第二階層の攻防
今週も、よろしくお願いします。
ダンジョンの探索を開始してから、三週間目に突入。
一階はほぼ採集がメインで、敵となる生物はネズミやコウモリといった小動物に、時折ゴブリンが現れるくらいでしかない。
敵対生物の出現率は低く、数も限定的で少数であり、ゴブリンですら一体のみで、出くわす事も稀であった。
そんな一階層をとっとと通り過ぎて、二階に挑戦しているのだが、これが中々先へと進めずにいました。
「また、こいつ等かよ!」
「はっ! 文句を言わない! 集中、集中!」
「ダークミストー!」
「てあ! 左からも来てます!」
現在、第二階層の敵性生物と交戦中です。
第一階層を抜けて、第二階層の中盤といった場所までを攻略しました。
ですが、ここに来て思わぬ苦戦を強いられているのです。
その理由は現在交戦中の敵、いや生物との遭遇戦を繰り返しているからです。
つい先日までは、二階を普通に探索していました。
二階の階段を下りて通路を進み、一階と然程違いはないと思い、いくつかの採集物を見つけたり、ネズミやコウモリを追いやったりと、苦労などもなくマップを作成しつつ、ダンジョンの探索を進めていました。
「ん〜、なんか思ってたのと違うんだが……」
「そだね〜」
「敵らしい敵も出ませんね」
「んー、でもまあ、銅と錫が採れるので、この階層もしっかりと調べましょう」
二階の前半は順調で、有用な資源も発見して、しっかりと調査もした上で、三日ほどの時間を消費しました。
そんな順調な探索を続けていたのもあり、中盤に差し掛かってのこの事態は、予想もしてなかった事でした。
きっかけは先週の探索で、ある小部屋を見つけた事から始まります。
いつもの様に、光源の明かりを頼りに進み、理恵ちゃんが魔力探知で警戒していた所、通路の先にダンジョンの壁とは違うものが見えはじめ、そこに使われている金具に光が反射したことにより、その存在が明らかとなります。
「あっ、扉があるよー!」
「おっ、お宝部屋か!?」
「ふむ、何があるんでしょうね?」
「ちょっと調べてみます…… うん、大丈夫そうですね」
木製の大きな扉に近づき、耳をすませながら中の様子を窺います。
「なにかな、なにかな〜?」
「きっと、お宝だぜ」
「危険でなければ良いのですが……」
「開けますよ…… あっ、箱がありますね」
部屋の中に誰もいない事を確認すると、その部屋の中央に宝箱が見えました。
扉を開けたまま一人ずつ侵入して、辺りに何もないかを見渡します。
「とくに怪しいものは無いですね」
「これって、宝箱だよね」
「どう見ても、宝箱だぜ!」
とくに部屋には仕掛けもなさそうなので、俺は中央に鎮座する宝箱に近づきます。
「では調べてみますか…… うん、罠とかも無さそうですね」
「わくわく、わくわく」
「は、早く開けようぜ」
「初のお宝ですか、楽しみですねえ」
全員が宝箱を取り囲み、中に何が入っているかに期待します。
「開けますので、一応警戒はして下さいね」
宝箱を開ける為に、一度注意を促し、箱の蓋に手をかけそのまま開きます。
「おお…… あ、あれ?」
「これって、チーズ?」
「ふむ、種類は分かりませんが、チーズですね」
宝箱の中身は、大きな塊のチーズがぎっしりと詰まっていました。
チーズ特有の薫りが、宝箱が開いた瞬間から部屋中に拡がり、何ともいえない気持ちに為ります。
「な、なぜにチーズが……」
「でも、チーズは嬉しいかも」
「お酒のおつまみには、良いかも知れませんね」
「えっと、鑑定では『極上』って出てますね。 なぜチーズなのかは不明ですが、持って帰りましょう」
宝箱に詰まった極上品質のチーズをインベントリにしまい、ほくほく顔で部屋を出たのですが、それがこの事態の引き金と為りました。
「あっ!? なにか来ます!」
「えっ? なんだ、この音?」
「こ、これは……」
「ライトシェル!」
部屋を出て通路に戻ると、理恵ちゃんから警告がとび、各自が武器を取り出し、木村さんは防御強化の魔法を唱えて、戦闘態勢に入ります。
ライトの魔法が届かない、通路の奥から何かが接近して来るのは感じます。
ただ、その気配は小さなものではっきりとした驚異とは言えず、なにか別の驚異を捉えました。
「た、大群か!」
「な、なんだと!」
「ひいっ!? なにあれ!」
「ネズミです! ネズミの大群ですよ!」
通路の奥から聞こえるネズミの鳴き声と、小さな生き物たちが鳴らす足音が多数の接近を知らせています。
「た、たいひー! たいひー!」
「うおおおお!!」
「いやあああ!!」
「うはははは! これはヤバいですよ!」
近づきつつある気配に、俺たちはその場から一目散に逃げだし難を逃れます。
回収したチーズをばら撒き、緊急時に用意していた煙玉を使って追跡を振り切ったのが良かったのか、何とか地上まで追跡されずに済みました。
「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ……」
「……ああ、怖かったぁ」
「はぁはぁはぁ…… いやぁ、まいった。 まさか、あんなに、居るとは、思いません、でしたね。 はぁはぁはぁ」
「そ、そうですね。 ふぅ、でも、何とか撒けて、良かったです」
「ち、チーズは、まだ有りますか?」
「あ、それな、残ってます?」
「ははは…… せっかくの、お宝でしたもんね」
インベントリにはまだ沢山のチーズはありますが、ネズミたちの追跡を断念させる為にばら撒いた数は、かなりの量がありました。
「えっと、半分以上は残ってますよ。 宝箱には結構入ってましたし、極上品質のチーズだったのが、良かったのかも知れませんね」
「な、なるほど」
「「「あははは……」」」
結果的に、極上品質のチーズに振りまわされた事は間違いありませんでしたが、そのチーズに助けられた事も否めません。
ネズミの大群を引き寄せた、極上品質のチーズ事件はその後も続きますが、このチーズをきっかけに発酵食品の開発も視野に入ったので良しとしました。
もう5月となり、本当に夏で終わるのかが微妙となってる今作ですが、無理せず完結を目指すので、今後ともよろしくお願いします。




