酒呑みの末路
今週、初っ端なからの飲酒ネタで、すみません。
飲酒は二十歳からです!
よろしくお願いします。
取り敢えずの体裁を整え、マリーさんに今後の事も含めて、俺の意思をしっかりと伝えます。
もちろん、マリーさんには昨夜の醜態や、軽はずみな言動を謝罪して、覚えてる範囲での記憶を共有しました。
マリーさんは真っ赤な顔で頷くと、昨夜の話が事実であるとして、俺の回答を待ちます。
ですが、俺にはすべき事があり、出来るかぎり真摯な姿勢で向き合いました。
『いまは無理ですが、まだこの先も待って頂けますか?』
その言葉は、彼女を少し曇らせましたが、俺は彼女を引き寄せ抱きしめます。
驚く彼女は俺の顔を見上げ、次第に涙ぐみ頬を濡らしました。
『はい。 いくらでも待ちます。 ですが、早いうちにお願いしますね』
という言葉が聞こえ、俺の胸に顔を埋めて、彼女はしばらくの間、泣いていました。
たった数分のやりとりでしたが、お互いの想いも伝えられた事で、その場は収まりました。
その後、前日の約束どおり村長宅に向かうと伝え、マリーさんも支度を整えてから向かうと云われたので、別々に向かいます。
◇◆◇
着いて早々、村長夫妻に昨夜の事で祝われましたが、正直に事の次第を伝えたところ、笑われてしまいました。
『貴方達の前途に、神のご加護があらんことを……』
村長夫妻が祈りを捧げ、頭を垂れる姿をしばらく眺め、俺は複雑な面持ちになるも、それに対して礼を述べます。
「ありがとうございます。 今後も、よろしくお願いします」
村長夫妻に頭をさげ、心の内側では別のことを思ってしまいます。
(でも、その神は『邪神』なんですよ)
俺は笑顔で、その言葉を飲み込みます。
そんな感じのやり取りも、マリーさんが現れた事で終わります。
なんだかんだと時間が掛かり、村長さんとの今後の予定を話し終えると、お昼前になってしまいました。
村長夫妻にお昼を誘われましたが、キャンプにいるお三方のことを思いだし断ります。
マリーさんも、仕事を残してきたとの事で、彼女を買取り所まで送りました。
◇◆◇
その道すがら、彼女と並び歩いていると、自然と彼女の腕は俺の腕にからめ、腕組み状態に為ります。
『うふふ。 いつかはこの様に殿方と歩きたいと、思っていたんですよ。 夢が、叶いました』
そんな彼女の呟きは、俺と彼女を注視する人々には聞こえずに、ただ笑顔が眩しく、俺の心中は恥ずかしさでいっぱいに為ります。
「えっと、まだまだ先の事ですが、マリアンヌさんの事を必ず迎えに行きますので……」
「うふふ、楽しみに待ってますね」
前の世界でも、腕組みをする彼女もいなかった俺は、好かれる事も、またこういったやり取りさえ初めての事だった。
異世界にきて、初めての彼女が出来たと、俺の心臓は早鐘のごとく脈打っており、その鼓動が耳にまで聞こえる様に感じていました。
気づくと、すでに工房の前までにたどり着き、ここでマリーさんとはお別れです。
「俺、頑張りますね! じゃ、じゃあ、行ってきますね!」
「はい、いってらっしゃい」
彼女に見送られ、工房から倉庫へと向かい、運び込まれていた物資をインベントリに突っ込み、旅支度を終えました。
「うん、色々とあったけど、忘れ物はないよな?」
そんな呟きは、室内で拡散されていきますが、お三方の報酬をどうするのか、決めてなかったのを思いだし、焦ります。
「うーん、酒…… は、不味いよな。 現金で渡すのは、どうなんだ?」
今回の売り上げの中から払うのは当然、俺の手持ちの金で払うのも吝かではないが。 なにせ、現金で払うとなるとかなりの重量となるので、インベントリがない三人の場合は小銭くらいで、現金はあまり持ち歩いていないので、百万単位の貨幣では間違いなく、倉庫行になる可能性が高かった。
「金を渡してもなあ…… しゃあない、マリーさんに頼んでおくか」
そんな感じで、旅支度を終えたあと、マリーさんのところへと向かい、お三方への支払いを俺の様に預金へと替えて、証文に認めて貰い、マリー商会へ預ける事となった。
「すいません、仕事中に」
「いえいえ、タツヤさんのお知り合いであれば、なんのことはありません。 かえって、資金が出ていかないのは、有り難い事です。 なんなら、利息を付けましょうか?」
にっこりと笑う彼女の顔は本気だったので、俺はその問を保留します。
「俺の方は要りませんよ。 増えても使い道ないですし、暇もないので。 お三方の支払いは、確認しないと分からないので、また後日にお願いします」
「わかりました。 残念ですが、一応利息分も含めて、お伝え下さい」
いつもの営業スマイルのマリーさんに、俺は改めて感謝と別れの挨拶を交わして、ベースキャンプへと旅立ちます。
次くる時は、来週の終わりか、街道の工事がどこまで進むかで変わると思いつつ、リユート村を後にしました。
◇◆◇
