転生者、集う!
だいぶ掛かりましたが、本編メンバーが揃いました。
ベースキャンプから、ダンジョンまでの道を完成させた後、俺達はいったん村に帰ることにした。
リユート村までのルートを、先に進むのは俺とケントさん達の斥候チーム。 その後方にはドワイトさんが中心となり、狩りで獲れた素材を運ぶ職人さんと、その周りを警護するラルさん達の護衛チームである。
「んー、居ませんねえ」
「ええ、前回も遭遇しなかったからなあ、村の方か北にながれたのかも知れないっすよ」
川沿いを進む俺達は、念の為に警戒にあたっているが、ゴブリンたちや獣の類いすら見あたりません。
今回の帰還は、ダンジョンまでのルートを確保する為にも、ベースキャンプの人員を増やす為でもあり、村からベースキャンプへの道をつくる計画を実行する為の帰還です。
素材や作ったアイテム、燻製や森の食材などを背負い、ペースの遅い足取りもあって、途中の河原で一夜を過ごし、二日を掛けての帰還と為りました。
◇◆◇
達也たちがベースキャンプを立って二日目のお昼ごろ、例の三名はひと仕事を終えていた。
「ん? なんだ? なんか騒がしくないか?」
「あ、もしかして、タツヤさんが帰って来たのかも」
「ほう、その可能性はありかも知れませんね」
北の森での採集を終えた私達は、昼を村でとろうと帰ってきたところ、村の広場が賑わっています。
前回の交易から、まだ数日しか経っていないので、あるとすれば例のタツヤ氏が帰還しかありません。
「うわ〜、凄い人の数……」
「ちっ、英雄さまのご帰還ってやつか……」
「まあまあ、徹くんもその内ああなるのでしょうし、今は見守りましょう」
私は、苛立っている徹くんを窘め、広場の騒ぎが治まるまで見守ることにします。
「あ、マリアンヌ氏も居ますね。 私達もタツヤ氏に会いに行きますか」
「は〜い。 どんな人かな? 楽しみぃ」
「くそ、やっとか。 ちいとばかし強いからってだけで騒がれてるんだったら、認めねえかんな」
人影も疎らになった広場に、マリアンヌ氏を見付けた私達は、荷物を運ぶ人たちを避けて、タツヤ氏が居るであろう場所へと近づきます。
「あれっ? あの人って…… ちょっと!? ねえ、あの人だよ! お兄ちゃん!」
「ん? なっ!? ま、マジかよ!!」
「なるほど。 そうですか、彼でしたか……」
タツヤ氏と思われる人物は、マリアンヌ氏と村人たちに囲まれて居ました。
そして、その人達の隙間から見えた彼の顔は、私達が見知った顔でした。
「やったー! あの人なら大丈夫だよ。 あたし達運がいいよね、お兄ちゃん!」
「お、おう。 まあ、しゃあないかあの人じゃ。 あの人には恩もあるしな」
「ははは、ではご挨拶に行きましょう」
私達は流行る心をおさえ、人々の笑顔を一身に受ける人物との邂逅に向かいます。
◇◆◇
時は少しだけ遡り、数分前の広場に移ります。
俺たちが村に到着すると、村人たちの出迎えてくれます。
約半月、二十日に満たない日数ではあるが、リユート村の人の数は増えており、広場は人で賑わっています。
「お帰りなさい、タツヤさん」
「はい、ただいま戻りました。 マリアンヌさん」
「タツヤ殿、ご無事でなによりです」
「オレらも居るんだが、まあいいか。 ガハハハ」
広場に到着後、今回の狩りで得た荷を降ろし、それを人々が村の買取り所へと運んでいく。
物によっては運び先も違うので、村長とマリーさんが手分けして仕事を割り振っていく。
少しずつ減っていく荷と人垣のなか、例の黒髪黒目の人たちが近づいて来るのが見えた。
「あ、タツヤさん。 彼らが貴方を探していた人たちですよ」
「えっと、ありがとうございます。 すいませんが、少し彼らと話がしたいので、また後で顔を出しますね」
マリーさんに断りを入れて、俺は彼らと話し合う為に離れ、人々の少ない方へと移動する。
すると、三十代後半と思しき男性に声を掛けられる。
「お仕事中、申し訳ない。 私、木村稔と申します」
「わ、私は、田上理恵です!」
「えっと、ぼ、僕は田上徹です。 理恵の兄になりまう…… うっ」
「あはははっ! お兄ちゃん、笑かさないでよぉ。 なりまうとか、マジうける〜 僕とか、あははは」
何やら、自己紹介で噛んでしまった彼、トオルくんは緊張していたのか、顔を赤く染めてプルプルと震えだした。
