ネズミ駆除作戦
大量のネズミの駆除が終わったのは、探索を始めてから二十日を過ぎたあたりに為りました。
「いやー、結構な量が集まったな」
「ええまあ、あれだけ居るとは思いませんでしたけど、しばらくは革の補修には困らないでしょう」
ネズミの駆除の傍ら、奴らから剥ぎ取った皮が、倉庫のなかで堆く積まれています。
体長が4〜50センチもあるネズミの皮は、以外にも防御性能も高く、革靴や背嚢などの強化に使われています。
「しっかしまあ、こいつ等も魔物とかになるんか?」
「ダンジョンの中では餌に事欠きませんし、ゴブリンを食べていた形跡もあって、数が爆発的に増えたんでしょうね」
「あんなに増えるとか、やってらんないよな」
「怖かったよね、最初のアレ……」
「私なんか怖すぎて、思わず笑ってしまいましたしよ。 あれは数の暴力ですよ」
極上チーズを回収した翌日、ネズミの駆除を目的にダンジョンに潜ると、やはり二階には大量のネズミがいました。
数が数だけに、いちいち相手をしていると、いつ増殖されるのか分からないので、俺と理恵ちゃんが魔法を使い、ネズミ達の殲滅を試みました。
ポイズン系の攻撃はあまり効かずに、炎系の魔術が一番有効でした。
水や土属性にも強く、風属性もいまいちだったので、色々と工夫をこらして、ネズミ共を駆逐していきます。
そして、ある通路の奥にゴブリンの死骸に群がる彼らを目にした時、これは使えると思い、倒したネズミ達の肉を集めて、それを焚き火にぶち込みます。
案の定、焚き火で炙られた肉の匂いに釣られ、奴らは大挙して押し寄せました。
焼けた肉からでる芳ばしい肉の匂いは、同族の物であっても飢えた彼らの食欲に火を付けた様子で、焚き火のまわりをグルグルと廻っていたかと思うと、数が増えた事によって、彼らは焚き火にダイブを敢行します。
そこからの地獄絵図は想像をこえており、お伝えするのも憚られます。
「えーっ!? なんでー?」
「うはーっ! こりゃひでぇな」
「うーん、これはヤバいですね」
「はあ…… これは夢にでそうです。 この作戦はよろしくないので、別の方法を模索しましょう」
多くのネズミたちは火を纏ったまま焼け死に、またそのネズミに噛み付き、さらに燃え上がる焚き火の炎が渦巻き、大半のネズミは駆除されて行きました。
「魔法の火って怖いよね」
「ああ、耐火の装備は必要だな」
「同感ですね」
「魔鉱石の開発は必須ですね」
焚き火の燃料に、錬金術でつくった火種を使ったのですが、これが殊の外長持ちするだけに、この惨状を引き起こしたのは明白なので、全員がその意見に同調します。
◇◆◇
焚き火の一件から駆除の方法をかえてゆき、正攻法の討伐方式に流れは落ちついて、戦いの中で色々と経験値を稼ぎ、数が減り始めた辺りで剥ぎ取りも行い、その素材をハンター達にも供給していった事で、ネズミの駆除にも参加する人員が増えてゆき、さらに別の素材の回収が進んで、ネズミ狩りが捗りました。
「ダンジョンって怖いけど、なんか楽しいよね」
「だな。 自分が成長すんのもあるけどさあ、いろんな物が採れんのも、おもしろいよな」
「若いってのは素晴らしいですね。 私も頑張らないといけません」
「ははは。 木村さんは十分に若いですよ」
田上兄妹のやり取りを見て、木村さんはいつも若さを羨む発言をしますが、その眼はどことなく家族を見るような優しさがあります。
俺も、残してきた弟妹を思い出すので、その気持ちは理解出来ます。
田上兄妹に家族を投影している木村さんは、自分たちもその中にいるのだと俺は思います。
だからこそ、俺は頑張らないといけないなと、改めて強く思います。
ダンジョンは恐ろしい場所と云われている事もあり、普通は人が寄り付かない場所です。
そんなダンジョンに篭もり、素材を掻き集めて強くなろうとする人々が増えていく状況は、異常ともいえます。
大半の参加者は俺に焚き付けられた様なものなので、その責任も感じています。
そんな中で知りあえた彼らを率いて、危険なダンジョンに潜るのだから、少しでも身の安全を考慮しないと駄目だと、強く思います。
「そろそろ、休暇でも取りますか。 やって置きたい事も増えましたし」
「いいですね。 他の方たちと飲み明かすのも一興ですし」
「えっ? なにかあるんですか?」
「おっ? もしかして、新しい酒をつくるとかかな?」
まあそれも含めて、色々とつくれる素材も得られたので、彼らの期待に応えつつ、皆の装備強化をしたいと思っています。
「だいぶ人が増えたので、彼らの装備も増やそうかと思います。 もちろん、飲食の方も含めて、ベースキャンプの強化もしますよ。 それが終わったら休暇を取りましょうね」
「やったあ! なにしようかなぁ。 新しい服でも作っちゃおうかなあ」
「よっしゃっ! 俺は釣りでもすっかな。 あの川はぜってぇ大物が釣れるぜ!」
「おお、釣りですかあ。 良いですねえ、私も釣りに行きますかね」
随分と休暇とは無縁だったので、皆はそれぞれのやりたかった事を語り始めました。
一年半にのぼるブラックな暮らしを改めて思い返して、少し余裕も出てきたので、新しい何かに挑戦するのも有りかと思いました。




