三人の事情
街道の仕事も順調に進み、徹くんも仕事にはなれたようで、職業のレベル上げも捗っている様子であった。
木こりで伐採、道の整備で土木工員と石工をあげていくのでした。
当初、なんのかんのと文句をつけて来ましたが、力(STR)と体力(HP)も上がり続け、戦士系で上げてきたプラス分もあわせて、かなりのステータスを身につけて来たようです。
木こりで、伐採時の斧を振る回数が、いまでは三回振るか振らないかで切り倒せたりと、本人も驚きの事実を目の当たりにして、己自身のレベルアップに上機嫌で、チートという言葉を使わなくなりました。
最近では、すっかり早寝早起きをするようになってか、体の調子も上向きの様子で、今では誰よりも早くに現場に向かうようになって、実の妹である理恵ちゃんにですら、まるで別人じゃないかと疑うまでに、変貌を遂げました。
「いやぁ、変われば変わるもんですね。 まさか、これ程までに変わるとは、思いもしませんでした」
「私も、お兄ちゃんが、あんなに積極的に何かに取り組むのなんて、初めて見ました。 いつもは、ぶーたれてばかりだったのに、これも達也さんのお陰です。 ありがとうございます」
「ははは、俺もこんな結果になるなんて思ってなかったですし、これは彼自身で得た、成長の証ですよ」
「ふむ、そうかも知れませんね。 でも、きっかけは達也くんが与えたからだと、私は思いますよ」
「ええ、あんなダラケきったお兄ちゃんが、あんなに楽しそうな表情をしてるとか、子供の時いらいです」
このあと、理恵ちゃん自身も、この異世界にきてずっと不安を抱えていたらしく、現実の世界(転生前)と変わって、職業とスキルで得た力にも違和感しかなく、それでもこの世界で生きて行かないといけないし、自分がいなくなったり死んだりすると、ひとりとなった徹くんがどうなっていくかに、不安と恐怖を感じていたらしく、ずっと元気にいつもの自分を演じていたのだとか、今までの苦労と、その胸の内を語ってくれました。
そして、木村さんもこの異世界にきて、初めての事ばかりに戸惑い、なんとか人里に辿り着いて、近くの村まで連れていってくれた人や、そこで出会った人達に世話になったり、偶々知りあえた神父さんに色々と学び、スキルの使い方を習得した時の喜びは、今もずっと感謝しているのだとか、熱く語ってくれました。
ですが、そんな生活も長く続きませんでした。
なぜなら、突然現れた魔物たちの襲撃によって、その村は滅んでしまったそうです。
なんとか生き残れたのも、自分が僧侶となっていたのもあって、自己回復しながら素手で魔物たちをなぐり倒し、やっとの事で生き延びたとの事でした。
そして、教会に辿り着き、生き残っていた村人や神父さんを助け出すも、その村人をかばい負った傷が致命傷となり、回復魔術を使い過ぎた木村さんでは、その人達の傷さえも塞げなかったと、後悔の念をもらしていました。
そんな感じで、隣の村や町を渡り歩き、色々な場所で回復魔術で路銀を稼ぎながら、同様に転生されたであろう人を探して、リユート村にたどり着いたとの事でした。
さらにお二人は語ります。
リユート村に来た時に感じた風には、生前の日本で嗅いだ屋台の匂いがしたそうです。
俺は、『えっ?』と思わず漏らしましたが、お二人は苦笑いで答えます。
『やっと、まともな食事にありつける』
ここには居ない徹くんですら、そう漏らしたそうです。
そして、一番感謝されたのが風呂とトイレだったと思い出し、三人で笑いました。
俺はただ足りない物をつくり、自分に出来る範囲でしていただけだったので、流石に苦笑いでしたが、この事で自分がどれ程恵まれているかを実感しました。
まあ、お二人の言葉によると、俺だけが職業システムや、スキルの使い方がスムーズに習得されており、手にした武器や道具で、新たな職業やスキルを出現させるという、あり得ない情報を持っていたのが、おかしいとの事でした。
彼ら三人共に、たまたま手にしたり、教えを乞うて得たのに、なんでこんなにも差があるのかと、以前にも詰め寄られた事があります。
そんな事をいわれても、俺には『出来ることを探した』と、これ以外に語るすべはないので、そのまま返したあと、全員に呆れられた事に、いまだ納得はしていなかったりしてます。
確かに、最初からウインドウをだしたり、懐かしのゲームを思い出していたりと、おかしいと言われればおかしいのだろうと、口にはだしていません。
たぶんだが、あの邪神の依怙贔屓のせいではないかと、語っても仕方ないので諦めたといった所かも知れません。
(いや、もしかして、俺のせいか? うーん、流石にそれはないよな…… ないよね?)
そんなことを思いつつも、邪神の顔を思い出した俺の不安は、実は正解であったと知る日は、その月の月末にくる『お知らせメール』で、知ることと為りました。