ベースキャンプへとたどり着いたのは、その日の夕食時が過ぎた午後7時ごろでした。
ただ急ぐだけなら、もっと早くに着けたのですが、帰りしなに色々と森の中を探索してきたので、この時間と為りました。
既にキャンプ内は暗く、暖を取るための大きな焚き火と、見張りに立つ人の松明と、警備用の篝火があちこちで焚かれています。
「ただいま戻りました」
「おう、早かったな。 お帰り、あんちゃん」
「「「おつかれっす!」」」
河原に近い場所にある、テーブルと長椅子に腰掛けるドワイトさんたちが居ました。
「お疲れさまです。 少し遅かったですかね」
「ん? なんの事だ?」
「いえ、お酒を飲んでない様なので」
「ああ、そうだったな。 実は空っぽなんだ。 ガハハハ」
普段であれば、警備につかず過ごすこの場所には、酒を飲む連中で溢れかえっている時間帯です。
なのに、この場所いる方々はシラフに近く、酒のにおいすら感じません。
こういった場合、何かしらのトラブルが起きたか、ドワイトさんから禁酒を命じられた時ぐらいしか、理由はありません。
「えっ? まだ三樽あるはずですよね?」
「はっはっは! こいつらが、ゆんべの内に、飲んじまったんだな、これが」
「「「す、すいやせん」」」
一日にひと樽飲むか飲まないかだったので、まだあると思いきや、昨夜の時点で飲みきったらしく、ドワイトさんは豪快な笑い声をあげて、残る連中は頭を掻きつつ、苦笑いで謝罪していた。
「ああー、なるほど。 ハメを外したんですか」
「ん! 面目ねえ」
「では、仕方ないですね。 せっかく、良いお酒が入手できたのですが、今夜は休肝日ですね」
「なっ!? なにぃ! ど、どんな酒だ?」
「「「ごくり……」」」
「駄目です! 教えません! 教えたら、飲むんですよね?」
「お、おう…… そ、そうだな。 仕方ない、明日。 明日なら、大丈夫だよな」
「「「……」」」
俺の懐には、マリーさんから預かった例のお酒が顔を覗かせていた。
それをマジマジと見詰める、ドワイトさんと酒呑み連中が生唾を飲み込み、俺の指摘に反論も出来ず、一斉に消沈した。
「明日ですか…… 残ってた三樽分は皆さんの分ですが、持ってきたお酒は明後日からの分のはずです」
「うっ…… そこを何とか……」
「「「おなしゃっす!」」」
「はあ…… わかりました。 ドワイトさんが今後、お酒の管理をしっかりとしてくれるのであれば、許可しましょう」
「お、おう! まかせろ! お前らも、分かったな! 今後の無茶飲みは御法度だからな!」
「「「は、はい!!」」」
そんなやり取りのなか、連中の中で身を屈めていた一人が、この場から立ち去ろうとしています。
「ああ、そこの君! 止まりなさい」
「えっ? ぼ、僕ですか?」
「うん、黒髪黒目の君だよ。 名前はたしか『トオル』くん、だったよね?」
「うっ、は、はい。 ごめんなさい。 もうしません。 はい……」
「なんの事だい? 俺は呼び止めただけなんだがね」
「し、しまった…… やべぇ」
「あ、お兄ちゃん。 こんなとこにいたぁ。 あれ? 達也さん、お帰りなさい…… なにしてんの?」
「達也さん、お帰りなさい。 なにかあったのですか?」
俺の苛立ちを感じ、徹くんの顔は焦りから観念した表情へと変わり、ちょうどそこへ来た妹の理恵ちゃんと木村さんが立ち塞がる形になり、益々混沌とした状況へと変わります。
「ただいまです。 ちょうど良いところに来ましたね。 皆さんも聞いて下さいね」
「えっ? お兄ちゃん! 何したの? すぐ謝って!」
「まあまあ、理恵ちゃん落ち着こうか。 まず話を聞こうね」
俺が怒りを抑えた声で話したのが、理恵ちゃんの表情を一変させて、徹くんに罵声を浴びせます。
すかさず木村さんが理恵ちゃんの前にまわりこみ、徹くんを庇う形で隠します。
「うう、ごめんなさい。 もう、酒は飲みません。 許して……」
「まあ、いいでしょう。 皆さんには言ってませんでしたが、私達の地域では二十歳までは酒が禁止されています。 また、私達の地域の言葉で『郷に入っては郷に従え』とも云われていますので、子供の飲酒については何も言いません。 ですが、彼は私達の注意を受けても、皆さんとの飲酒を楽しんでいる様なので、今後はかたく禁止させて貰います。 これは、若い時分に酒に溺れない様にと、私達の地域で推奨された決まり事なので、皆さんも彼には今後、酒を勧めないように、お願いします。 良いですね?」
すると、理恵ちゃんが拍手をしだし、皆も次第に拍手をしだして、この話の幕は降りて終わりにします。
「どうして、こうなった」
「さあ? なんででしょうね?」
「お兄ちゃんが悪いのよ!」
「ぐっ!?」
「はっはっは、面目ねえ……」
俺の心からの呟きに、各々の心境が吐露されました。
後半は思いつきなので、要らないかも知れませんね。
気付いたら3,800文字位になってました。(汗




