魔の森とダンジョンの危険
今週は、この回までとなります。
徹くんが何気に拾ったり『ミスリル鉱石』は、ダンジョンの探索に新たな可能性を見出しました。
この発見は大きく、武具の強化がいまより加速します。
『魔鉱石』の開発は未だならず、錬金術のレベルアップも必要なので、まだまだ時間が掛かります。
現状では、鍛冶職人のレシピにミスリルの加工ならび、武具の生産レシピはあるので、もしミスリル鉱石が入手出来れば、より早く装備強化が捗ります。
そして現在は、ベースキャンプに一度もどり、リユート村に人員の増援をお願いして、ダンジョン前の確保をすべく、部隊の動員をお願いしています。
「なるほど、そのミスリルとやらは価値があるんだな。 分かった、後はオレたちに任せろ。 あんちゃんは、あんちゃんの仕事を優先してくれ」
「ありがとうございます。 ドワイトさんにそう言って頂けると、心強いです」
「おっしゃー! ダンジョン探索に、ミスリル入手イベント来たぜー!」
「もう、お兄ちゃん! ちゃんと、達也さんの指示に従うんだよ。 あたし達の未来が掛かってるんだからね!」
「ははは。 年甲斐もなく、私もわくわくしてますよ。 楽しくなって来ましたね」
この日はそのままベースキャンプで休み、翌日の朝にはダンジョンへ向かい、広場の確保を優先してから、ダンジョンに一度潜る事にしました。
◇◆◇
翌朝も、早くに活動を始めたベースキャンプは、ダンジョン探索を念頭におき、人員の選抜が始まっています。
俺たちは、そんなドワイトさん達に一声掛けてから、一足早くダンジョンへと向かいました。
朝もやとまではいかなくとも、早朝の森はしっとりとした湿気が拡がっており、少しだけ肌寒く感じます。
時折、風が通って枝葉が揺れ、朝露が地上へと落ちてきます。
ポツポツと葉や草にあたる雫の音を聞きながら、俺たちは足早にダンジョンまでの道を進みます。
「そろそろ、向こうじゃ夏になる頃ですね」
「え? ああ、一年半でしたね。 ふむ、こちらだと四季がないので、すっかり忘れてましたね」
「夏かぁ。 プールとか海、家族旅行、楽しかったなあ」
「お兄ちゃんは、泳ぐの得意だったよね。 受験とかなければ、最近の夏はずっと家の中でゲームとかしてたけど……」
ふと思い出した前世の話題は、意外と受けもよく、暫くはその話をしながらダンジョンまでの道を進みます。
お互いの何気ない思い出に、一時の郷愁を覚えましたが、この世界にきてから、こういった話題に飢えていたのかも知れません。
俺も、家族の話を久しぶりに語れて、少しだけで胸が軽く為りました。
田上兄妹も、小さな時の記憶や、ご両親の事を思い涙を見せましたが、日本の思い出を共有出来る事が嬉しく、夏の思い出を語ります。
そんな話を、木村さんは黙って聞き、自身の家族に思いを重ねたのか、目尻を拭っては優しく微笑んでいました。
「魔の森といわれるこの森も、こうやって歩けるのは、いいものなんでしょうか」
「そうですね。 俺の来た時分は、それこそ地獄そのものでしたけど、こういった森林浴みたいなのは、いいものなんでしょうね」
「魔の森かあ…… 魔物に出くわしたのって、最近ないよな」
「うん。 でも、こういうのって久しぶりに良いよね」
静けさが支配している朝の森は、魔の森といわれ魔界に近い地ではあるが、魔物じたいに会わなければ、普通の森よりも過ごしやすさを感じます。
元々が、マナの濃い地であり、豊かな森が拡がる実りの地であったはずの土地なのです。
「うーん、達也さんが居た時分を知りませんので何とも言えませんが、魔物がこうも居ないのも気になりますね」
「あ、それ、私も思いました」
「えっ? そうなのか? 俺は何も思わなかったけど……」
そうなのです。 ここに来た当時の記憶では、ここはまさに魔界といえる土地といえました。
日々、魔物たちと戦い血を流し、汗が乾くほどに動きまわり、必死に生存をかけた戦いの続く土地なのです。
それがすっかり変わり果てて、今ではこうして昔の思い出話が可能な程に、清浄な空気が森中に拡がりつつあります。
ダンジョンとは、もともと魔獣たちに荒らされた地を浄化すべく、魔物たちを封じる為に出来た施設とも聞きました。
もしその話が正しければ、この地にいた魔物たちは、いったい何処へ行ったかと訊ねるのなら、その答えは自ずとひとつと為ります。
「あはは、やっぱり気付いちゃいます? おそらくですが、ダンジョンの中に居るんじゃないかと思います」
「ふぇっ!? ダンジョンにですか?」
「ああ、なるほど。 なるほどなるほど、そういう事ですか」
「えっ、えっ? な、なに? どういうこと?」
俺は、ずっと抱いていた不安と仮説を打ち明け、それは木村さんも感じていた様子で、田上兄妹はその答えに疑問をもち、俺の予想をそのまま伝えました。
「マジかよ……」
「なにそれ、めちゃくちゃ怖い場所じゃん……」
「あっはっは。 うん、怖いよね。 この森にいたモンスター全部を取り込むとか、おかしいレベルだよね」
「そうなんですよ。 めっちゃ、ビビってますよ、俺……」
俺は出来れば帰りたいと、言葉にしたいも言えず、逆にこれはチャンスであるとも感じていました。
あの大量のモンスターたちを封じているダンジョンの制覇は、まず間違いなく危険であり、あの神の仕業であれば、その報酬は俺たちの想像を超えた物となる事は、間違いないと三人にも伝えました。
「よっしゃー! やる気漲ってきたぜ! インベントリとか、チートもありなんだろ! つうか、いいかげんよこせよな!」
「あははは…… お兄ちゃんならそう言うと思った。 んー、しょうがないなぁ」
「理恵ちゃん、頑張ろうね」
俺たちはこうして、危険の待つダンジョンへと誘われて行きます。
今週は出掛けたせいか、体調を崩してしまい、まだ本調子ではありません。
もしかすると、もしかするかも知れませんので、次回は何時になるかは、控えたいと思います。
たぶん、ただの疲労だと思いますが、念の為に静養を取らさせて貰います。




