだいきがそう言った。それでも返事をしないでいると、しゃがんでため息をつき、耳を倒してこう続けた。
「おやつの礼だとおもってさ」
僕は自分だけ楽しんでしまった後ろめさもあり、しぶしぶうなづいた。
リードをつないでもらった。ドッグランとは違ったコンクリートの固さを肉球で感じながら家に向かう。草の抵抗がないので体が軽い。
土の柔らかさや草の匂いがしないのは、ちょっとさみしいが、これもこれで楽しい。
家の前まで着くと、朝、りくくんを入れたトートバッグをだいきが出してくれたので入る。だいきがバッグを肩にかける。左側はだいきの体にぴったりくっつき、右側はだいきの腕にホールドされた。顔だけ出していると大きな左手が伸びてきて、頭を撫でられたあと、隠れていろとバッグの中に押し込められた。
僕の部屋まであっという間だったけど、あったかいのと、規則的に揺れるのと、走り回って疲れてたのとでうとうとしてしまった。
ガチャッ、バタンとドアの開閉の音がして床に下ろされたときには、そのまま寝てしまいたくなっていた。トートバッグの口が合わさったまま、ぺちゃんと折り畳まれたのだろう、スースーした感じがなくなって、上下左右に布が当たっているのを感じる。自分の周りの空気がだんだん温まっていく。前足についた泥の匂いを嗅ぎながら、走り回った満足感に浸り、意識を手放した。




