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 最後は息を切らすほど走って家に到着した。アパートは獣人可だが、獣体で廊下を通るのは禁止されているので、柴犬くんをコートの中に隠すようにして部屋に向かった。


 だいきも、のそのそとついてくる。部屋のドアを開けて、柴犬くんとバッグを下ろした。だいきが入ってきてドアを閉めるとぎゅうぎゅうで身動きが取れなくなった。


 コートも脱いで丸めて床におき、じっと動かずにいてくれた柴犬くんを再び抱えて、とりあえずお風呂に向かう。風呂場の扉を閉めようとしたとき、だいきが僕の荷物を持って部屋の奥へ入って行くのが見えた。



 アウ、キャウウ


 柴犬くんにシャワーを当てようとしたら、嫌がられた。獣体のときに風呂はいるのが嫌になる獣人も多いけど、りくくんのそういうタイプだろうか。密かに気合いを入れつつ、大丈夫だよと声をかけながら、お腹のほうからシャワーを当てると大人しくなった。やる前のほうがこわいこと、たくさんあるよね~。大丈夫そうだ。


 獣体でも使える犬属用シャンプーで洗ってる間も大人しくしてくれていたが、水で流し終わったとたんに水を飛ばされた。こんなことも久しぶりで楽しい。


 僕も洗ってしまおう。


 お風呂にお湯を軽くためて、柴犬くんを入れようとすると、カエル足で足を動かしはじめた。面白くなってそのまま宙に浮かせていたら、飛行機耳で見上げてきたので、そっとお湯にいれてあげる。やっぱりやる前は怖がるのに、やってしまえば大丈夫みたいで、気持ち良さそうに目を細めていた。ちょっと待っててねと声をかけて、服を脱いでまた戻り、シャワーを済ませて軽く拭いたあと、柴犬くんを思い切りタオルドライする。


 くしゅん


 こっちが冷えてしまった。


 バスマットに柴犬くんを下ろして、急いで着替える。自分のしっぽと柴犬くんを適当にタオルでくるみ、部屋に向かった。



 ドアを開けると何かが煮えてる匂いがした。


 キッチンを見るとだいきが料理していた。


「しゅんも洗ったのかよ」


 なぜかにらまれた。


「うん、濡れちゃったからさ」


 だいきが怖かったのか、腕の中で柴犬くんが暴れた。床に下ろしてドライヤーを取りに行く。


 柴犬くんがだいたい乾いたころ、カレーの匂いがして、だいきが近づいてきた。


 柴犬くんがテーブルの反対側に逃げていく。


「貸せ。風邪引くぞ」


 ドライヤーを渡すと、頭を乾かしてくれた。


 たれ耳でドライヤーが本当にめんどうなのだけど、人にやってもらうと楽チンだ。耳を乾かすときはドライヤーを離してくれるし、こんなときだけほんときがきくなあ。


「ありがとう」


 頭が乾いたので、しっぽは自分で乾かそうと手を出したが、渡してくれなかった。しっぽのタオルを剥ぎ取られた。


「そっちは自分でやるから!」


 僕は慌ててしっぽとドライヤーを確保しようとしたが、失敗した。だいきにしっぽを捕まえられて、逃げ出そうにも逃げ出せない。


 最後のあがきでしっぽをバタバタ揺らしてみたが、じっとしてろと言われ、大人しくするしかなかった。僕が諦めたあとの手つきが優しすぎて、視界にはいっただいきのしっぽが揺れていたからなおさら。



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