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勇者さまは無双がしたい(仮)  作者: アイネコ
ダンジョン探索編
39/74

新たな出発

今週も、よろしくお願いします。





 ベースキャンプまでの道普請が開始されたので、俺はアイテムの補充を始めます。


 今回、補充するアイテムは食料関連が中心と為ります。


 煉瓦なども使う予定ですが、木材が豊富な森ですし、建材には事欠いていないので、滞在人数の事を考えての下準備です。


 塩に砂糖、油と小麦をインベントリに入れていきます。

 これらは、マリーさんに以前から注文していた物資なので、今では村でも買える様になっています。

 あとは香辛料があれば良いのですが、そっちは別の大陸にあるそうなので、入手は困難らしく、少量しか手に出来ませんでした。

 入手出来た香辛料は、胡椒のようなスパイスなので、出来れば種を入手したいところです。

 まあ、いまは森で採れる、山椒のような木の実もあるので、そちらを加工して使っています。


「えーっと、あとは布と皮に綿とかだな」

「なにをしてるんですか? 達也さん」


 俺が工房にある倉庫で物資の補充をしていると、入口から覗き込んでいる理恵ちゃんに声を掛けられます。


「ん? ああ、これはベースキャンプに持ってく物を準備してるんだよ」

「えっ? もしかして、もう出掛けるんですか?」


「なんだ理恵、こんなとこで何してんだ?」

「どうかしましたか?」


 どうやら、三人とも一緒に居たようです。

 まあ、お三方はパーティーを組んで仕事をしているらしいので、居ても可笑しくはないのでしょう。


「えっとですね。 道の工事も始まったので、明日にでも出発しようかなと思いまして……」


「なっ、マジで?」

「えー、もう行っちゃうんですかぁ?」

「それはまた急ですね」


 まあ、職業支援の話をしたばかりなので、お三方の言い分は分かります。


「一応ですが、仕事を頼む形には為りますけど、皆さんの事は村長やマリーさんに話をしてますし、問題はないと思いますよ」

「えっ、俺らのこと置いて行く気なのか」

「えー、ん〜、まあしょうがないかぁ」

「まあまあ、それはまあいいとして、何でまた、そんなに急いでいるのです? お帰りになってから、まだそんなに経ってませんし」


 ん〜、そうだな。 あって早々居なくなるとか、流石に不安だよな。


「それはですね……」


 俺はその急ぐ理由について、ベースキャンプの先にあるダンジョンの経緯を説明しました。


「ダンジョンっ!!」

「はいはいはい! 行きたい、行きたい、行きたいです!」


「ははは、なるほど、ダンジョンがあるのですね。 それで、人手が要ると……」

「まあ、そうなんですが、まだ危険なので、まずは人を集めないと行けないのですよ」


 ダンジョンと聞いて、田上兄妹の反応は仕方ないとしても、木村さんも乗り気でいたのも意外でした。

 その後の話し合いで、急遽お三方も、ベースキャンプゆきが決まり、注意事項を伝え、装備や道具の作成に入りました。



 ◇◆◇



 木村さん、田上兄妹の装備品は旅の途中で手にしたものや、また町で買った製品という事で、俺はそれらを鑑定します。

 その結果は、この村で扱っているものより品質が悪く、俺が作った強化済みの武具ではなく、ごく普通の装備でした。


 徹くんの剣は鋳造品だし、防具はただの皮で作られ、防御性能の低い、お粗末な代物でした。

 また理恵ちゃんの弓も普通の品で、かなり使い古した感じで、買い替える必要もあり、皮の胸当ても防具とはいえない、ただの胸当てでしかありません。

 そして、木村さんの装備品は、杖以外はただの布切れで出来たローブであり、町に住む一般人が着ている服と変わりない物でした。

 ただ杖の方は、西洋風の長杖といった感じの杖で、以前世話になった教会で託されたものという事らしく、これだけがまともな造りで、強化の施された逸品でした。


『癒やしの杖』

 持つ者に信仰を授け、神のみわざと加護を付与された長杖。

【効果】回復魔術効果+10% HP自動回復1%/5s

【装備ボーナス】MID+5 MP+10%


 という、現在の俺にはとても作れそうにない代物です。


「お世話になった神父様に頂いたのですが、かなり良いものなのだったのですね」

「そうですね。 この杖は、大事にしないといけませんね」

「それに比べて、俺らって……」

「うん、悲しいね。 お兄ちゃん」


 なにやら、木村さんはしんみりと杖を眺めていますが、何処か悲しげです。

 そして、田上兄妹も別の意味でしんみりしてますが、こちらはそっとしておいてあげましょう。



 ◇◆◇



 これまでに使用していた装備は解体して、新しい素材を使いそれぞれの要望にそった装備を新調しました。


 徹くんには前衛職の装備を一式揃え、理恵ちゃんには魔法職の装備品を渡し、木村さんには俺と同じローブ以外に、薬師や錬金術師の道具を揃えて、それぞれの要望にそったアイテムを渡しました。


