土木工の星
今回は短めとなってます。
ドワイトさん達の暴挙を戒め、徹くんを注意した翌日、午前の仕事前にミーティングを行った。
内容は、キャンプから村への街道の整備を優先させる、という計画である。
おおよそ、ふた月で完成する予定を、あとひと月以内で終わらせようという提案をして、リユート村側でその承認を貰えたからである。
「おい、あんちゃん。 そんなに期日を早めて、大丈夫なのか?」
「はい、そこは大丈夫です。 問題は、川辺の中間点にある起伏の整備をどうするかです」
「ああ、あの岩場のとこね」
「だな。 あの岩場を迂回するのか?」
「かなりの迂回路になるのでは?」
このキャンプ地と、リユート村へ向かうルートには、中間地点に岩場があり、川の流れが変わる難所が存在しています。
ただ、川辺の岩場は、人の足であれば遠回りせずに通れる場所もありますが、荷馬車を通すには迂回するか、大掛かりな工事が必要でした。
そこで、その工事を俺が職業スキルを使い、岩場をまっすぐに通る道を、つくる事にします。
「マジでか! あの岩場を通すってか!」
「はい、俺の職業スキルを使えば、可能ですよ」
「ほへぇ……」
「くっ、チートかよ。 またチートだよ、ちくしょう!」
「まあまあ、徹くん。 まだ話は終わってないですよ」
俺の土木工員には、土木作業に特化したスキルがあります。
この土木工員は、つるはし、スコップ、大槌、ローラー(グランドサイズ)、といった道具を十全に扱え、こと土木工事に関してはマスタークラスの職業なのです。
また、土魔法の中には『グラウンドコントロール』といった魔術も存在し、岩のしたに大穴を空ければ、岩を落し埋める事も可能です。
それ以前に、石工のスキルとインベントリを使えば、石材として回収も出来るので、整地は可能といえます。
「まあ、今回は助っ人も居ますし、問題はないですよ。 ねえ?」
「えっ? お、俺?」
「わ、私は?」
「ほう、良かったですね、徹くん」
俺は、視線を徹くんに向けて、左手で手招きをします。
手招きをされた事で、徹くんは戸惑いながらも、己の顔を指差して確認を取ります。
「ええ、さあこちらへ。 では今日の仕事前に、改めてご紹介します。 うちの期待のルーキー、トオルくんです!」
「マジかよ……」
徹くんを前に押出して紹介したあと、パチパチパチと拍手がなり始め、彼は振り返ります。
その振り返った視線の先には、俺と理恵ちゃんが拍手をしています。
皮肉まじりの、笑顔まで浮かべている俺たちを、彼は睨んできますが、参加者からも拍手が起こり、首を左右にふって慌てだします。
これは、彼の日頃の行動を改めさせる為に、ドワイトさんと仕組んだ通過儀礼です。
「ほら、お兄ちゃんも挨拶しなきゃ」
「お、おう。 えーっと、トオルです。 よろしく、お願いします」
拍手が止み、理恵ちゃんが挨拶を促すと、徹くんは緊張しながらも挨拶を述べ、頭を下げて一礼しました。
ちなみに、このキャンプ地に来る前にも、村で自己紹介はしているので、いまさら彼の事を知らない人はここにはいないので、前振りのようなものです。
さあ、ここからが本番です。
「たくさんの拍手、ありがとうございます。 皆さんも、既に知ってはいると思いますが、彼は今回の道普請に、必要な人材なのです」
徹くんが街道の整備に参加すると聞いて、ドワイトさんが不敵な笑みを浮かべます。
「ほう、トオルも、オレたちの仕事に参加するのか」
「はい、彼は俺と同じく、職業とスキルを使いこなせる存在なのです」
「「「おお!!」」」
そして、とどめとばかりに、俺は彼の能力をバラして、引き立たせます。
俺の職業スキルの威力を知る、肉体派の労働者たちからどよめきが起こり、わらわらと徹くんを囲みだします。
そんな彼は、むさ苦しい男達の接近に、慌てて身を翻して躱します。
だがそんな彼を、俺と理恵ちゃんが背後に陣取って、押し返す様に彼らに引き渡します。
「なっ!? ちょっとまっ!」
「やったじゃん、お兄ちゃん!!」
「ほうほう、なるほどなるほど、そうきましたか。 徹くん、念願の活躍の時ですよ」
彼が、俺と同等の能力を持っていると分かった彼らは、徹くんを取り囲み讃え始めます。
「徹くん、お仕事、頑張って下さいね」
「お兄ちゃんも、やっと輝けるんだね。 あたしも嬉しいよ」
「うんうん。 皆さんと一緒に汗して働く。 人として一段と成長し、大人となっていく。 若いっていいですね。 歳を重ねた私には、もう出来ません。 羨ましい限りです」
そんな俺たちの反応をみて、徹くんは叫びます。
「ちょっ!! おまえら、俺を売ったな!?」
「はっはっは、なにをいっておる。 トオルよ! お前も今日から、オレたちの仲間だ! なあ、そうだよなあ?」
「「「もちろんでさあ!!」」」
そして、徹くんには必要な仕事道具を渡し、ドワイトさん達に後をまかせ、彼は労働者たちに連行されて行きます。
「嫌だ! 俺は、土方仕事なんて出来ないぞ!」
「はっはっは、一から教えてやっから、任せろ。 お前らも、みっちり教えてやれよ」
「「「おうよ! がんばろうな、兄弟!!」」」
はっはっはと、高笑いだけを残して、道普請の労働者たちは去って行きました。
「ふう、これで作業効率も上がる筈です」
「お疲れさまでした」
「はっはっは、これに懲りて、彼も大人になって欲しいものですね」
『まったくです』と言葉には出さずに、残った俺たちは同様の頷きで、彼らを見送ったのでした。




