性能の差
今週は、この回までとなります。
転生者三名との出会いをはたした翌日、俺は少し戸惑っていた。
前日に話をした結果、俺と彼らの能力値の差が、大きくかけ離れていたのである。
お互いにステータスの確認と、職業のレベルとその数、戦闘時の職種と、非戦闘系の職業の数やレベルなどを照らし合わせたところ、その数と実績に差が生じた。
ざっと見積もっても、全職業のレベルを足すと、俺のレベルは280を超え、木村さんは40程で、田上兄妹に至っては二人分をあわせても50を超えるくらいであり、この一年間で伸びたステータスの差は、最大100を超える結果となって現れました。
因みに、100以上の差がついたのは、精神(MID)と知力(INT)でした。
「達也さんって、チートなの?」
「マジでかぁ……」
「そこまで、差があるのですか……」
お互い詳しくは語らぬとも、おおよその数値を知り、明らかになった力の差に愕然となっていました。
「いやいや、皆さんが居たところは、こことは明らかに状況は違いますし、自分が落とされた場所は魔界と云われている場所ですよ」
「はぁ、なんだかなぁ」
「…… あたし達は二人だったし、達也さんはひとりだったんだよね」
「まあ、私も魔物とは立ち向かいましたけど、倒せてはいなかったですしね」
しかし、それぞれの活動量もかなり違うので、お三方の今後の努力しだいで、差は埋るはずですと諭すも、何処か納得出来ない様子でした。
「とりあえず、皆さんには装備と道具を用意しますし、この村にはいくらでも仕事はあるので、その中でレベルアップをしていきましょう」
「えっ? マジで? やった、俺もチートになれるのか!」
「あっ、私も魔法使いになりたいです!」
「では私は、錬金術師を目指しますかね」
職業の開放条件となる道具や装備、道具や施設などは揃っているので、実際に手に取り職業に就けば経験は積めると話すと、表情は一変して前向きな表情に変わりました。
これは予想以上に、転生者の実力は環境しだいで、天と地の差が生じると分かり、俺は邪神のポンコツ具合いに怒りを覚えました。
◇◆◇
午前中に、職業関連の話をすませ、お昼を済ませた後は村長さんとマリーさんにベースキャンプまでの道普請の件を相談します。
ですが、それはお二方も予想して居たらしく、翌日から工事を開始するという話に纏まりました。
「ほうほう、もうそんなに出来ているのですか。 流石ですな」
「でしたら、キャンプまでの道が完成すれば、タツヤさんと仕事が出来ますね」
道普請の予定が決まると、村長さんからは称賛の言葉をもらい、マリーさんからは期待に満ちた眼差しで語り掛けてきます。
「えっと、まだそんなに施設とかないですし、警備も足りてないので、まずは道が開通してからですね」
「はい! 私にお任せ下さい」
俺の言葉に、何故かやる気を漲らせるマリーさんである。
「これは、うかうかとしてられませんな。 では早速、普請の従事者を募りませんとな」
そして、マリーさんを追うようにして、村長さんも仕事に取り掛かると告げて去って行きます。
「うーん、すべてが読まれてるみたいだ。 大丈夫なのか? これ……」
去っていく二人の背中をみて、少し寒気がしたが、仕事が出来る強い味方なので、任せようと思いました。
◇◆◇
「では、始めますかね」
「えっと、なにかすんのなら、俺も手伝いますよ」
「ふむ、では私も」
「なにかな、なにかなぁ?」
俺は村の東、ベースキャンプ側の森の入口で、木こり用の斧と山刀を用意して、伐採の準備をしていた。
「おっ! もう始めんのか。 あんちゃん」
「はい、木だけは邪魔ですし、建材はいくらあっても足りないですからね」
「な、なんだ? どう言うことだ?」
「なんでしょうね?」
「ワクワク、ワクワク……」
俺は腕まくりをしつつ、ドワイトさんに後をお願いして、期待に満ちた三人の視線に、自身の力を披露する事にします。
「では、見てて下さい。 あまり近付かれると危険なので」
「お、おう……」
「なにかな、なにかなぁ?」
「楽しみですねえ」
ドワイトさんが村に向かうのを見て、俺は木こり用の斧を手にして、両手に革手袋をはめ直してから担いだ。
「では、参ります!」
「「「はい?」」」
両手で斧を構えた俺は、間の抜けた声を聞きつつ、森の手前から見えている木へと、斧を振り抜きます。
スコーーン、スコーーン! と心地よい響きで木を切る音が森から聞こえ、ミシミシミシ、ざざざざ、ザザーーンと後から追うようにして、木が倒れる音が続きます。
「はああ? なんだー!?」
「えっ!? うそぉ!」
「こ、これはまた……」
三人の視線の先には、次々と倒れゆく大木がドミノ倒しの様に倒れていくのが見えます。
俺は、ざっと20メートル程を斧を振り回しながら移動し、追いかけて来る倒木から逃れ、倒れる木が止まるまで、安全な場所で待機します。
そして、倒木が治まったあと、倒れきってない木を引き倒して、森の入口へと向かいまう。
「大体、こんなところでしょうね」
「えーっと、お疲れさまです」
「す、すげぇ…… これがチートって、やつかぁ」
「ほへぇ……」
森から出てくると、三人三様の反応が返ってくるが、すぐ後ろから声が投げ掛けられて、三人が同時に振り向きます。
そこ先にはドワイトさんと、数十名にのぼる村人たちが連れ立っていました。
「おう、あいかわらず仕事がはえーな。 あんちゃんは」
「「「お疲れさまです!」」」
「お疲れさまです。 では早速で悪いのですが、よろしくお願いしますね」
俺の指示を受けた村人たちは、鉈や山刀を持ちだし仕事を開始します。
「あっ、俺も手伝います!」
「では、私も」
「えっと、私も……」
「おっと、客人は手出し無用だ。 気持ちだけ受け取っておくぜ。 これは村の仕事だかんな! ガハハハ」
三人が道具を手にして村人たちに近寄ると、ドワイトさんがその間に割って入り、止められます。
三人は、その理由を聞き戸惑いますが、ドワイトさんの豪快な笑い声に圧倒されます。
うん、まあドワイトさんの顔は慣れないと怖いし、ここでの要の人物なので、その指示には従った方が、村人からも信頼を得られるのも早いので、フォローだけはして置きます。
「どうですか? 鍛え方しだいで、これぐらい出来る様になりますけど」
「ははは、すげぇ! 俺も頑張ります!」
「私は…… 遠慮しときます」
「えっと、私もです」
俺の問に、徹くんはやる気が漲った感じで手を握りしめ、木村さんは苦笑いで応えると、理恵ちゃんも同じ反応でした。
人には向き不向きもあるので、それぞれに向いた職種のアイテムを準備をして置こうと思い、俺はドワイトさんに声をかけて村へと戻る事にしました。
次回は、3/28の0時更新となります。




