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勇者さまは無双がしたい(仮)  作者: アイネコ
ダンジョン探索編
30/74

慰労会



 魔界の森をぬけ、俺はリユート村に帰還した。


「ただいま戻りました」

「おう、あんちゃんか、お帰り」

「「「お帰りなさい!」」」


 一週間ぶりに戻った俺を、村人たちは労いの言葉で迎えてくれる。


「お、お帰りなさい、タツヤさん!」

「おお、戻られましたか、タツヤ殿」

「随分と重そうな荷物だな、後はオレらに任せてくれや」

「「「お疲れさまです!」」」


 森を抜けて、村側の草原に到着後、荷台をインベントリから取り出し、狩りで得た素材を乗せ換え、山盛りとなった積荷をハンター達が受け取り、買取り所へと運びだした。


「すごい成果ですね、お怪我とかはないですよね?」

「タツヤ殿は、すごいですな。 あの魔界でお一人とか、怖さは尋常ではないかと、思って居りましたが……」

「まあ、今回の狩りであの森が魔界と云われる意味も分かりましたし、皆さんにご心配お掛けしたことには、申し訳ないと思ってます」


 俺は、出迎えてくれた村長とマリーさんに、深く頭をさげて謝罪する。


「えっと、頭をあげて下さい。 タツヤさんがご無事なら、なんの問題はないですし……」

「ええ、タツヤ殿の使命なのですから、頭を上げて下さい。 それに、貴方を心配したマリー殿が、卒倒したくらいだけでしたので……」


「んにゃっ! そ、村長さん! それは内緒にしてと、言いましたよね!」

「それは、いけませんね。 マリアンヌさん、すみませんでした……」

「はは、これはうっかりでしたな、マリー殿お赦しくだされ……」


 秘密をばらしてしまった村長に対し、マリーは慌てふためき、俺と村長さんは深く謝罪する。

 周りにはくすくすと笑う村人もおり、マリーは表情を赤く染めあげ、そっぽを向いた。


 その後、なんとか宥め機嫌が直ったマリーさんから、ダンジョンについて幾つかの注意事項を聞いた。



 ◇◆◇



「なるほど、ダンジョンの管理者ですか」

「ええ、ダンジョンには何かしらの権限をもつ、存在がいる事があるそうです」

「うーむ、魔獣が蔓延るダンジョンというのは、恐ろしい物だけではないのですな」


 ダンジョン発生のお告げから、独自の伝で調べたマリーさんは、送られてきた報告書を抱えており、その内容を伝えてくれる。


「まず、ゴブリンたちが運び出した物資についてですが、おそらくダンジョン産の食料や鉱物、またダンジョン内で倒された、モンスターから取れた魔石かと思います」

「ふむ、やはりダンジョン産のものですか……」

「言い伝えですが、ダンジョンからは魔物があふれ、その奥底には『魔獣』が封印されているとか、ありますな」


 様々な分析や、過去の事例なども報告があり、その対処などの方法も挙げられていた。


 過去、ダンジョンは様々な恩恵を齎したが、それと同時に危険をも孕んでいた。

 ダンジョンは封印の地とされるも、過去になんどもモンスターが沸き出し、幾つもの村や町、また領土をも侵食して来たのだとか。


「するってえと、人手は要るんだよな」

「ええ、タツヤさんの報告からして、あまり猶予はないと思います」

「分かりましたし、村からも人を出しましょう。 協力者を募り、タツヤ殿がつくったベースキャンプとやらに、派遣しましょう」


 俺が見た、ダンジョン前の光景は、モンスター達が外へと向かっている事を物語っていた様だ。


「うーん、まだ道もないので、皆さんには危険ですよ。 キャンプ地もまだ開発中ですし、住居もありません」

「だったら、オレらが先乗りして、あんちゃんの手伝いをするぜ。 村からは、その後でもいいんじゃないか?」

「うーむ、残念ですが、それが最善かもしれませんな」


 懸案となる問題に、村長とドワイトさんが答えると、マリーさんがそわそわとしだし、発現をする。


「わ、私もお側に……」

「「「駄目です!」」」


 マリーさんの発現も途中で遮られ、俺を含むその場の全員がすぐさま却下し、マリーさんは項垂れた。


 彼女には悪いが、村での仕事もあるし、マリー商会にしか出来ない仕事があり、危険を犯すにわいかないし、人を集めるにも出来ればこの村に留まって欲しいと宥めて、なんとか納得して貰えた。



 ◇◆◇



 その日の夕刻。

 俺が持ち込んだ素材でつくった料理で、ここ半月の慰労会を広場で開催する。


「んめーな、こりゃ。 オーク肉って、こんなにも旨いのか」

「「「モグモグモグ……」」」


 今回の狩りで手に入った素材は、様々なものがある。

 オークからとれた肉も、その中のひとつであった。


「これはなんとも、美味しいですなあ」

「でしょう? イノシシにはない味わいですよね」

「んぐ、はあ…… 話には聞いてたのですが、オーク肉はこんなにも美味しいのですね。 さすが高級食材、納得です」


 いま皆の前には、たくさんの豚肉料理が並べられている。


 豚のハラミステーキや、薄切り肉の焼き肉に、芋と根菜の豚バラ煮込み、大きな鉄ぐしに何枚もの肉を突き刺し、炭火で炙ったケバブ風の串焼き肉など、思いのほか大好評を博している。


「あんちゃんについて行けば、旨いものが食える。 お前達が頑張るなら連れていくが、どうするよ?」

「「「お供しやす!」」」


 その場に同席したハンター達は、オーク肉を片手に持ち声をあげた。

 そんな男たちの笑顔があふれ、つくづくと実感する。


「この世界の人達って、飢えているんだな……」

「んなもん、あたりめぇよ! こんな旨いもんを食えんのは、ご貴族さまくらいなもんだ」

「ですな。 この年になって、こんなにも食に恵まれるとは、思ってもなかった事です」


「タツヤさんが、何処から来たのか気にはなりますが、この地方の人々は飢えに苦しんでいたのです。 だからこそ、タツヤさんの価値は、高まるばかりなのですよ」

「おう、有り難いことだな」

「まったくです」

「「「あざっす!!」」」


 村の広場での試食会でもあったが、焚き火を囲み、村の住人たちが思いおもいに料理を楽しむのを眺め、新たな試練に挑む事の重責を実感した。




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