 将来的には、俺を含むこのメンツでパーティーを組む事を念頭に、自分の職業も変更するとして、臨機応変にいこうと思います。


 ベースキャンプまでの道も工事が始まり、皆の装備も整ったので、キャンプ行きの人選も決まりしだい、リユート村を出発する予定です。


 翌日の旅立ちの際には、マリーさんと少々揉めましたが、そこはベースキャンプまでの道普請が終わるまでは、彼女の力が必要だと諭し事なきを得ます。


 まあ、一ニ(いちに)週間のうちには報告もあるので、問題が起きなければ、また会えるのだから、彼女には安全な場所に居てもらいたいと言うと、嬉しそうな表情を浮かべていたので、問題はないでしょう。



 ◇◆◇



 リユート村を出発し、川沿いを遡ること二日。 森を抜けてキャンプ地にたどり着いたのは、日が傾き始めた頃合いでした。


「はあ、やっと着きましたね」

「意外と近くにあるんだな」

「んー、思ったより良いところですね」

「魔界という森の割には、魔物も出なかったですね」


 俺たちを含めた二十五名のハンターたちに、キャンプでの建設要員が八名。

 鍛冶や薬師といった、生産職三名を引き連れての森の移動には、まる二日が掛かりました。


 ここまでのルートを何度も通ったことで、時間短縮出来たというのもあり、道案内がなければ、もっと時間は掛かっていた筈です。

 それに、ゴブリンや敵性生物にも遭遇しなかった事も、大きな要因でした。


「うむ、何事もなく着いたな。 やっぱり、ゴブリンたちは北側に流れたのかも知れんな」

「可能性としては有りますね。 ダンジョンに潜ってみないと、まだ分かりませんが」


 ダンジョンの北の森には、瘴気(マナ)うずまく未開の地が広がっているとの事です。


「おお、ダンジョンかあ。 早く行ってみたいぜ」

「どんな感じかな? 強い敵も居るのかな?」

「ははは、まずはここのキャンプの整備が先ですよ」


 キャンプに到着後、荷物を降ろす為に、それぞれの宿泊施設に向かいます。

 木村さんと田上兄妹は、工房が隣接する、俺の宿舎へと案内します。


 今後の彼らは、ここにある施設を使い、それぞれの仕事をして貰う予定です。

 まあ、ぶっちゃけてしまうと、生産職のレベルあげをするのが、主な理由ですね。


 前衛職なら、土木や建設で力(STR)は上がりますし、建材を作れば器用さ(DEX)も上がるので疎かには出来ません。

 魔法職も、薬師や錬金術を上げれば知識(INT)が上がり、火力や効果の上昇、またMPの量も増えていくので、馬鹿には出来ません。


 三人をダイニングに通し、荷物を降ろして、少し休憩を取ります。


「いま飲み物を出しますから、少しゆっくりしましょう」

「あ、私もお手伝いします」


「ここが達也さんの秘密基地かぁ」

「ははは、いいですね。 秘密基地、子供の時分を思い出します」


 お湯を沸かしてポットに注ぎ、カップとスプーン、お茶やコーヒーを用意してダイニングテーブルの上に並べます。


「えっと、お茶とコーヒーがありますが、どうします?」

「あ、俺はコーヒーで」

「私は、お茶を下さい」

「お兄ちゃんは、自分で淹れられるよね」


 相変わらず、理恵ちゃんは兄には厳しく、その兄は思わず苦笑いを浮かべます。

 徹くんはコーヒーを淹れ始めたので、俺はお茶の仕度をして湯呑みを温めます。


 ダイニングにコーヒーの芳ばしい香りが拡がり、お茶の暖かい香りが心を癒します。


「落ち着きますねぇ」

「あれ? 砂糖がねぇぞ」

「あ、お砂糖忘れてた。 てへっ♪」

「ははは、いま出しますよ」


 インベントリから砂糖の入った木箱をだし、砂糖を入れる容器へと移して、テーブルの上に差し出します。


「ありがとうございます。 インベントリでしたっけ? 羨ましいです」

「うん、チートだよチート」


「まあまあ、私もいつかは欲しいですな」

「そうですね。 緊急ミッションの達成報酬なので、皆さんが取れる可能性はあるでしょうね」


 二十種のアイテムを無尽蔵に入れられるインベントリは、リユート村で起きた、緊急ミッションの達成報酬で貰えたと伝えてあるので、なにかの機会(イベント)で貰えるのではないかと、期待しています。


 まあ、インベントリを知った時の彼らの騒ぎようは、致し方なしといった感じでしたが、木村さんのフォローもあり、今は落ち着いています。


 休憩をとった後、彼らの住居をどうするかを話し合い、工房近くの土地に建てると決まり、その日は理恵ちゃんにベッドをゆずり、男どもはリビングで雑魚寝をしました。




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