自重しない人
ベースキャンプに到着した翌日、俺たちは施設の増設に取り掛かる。
とくに宿泊施設が足りないのと、村までの道をつくりがてら、必要な木材の増産を決めた。
朝早くに起きて顔を洗い、朝食の仕度をしようと調理場に向かうと、すでに調理が開始されており、担当の調理班に挨拶をしたあと、朝食のメニューを教えてもらう。
塩漬けのイノシシの肉を使った、根菜ときのこのスープ。
白パンと葉野菜にハムを挟んだサンドイッチ。
簡単なレシピの朝食だが、ボリュームやカロリーもあって、体力勝負の一日に相応しい朝食だ。
「おはようございます、達成さん」
「うん、おはよう。 理恵さん」
出来上がったメニューをトレーにのせて、飲食スペースに向かっていると、ちょうどそこで理恵ちゃんと出会い、挨拶を交わした。
そして、その後ろから木村さんと徹くんも現れたので、挨拶をする。
「おはようございます。 皆さん、朝が早いのですね」
「おはよう……」
「木村さんに徹くんも、おはようございます。 今日からしばらくは忙しく為りますし、本格的な工事に入るので、気合いも入っているんでしょうね」
「なるほど、そうですよね。 リユート村との補給路がないと、ダンジョンどころではないですよね」
「ふあぁぁ〜」
まだ完全に目が覚めていないのか、徹くんは目をこすると欠伸をしました。
「ほら、お兄ちゃんも顔を洗ってきてよ。 皆は、もう働きだしてんだからね」
「ふぁ〜 ん、分かったよ。 んー、まだ眠いぜ……」
「「ははは……」」
その後は、朝食をトレーに乗せてきた三人と食事をとり、今日の予定を話して、仕事に取り掛かります。
◇◆◇
まず、工房から道具と建材を引っ張り出して、三人の宿舎となる空き地へ向かいます。
建物をつくる土地は、草刈りを終えてたはずですが、また雑草が生えてきていたので、土を掘って、そこに石を敷き詰める感じにします。
スコップを装備して土木工員となった俺は、15メートルかける10メーターの土地に、5センチ程の深さで地面をさらって、その底に石を敷き詰め、均して平らにします。
感覚的に均しただけなので水平は出さず、あくまで平らな地面にします。
そして、その地面の四角から、等間隔に杭を打ち込み、床となる板を張るための、根太を固定させていきます。
ある程度の水平をとった根太に床板を渡して、その上から建物を建てるつもりなので、ガッチリと固定させます。
後は、建物を組み立てる為に、木工職人となって建材の作成に入ります。
「はっやっ!」
「ほえ〜……」
「なんか、家を建てるスピードではないですね」
「まあ、見てて下さい。 スキルを使い、作っているので、すぐに完成しますよ」
材料を揃えてスキル作成により、あっと言う間に木材は建材となり、柱や骨組み、屋根や壁といった建材も揃い、釘や金具を用意します。
あとは建築士となり、三人が今後寝泊まりする、宿舎の建築に取り掛かります。
その三人が見守るなか、俺は建築士のスキルに従い、建物を建てていきます。
あれよあれよと、組み立てられていく骨組みに、屋根が乗せられ、見惚れている合間に、壁や天井が張られ、気付いた時には宿舎は完成となります。
「うわぁ、マジかよ!!」
「はっはっは、これは参った。 いや、参りましたね。 いやはやなんとも……」
「すごい、すごい!」
「まあ、すべてを職業スキルの力で造ったので、あまり誇れないのですが、雨風をしのぐには十分でしょう」
ここまでに要した時間は、なんと二時間弱という、掘っ立て小屋をつくった時と変らない、時間と労力です。
ただ、これにも難点はあり、事前に建材を揃えないと出来ないうえに、細かい間取りの設計は出来ず、配管などは建て終わらないと施工できないし、それなりの下準備が必要でもある現在の仕様では、同時に造れないのものが多くて、それなりの問題があります。
まあそれも、木工と石工の職人になれば、それらの施工は可能なので、今はこれで十分かと思います。
その後、扉や家具などを設置して、荷物を運び込めば、今夜から泊まれるので宿舎は、これで完成となりました。
◇◆◇
お三方の荷物を移動させた後、お昼を軽く済ませて、午後はベースキャンプ側の道をつくる為の、作業に入ります。
「おう、にいちゃんか。 もう向こうは良いのか?」
「ええ、今彼らは荷解きをしてますし、こちらを優先しようかと思いまして」
「そうか、相変わらず仕事が早いな、あんちゃんは」
「「「お疲れさまっす!」」」
午前中に宿舎をつくると知らせていたので、お昼前に終わるとは思っておらず、その場にいた人たちから、労いの言葉が返ってきます。
お礼を返したあと、ドワイトさんにお昼の休憩を促して、伐採の許可も貰います。
「そんじゃ、お言葉に甘えっとすっか。 お前ら、休憩にすっぞ、休憩だ!」
「「「あざっす!!」」」
「ははは、ゆっくりして来て下さいね。 やれる範囲は、やって置きますんで」
「はっはっは、お手柔らかに頼むぜ、あんちゃん!」
「「「おねがいしやっす!」」」
俺の言葉に焦ったのか、その場にいた全員は苦笑いを浮かべていました。
そんな感じで、休憩に入る人達を見送り、村までの街道となる場所を眺め、専用の斧を取り出し、木を切る支度を整えます。
「さあて、バッサリといきますかね!」
職業を木こりに設定し、大きな斧を担いで走り出します。
そして、休憩から戻った人達が見たものは、明らかに人がやったとは思えぬ、光景が待っていました。