「お前こそ、なんで俺より先に自己紹介してんだよ! おかげで、しないでいい緊張までしちゃったんだぞ! そ、それを……」
「まあまあ、誰だって失敗はするもんだ。 理恵ちゃんもそれくらいで、勘弁してあげなさい」
「は〜い」
一頻り笑った女の子は、目元を拭い姿勢を正し、兄である男の子に謝っていた。
「はは、元気そうで何よりです。 改めて自己紹介します。 私は、前島達也といいます。 よろしく、お願いします」
一通りの挨拶を交わしたあと、俺は彼らと話し合う為に
彼らを案内して自宅へと向かった。
◇◆◇
久しぶりの我が家に彼らを招き入れ、ダイニングにお茶の仕度を整えつつ席を勧め、台所にあるやかんに水を満たして、コンロで湯を沸かしだす。
「へえ、水道じゃなく魔法なんですね」
「ええまあ、湯も出せるのですが、気分ですかね。 皆さんはどうなんですか?」
「私も、魔法で水は出せますが、お湯はちょっと無理ですね」
「俺も無理です……」
ふむ、やはり個人差はあるようですね。
とか言ってる間に湯が沸き出したので、ティーセットを揃えてコンロの加熱を止める。
「あっ、これってコーヒーですか?」
「えっ!? マジで?」
「ほう、コーヒーですか、流石ですね」
「あれ? もしかして、市場は見てないのですか? 普通に売ってるんですが」
俺が開けた密封容器から、コーヒー独特の芳ばしい香りが漏れると、三人とも目を輝かせていた。
どうやら、彼らは宿屋と買取り所の往復しかしていなかったらしく、俺の指摘に苦笑いを浮かべていた。
「やはりそうでしたか……」
「はい、その節は色々とお世話になってしまい、年長者として恥入るばかりです」
「「ありがとうございました」」
やはり、あの場所に集められた人達の中に、木村さんと田上兄妹は居たとの事でした。
実際、あの場であんな発言をする余裕を持つなど、あり得ないので木村さんを宥めて顔を上げて貰い、色々な話を聞きました。
木村さんはこの大陸の南方にある小さな集落に、田上兄妹はここから比較的近い、大きな街の近くに転生したと聞かされました。
転生の理由も、木村さんは奥さんと、まだ小さなお子さんが実家に居るらしく、その援助を申し出て送金をしているとのこと。 田上兄妹に至っては、若くして亡くなった事で、あまり実感もなく流されていたが、俺の交渉により異世界転生と聞いて、飛びついたとの事でした。
その後の行動についても、色々と聞きます。
木村さんは、集落が魔物に襲われ、命からがら逃げ出し、途方に暮れているところに行商人に拾われ、近隣の町まで連れていって貰い、そこから活動をしつつ情報を集め、同じ境遇の転生者を求めて、今に至るそうでした。
田上兄妹に至っては言わずもがなで、その日の糧を稼ぎつつレベル上げの日々を繰り返していて、ある日を境に出回ってきた品々、明らかに転生者であろう者が作った発明品に、居ても立っても居られずに、リユート村の募集に飛び付き、ここ迄来たとはしゃいでいました。
そんな彼らの話を聞き、どんだけ辛かったのかを懇々と聞かされ、この村に辿り着き、食事や生活様式の違いに、愕然としたのだとか……
まあ、よく聞くと概ね好評であり、それまでの生活が何だったのかという苦情をもらすといったぐらいです。
木村さんの語るトイレ事情の話は若干引きましたが、お三方の言い分はほぼ一緒でしたし、『ほう、へえ』と相づちを打ちつつ、彼らの苦労を聞きました。
大体の事情も聞き終わり、新しく淹れたコーヒーで気を落ち着かせていると、『グゥ』というお腹の虫がなり、どっと笑いが漏れました。
「あっ、すいません。 そういば、お昼も食べてませんよね」
「ははは、うっかり忘れてましたな」
「そうだった。 昼飯がまだだったな」
「いやだぁ、恥ずかしい」
「それじゃあ、食堂にでも行きますか。 奢りますよ」
「えっ? 流石にそれは……」
「やった、タダ飯が食えるぜ」
「お兄ちゃん! す、すいません」
「遠慮はいりませんよ。 お金の使い道に困ってるくらいですしね」
「だってよ! ゴチになります!」
「はは、ではご相伴に為ります」
「なります……」
その後、自宅前で待ち構えていた村長さんやドワイトさん、マリーさんも誘って、遅い昼食を取りました。
時間がゆるせば、もう一話となります。
更新がなければ、次週となります。




