ゴブリン殲滅
今週も、よろしくお願いします。
ダンジョン前のゴブリンたちを排除すべく、俺はそっと忍び寄る。
ダンジョン前に広がる広場には、明るい日差しはなくとも、光は差し込んでいる。
見える範囲には、ゴブリンが数体居るがこちらに気づくものはいない。
俺は杖を左手に持ち、右手を前にかまえ魔力を高める。
(よし、戦闘開始だ。 まずはド派手に行きますかね)
ダンジョンに広がるゴブリンたちの住処に、俺は『ファイアボール』の連射を開始する。
ぼぼぼぼ…… ボガーーン!!
ドガドガドガーーン! と、ダンジョン前にファイアボールの爆音が轟く。
『ゲギャ、ゲギャギャ!』とゴブリンの声がするなか、俺は容赦なく、建ち並ぶ木の枝葉で作られた薄汚い小屋を破壊していく。
恐らくだが、破壊された小屋にもゴブリンは居たのだろう、着弾と同時に叫び声も聞こえ、離れた場所からもゴブリンたちの声が聞こえてくる。
『『『グギャ! ギギャー!!』』』
ダンジョンの前に広がる、ゴブリンたちの住処は次々とファイアボールで破壊され、俺が侵入してきた事も奴らにバレ始める。
近くにある小屋は、ファイアボールで破壊され燃えている。
そして、小屋ごと吹き飛ばされ、丸焦げとなったゴブリンが、あちこちに燃えながら転がっている。
そんな状況のなか、騒ぎに気付いたゴブリンたちは、仲間が殺らていることに騒ぎたし、侵入者である俺に威嚇の声を発し、次々と走りだす。
その行動を見ながら、ファイアボールの連発で消費したMPを回復させる為に、インベントリからMP回復ポーションを右手で取り出し、口でポーション瓶の栓をこじ開け、その中身をいっきに飲み干す。
(うーん、不味い。 後味も最悪だ……)
ステータスを一瞬だけ開き、MPが回復したのを確認し、ファイアボールの連射を再開する。
今度は、叫びながら走り寄ってきたゴブリンたちにファイアボールが炸裂し、爆発と炎に焼かれ、次々と吹き飛んでいく。
一方的な攻撃は続き、俺は次第に疑問を抱く。
(なんでだ? 近くにもゴブリンは居るはずだよな)
攻撃を開始してから、すでに5分は経ってる筈だが、一向に増援がないことに気付き、居るはずの親玉さえも姿を現さないのである。
「なんでだ? ボスは何処に行った? 居ないのか?」
俺は疑問に思いつつも、MP回復ポーションをあおりつつ、ボスが居るはずの小屋に向かって前進していく。
すでにゴブリン達を粗方吹き飛ばし、魔力感知であたりを調べ、物陰に転がるゴブリンに一撃を撃ち込み、確認しつつゴブリンの住処を奥へと進む。
そこで俺は不安になるも、ゴブリン達を殲滅したことに唖然とした。
「居ねぇじゃん! 何処に行った?」
バチバチとなる生木が爆ぜる音を聞きつつ、注意深く辺りの魔力を探る。
「えぇ…… マジで居ないのか。 まさか村に行ったとか、ないよな……」
俺は、破壊の限りを尽くしたゴブリンの集落で、一人佇んでいた。
◇◆◇
ゴブリンたちを殲滅したあと、俺はベースキャンプへと戻った。
あれから一通りの調査はしたが、あるのは奴らの死体と、燃え落ちた小屋の残骸だけであった。
とりあえず、倒したゴブリンたちを処理した後、奴らが戻って来ても問題ないように、色々と素材や魔石を集めたあと、すべてをファイアウォールで焼き尽くした。
ベースキャンプにある広場に集まり、夕暮れのなかで焚き火をかこみ、ドワイトさんたちに事の成り行きを報告しているところである。
「うーむ、あんちゃんの言い分は分かった。 無茶したことをとやかく言うより、いまは村の安全を確認すべきか。 ケント、数人連れて村に行ってくれるか」
「分かった。 明日一番で行ってきます」
俺の報告を聞いたドワイトさんは、リユート村の確認の指示をケントさんに伝え、ケントさんは了承する。
「大丈夫ですかね? 俺が、確認にいった方が早くないですか?」
「いや、あんちゃんは無茶しすぎだ。 いま、あんちゃんがすべきは休息だろ。 それに、今から行っても間に合わんし、リユート村の防備はあんちゃんがよく知ってるだろ? 村の連中を信じろ」
ドワイトさんは、俺の心配に苦言を漏らすように諌め、村人たちの事を信じろと言う。
「そうですね…… 出来る事はしてきたのですから」
「おう、あの防備で防げないなら、相手が悪かったとしかいえんな」
ドワイトさんはふっと笑いを漏らし、苦笑いを浮かべた。
焚き火のあかりが辺りを照らすなか、主だったメンバーの顔を赤く照らす炎がぱちぱちと鳴っていた。
そして、少しの沈黙のなかでふっと誰かが立ち上がり、腹が減っては気が滅入るだけと発し、集まった面子は腰をあげて同意する。
「よっしゃ、オークの肉まだあったよな」
「おう、食うか?」
「ああ、明日の為に食うに決まってるさ!」
「「「肉だ、肉持ってこい!!」」」
オークの肉は燻製に加工し、大半はリユート村に運ばれるので、生の肉は少なくなってるが、みんなが食べる分には余裕はある。
各々が気分を変えようと立ち上がり、調理場に向かう姿をながめ、俺は呟いた。
「はは、逞しいですね」
「あたぼうよ! 肉食って寝れば、大概はなんとかなるもんよ。 だが問題もあんぞ、あんちゃん」
真面目な顔つきになったドワイトさんに、俺はつばを飲み込み訊ねる。
「えっ? それは……」
「ここにゃあ、酒がないんだわ。 ガハハハ」
「「「それは言わんでくだせえ!」」」
ドワイトさんの指摘に、その場にいた全員が笑った。




